取做とりな)” の例文
「ともあれ、お師匠さまを救うために、私は自首いたします。どうぞ、後で武蔵様へも、御坊からよろしくお取做とりなしをねがいまする」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それとも私がお父さんに悪く取做とりなしでもして居や為ないかと、貴方あんたが腹でもたてゝいやアしないかと、そればっかり心配して居やしたよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
出来ることなら、あなた方のお力で、姉をもう一度、就職に気を向かすよう、取做とりなして頂けんもんでしょうかと、こう思いますので——
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこで無理やりに千金を押付おしつけて、別に二百金を中間に立って取做とりなしてくれる人にむくい、そして贋鼎を豪奪ごうだつするようにして去った。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この上は取做とりなせば取做すほど語気が烈しくなる主君の気象を知り抜いている大目付役、尾藤内記は、慌しくスルスルと退いた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
定めし、奥様は何か心に苦にすることがあつて、其を忘れる為にわざ/\面白可笑をかしく取做とりなして、それで彼様あんな男のやうな声を出して笑ふのであらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おのれ覚えて居ろと天地に向ってく息に無念の炎が燃えるばかりなのを、今日は小歌さんは丸髷で居たと云いますから、失礼だと思って来ないのでしょうと取做とりなおんなの手前
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
お座敷の取做とりなしなどについて、何か言つて聞かせても、いつもうつむいて何時までも黙つてゐる子が一人あるのに、かね/″\ごふを煮やしてゐた矢先きなので、咲子のてきぱきしたのが
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
大谷が間に立って取做とりなしかけた縁談は、ろくに話し進まぬうちに立消えになって、父の口からあから様に彼れに告げて意向を確める必要もなくてすんだが、彼れは二三日妄想もうそうに悩んだだけで
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
「可哀さうでございますから、あの……」と取做とりなすが如くにいふ。
紫陽花 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
取做とりなし顔に、微笑を含みながら
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
返事はお前が好いように取做とりなせ。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
座を取做とりなすおきみの様子はすっかり落付きを持ってもはや小間使の気は無くなっています。わたくしが感心してみていると池上は磊落らいらく
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
秀吉は家康のために、その功を朝議に仰いで、正四位下左近衛権中将しょうしいのげさこんえごんのちゅうじょうの昇進を奏請そうせいし、程経てふたたび、従三位参議に任叙にんじょさるべく取做とりなした。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渡邊さんや秋月さんが取做とりなすと殿様もゆるすだ、秋月さんは槍奉行を勤めているが、成程つよそうだ、身丈せいが高くってよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と兄は嫂を取做とりなすように言って、「たまには節子にもそれくらいの元気を出させるがい」という意味を通わせた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お秀の方が取做とりなし顔に声をかけたが、与一はジロリと横目で睨んだまま動かなかった。のみならず頬の色を見る見る白くして、まなじりをキリキリと釣り上げた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
銀子は秋に披露目ひろめをしたのだったが、姐さんたちに引き廻されているうちに、少しずつ座敷の様子がわかり、客の取做とりなしもこなれて来て、座敷は忙しい方だったが、ある晩医専の連中に呼ばれて
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
取做とりなすようにいいながら、再び愛吉を顧みて
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉枝は、父子おやこ喧嘩を取做とりなすようにそう言って、帛紗ふくさから出した小筥こばこを、卓の端にのせた。古代蒔絵こだいまきえとろけそうな筥である。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お鍋がすこし遠方ですから、お父さんには取ってげますよ」と輝子はその場を取做とりなすように言った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それを付け合せのきのこの淡白の味が飄逸に取做とりなす、山野の侘びとフランス人工のおごりとの取合せだ。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「さよう。与九郎が妾どもをい出して、見違えるほど謹しんだならば、今一度、御前体ごぜんてい取做とりなすよすがになるかも知れぬが……しかし殿の御景色おけしきがこう早急ではのう」
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
お千代は何うも器量がいので心底しんそこから惚れぬきまして真実にやれこれ優しく取做とりなして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おゆうは愛相よく取做とりなした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
すげは、声を励ましたが、子の冷然として、強い顔を見ると、すぐ気もくじけて、むしろその不機嫌を取做とりなし加減に
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしの嘆きの間に「どうしたんだってば」「何だか言ってよ」と、しきりに取做とりなしかた/″\問い訊ねて呉れました友だちも、遂にさじを投げるかのように、八重子が
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ほかの一緒に笑った人々も代る代る翁に取做とりなしたので結局、翁の命令でその笑った四五人の中老人ばかりが、床几に腰をかけている筆者の前にズラリと両手を支えてあやまった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
自身、御前おんまえまかり出で、とくとお詫びいたさねばなりませぬゆえ、もう一度お目通りのおゆるしを賜わるように、左右の方々へも、お取做とりなしの儀願い入りまする
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄の気持ちを取做とりなし気味に、歳子はあどけなくかう云つた。すると兄はすつかり気嫌よく
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
秀吉の方から、不動国行の名刀が贈られて来たり、つづいてまた、正四位下権中将に昇すなどの、吉事の取做とりなしがもたらされて来ても、さしてうれしそうな顔つきでもなく
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの女は何とか取做とりなさねばならぬと考えた。かの女は
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
職長と飼主の間に、流暢りゅうちょうな外語で、交渉が始まった。しかし、交渉はすぐに破裂して、飼主は、傲然ごうぜんと首を振った。理論に於て、上級船員たちも、取做とりなしがつかなかった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父を逸作に取做とりなすような事柄を話した。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「何とか、筑前どのへ、お取做とりなしをもって、主人成政の一命、お救い上げねがわしゅう存じまする。そのため、夜陰やいんじょうじ、恥をしのんで、おすがりに参った次第で……」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花嫁の巻子は取做とりなし顔にこういった。
百喩経 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「——ならぬっ。いらざる取做とりなしをいたすなっ。追い返せと申すに!」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「礼をいう、小四郎、ようみちびいてくれた。そうだ、そちを連れては、京都の世間がうるさい。わしひとりで行って来る。子に手を引かれるのは恥かしいが、お味方に参じた節は、お取做とりなしを頼むぞよ」
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「筑前どのに、取做とりなしてやろうというて、返したが」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、取做とりなして言った声は、羅門らもん塔十郎であった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、羅門はそばから取做とりなすように
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なあに、仕官の取做とりなしを
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)