かみ)” の例文
が、青年の言葉を、かみしめているうちに、美奈子は傍の渓間たにまへでも突落されたようなはげしい打撃を感ぜずにはいられなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
今日は日比谷の散歩やら、芝居の立見やら、滿つまらなく日を暮して、おしまひに床屋へ入込はいりこんで今まで油を賣つてゐたのであるが、氣がついて見ると、腹はもうかみつくやうにつてゐる。
絶望 (旧字旧仮名) / 徳田秋声(著)
梅田屋は懐中から『夜の梅』という口中薬を取出して、ぷつりと前歯でかみ割りながら
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
鎭めて聽居きゝゐたりしがいまかたをはりし時一同にどつほめる聲家内やうちひゞきて聞えけり此折しも第一の客なる彼の味岡勇右衞門は如何いかゞ致しけんウンと云て持病ぢびやう癪氣しやくき差込さしこまれ齒をかみしめしかば上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私はこれから内職なり何なりして亥之助が片腕にもなられるやう心がけますほどに、一生一人で置いて下さりませとわつと声たてるをかみしめる襦袢の袖、墨絵の竹も紫竹しちくの色にやいづると哀れなり。
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あくび念仏ねぶつかみまぜおとがなでまはししがひげをぬきて居たり。
見廻すにやみの夜なれども星明ほしあかりにすかせば白き骨の多くありて何れが父のほねともれず暫時しばし躊躇ためらひたりしが骨肉こつにくの者の骨にはしみると聞し事あれば我がしぼり掛て見んとゆびかみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたしはこれから内職ないしよくなりなんなりして亥之助いのすけ片腕かたうでにもなられるやうこゝろがけますほどに、一生いつしやう一人ひとりいてくださりませとわつとこゑたてるをかみしめる襦袢じゆばんそで墨繪すみゑたけ紫竹しちくいろにやいづるとあはれなり。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
アヽと溜息ためいきかみしめるさぶさにふるひて打仰うちあふおもて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)