反覆はんぷく)” の例文
梅雪は床几しょうぎに威儀を直して、ゆうべ勝頼が強右衛門へさとしたとおりの言葉を、もう一度反覆はんぷくして聞かせた。強右衛門は終始、慎んで
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さうしてきまつた理窟りくつ反覆はんぷくしてかせてるうちにはころりとちてしまふといふ呼吸こきふ内儀かみさんはつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ夜具やぐかぶつたまゝ、ひとりかたくなつてねむつてゐた。かれこのくらなかで、坂井さかゐからいたはなし何度なんどとなく反覆はんぷくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
牛魔王つのをもってこれを受止め、両人半山の中にあってさんざんに戦いければ、まことに山も崩れ海も湧返わきかえり、天地もこれがために反覆はんぷくするかと、すさまじかり。……
日夜反覆はんぷく熟慮して、簡単の言葉の奥にひそむ、深くして広く鋭くして正しい、真理について思案をめぐらされ、言葉の意味の真核を、ムズと握って放さざるとともに
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
手塚はいつも表裏ひょうり反覆はんぷくつねなき少年で、今日は西に味方し明日は東に味方し、好んで人の間柄をさいて喜んでるので、光一はかれのいうことをさまで気にとめなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
答へて曰く、時間は年々同一の変化を同一の順序に従ひて反覆はんぷくするが故にこれを制限して以て命名すべし。しかれども空間の変化はごうも順序なる者あらずして不規則なる者なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
その話は、金魚屋に育った復一の方が、おぼろげに話す真佐子よりむしろくわしく知っていたのであるが、真佐子から云われてみて、かえって価値的に復一の認識に反覆はんぷくされるのであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
陸軍を去る為に恩人の不興を買い、恋人との間も絶望の姿となって居ると云うことであった。雪は終日降り、夜すがら降った。主は平和問題、信仰問題等につき、彼小笠原と反覆はんぷく討論とうろんした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すぐさま猛将勇卒を急派して、山間の通路にそなえ、彼の計を反覆はんぷくして、凶を吉とする応変のお手配こそ必要かと存ぜられます
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
をんなこゑたかうたうてはまたこゑひくくして反覆はんぷくする。うたところ毎日まいにちたゞの一かぎられてた。をんな年増としま一人ひとりうてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のみならずいったん責任問題が持ち上がって、自分の反覆はんぷくなじられた時ですら、いや私の心は記憶があるばかりで、実はばらばらなんですからと答えるものがないのはなぜだろう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だがそれはあまりに、とっぴにすぎる計画である、はじめかれは空想だと思ってしりぞけた、けれどそれは、しつこくかれの脳心のうしんにこびりついてはなれない、かれは日夜、計画を反覆はんぷくした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
さうすると勘次かんじちからきはめてうす中央ちうあうつ。それが幾度いくど反覆はんぷくされた。には木立こだち陰翳かげつてつきひかりはきら/\とうすから反射はんしやした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だから、いくさのない日でも、長篠の城には、あらゆる策謀の手、裏切り、流血など反覆はんぷく常なきものが繰返されて来たのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老ノ坂は、昔の大江のせきあとである。酒呑童子しゅてんどうじの首塚がある。またよくよくこの地は天下反覆はんぷくの人物に縁がある。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布は、反覆はんぷく常なく、書簡の上だけでは、とうてい信用できかねるが、もしこの際でも、愛娘あいじょうを送ってくるほどな熱意を示すならば、それを誠意のあかしとみとめて、朕も国中の兵を
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
反覆はんぷく
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)