奇異きい)” の例文
はたして、伊那丸の主従しゅじゅうは、らえられもせぬじぶんたちが、きょう刑場けいじょうられるといううわさを聞いて、奇異きいな感じに誘惑ゆうわくされた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし一由旬いちゆじゆん異国いこくの四十里なり、十二由旬ゆじゆんは日本道六十六里なり。一尺六寸の玉六十六里四方を照すは奇異きいといふべし。
大きな硝子ガラスばりの窓を通して、眼下にひらける広々とした雄大ゆうだいなる奇異きいな風景! それは、あたかも那須高原なすこうげんに立って大平原だいへいげんを見下ろしたのに似ていたが
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
無意むい無心むしんなる幼童えうどう天使てんしなりとかや。げにもさきに童謠どうえうありてより(おう)のきたるに一月ひとつきかざりし。しかるにいま此歌このうた稀々まれ/\になりて、さらにまた奇異きいなるうた
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼の碧い眼はその東洋語の奇異きいな文法からともすれば離れて、茫然とあたりを見𢌞し、時々はお仲間の私達の上を氣味が惡い程凝視してゐることが多かつた。
万里ばんり異域いいき同胞どうほうの白骨を見ようとは、富士男にとってあまりに奇異きいであり感慨かんがい深きことがらであった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
棄たるは則ち私しなり其事情そのことがら云々しか/″\斯樣々々かやう/\貧苦ひんくせま現在げんざい我が子を棄たりと我が身の罪をも打忘うちわすれて懺悔ざんげなすにより和尚も奇異きいことに思ひ夫より別して吉兵衞を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
忠臣という言葉は少し奇異きいに用いられたが、この人にしてはごもっともであった。実際この主人の忠臣であるに疑いない。しかし主人の耳にも浄瑠璃じょうるりなんどに出る忠臣という語に連関して聞えたか
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これを聞いた友人は奇異きいの思いをなし、青年に
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
人々に確かに奇異きいな感じをあたえた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ひよりし毛虫の奇異きいなる緑にも
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
けだし一由旬いちゆじゆん異国いこくの四十里なり、十二由旬ゆじゆんは日本道六十六里なり。一尺六寸の玉六十六里四方を照すは奇異きいといふべし。
地底ちてい」へ下りてゆく間に、一行は始めて月の世界の生物の話を聞くことができて、奇異きいおもいにうたれた。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
考へつゞけてその後は眠つたのか眠らないのか分らないが、兎に角私は變なつぶやきを聞いてはつと眼をみひらいた。奇異きいな陰氣なそのつぶやきは私の直ぐ眞上に聞えたやうだ。
仁智じんち明斷めいだんの大岡殿も久八が助命じよめいの儀を甲州屋吉兵衞にはかに願ひ出たるは如何なる事情ことがら有ての儀やと勘考かんかうせられし處今吉兵衞が長々なが/\しき申立を奇異きいのことに思はれしが再度ふたゝび熟考じゆくかうあるに久八が千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
熊はいでずして一山の破隙われめこゝかしこよりけふりをいだしてくもおこるごとくなりければ、奇異きいのおもひをなし熊をからずしてむなしく立かへりしと清水村の農夫のうふかたりぬ。
處が、とう/\一つの聲がその奇異きいな靜寂を破つた、その聲は私には手に取るやうに聞えた。
これは一部の人に大変奇異きいな思いをいだかせた。何故ならば、どうしてチェリーのように脆弱かよわい女性が、あの重い砲丸を金青年の肩の上にげつけることが出来たろうかという疑問が第一。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
○さてあけの日、七兵衛源教げんけうともなひて家にかへり、四隣あたりの人をあつめてお菊が幽霊の事をかたりければ、源教げんけうふところよりかの髪の毛をとりいだして見すれば人々奇異きいのおもひをなしぬ。
この奇異きいな怪物の正体は一体なんであろう。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
およそ竜燈といふものおほかたは春夏秋なり。諸国にある㕝諸書にしるしたるを見るに、いづれもおなじさまにて海よりもいで、山よりもくだる。毎年其日其刻限こくげん、定りある事甚奇異きいなり。
奇異きいの患者
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)