別懇べっこん)” の例文
そこへ圓生はじめ三遊派の主立った人たちを毎晩のように連れてきては酒よおんなよとチヤホヤもてなした、三遊派の人たちと圓生別懇べっこんの者は
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
今宵こよひ家例かれいり、宴會えんくわいもよふしまして、日頃ひごろ別懇べっこん方々かた/″\多勢おほぜい客人まろうどまねきましたが、貴下こなたそのくみくははらせらるゝは一だん吾家わがや面目めんもくにござる。
勇「そうでない、お日さまのおあがりになろうとする所で見るのがいので、貴方とは親御おやごの時分から別懇べっこんにした事だから」
「又左どの。——御辺と筑州とは、若年からの、ふたつなき別懇べっこん。戦いかくなるからは、この匠作に義理遠慮ははやり申さぬ。御分別よろしくあれや」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と語り合っている一人は神尾主膳で、一人は分部わけべという組頭。この二人が別懇べっこんの間柄であることはこの会話でも知れます。この話をしているところへ
「第一、先方の家庭とあなたの関係ですが、その兄さんと別懇べっこんのことは御両親も御存知でしょうな?」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それも承知で頼みたい。——甲州屋万兵衛は町人ながら御奉行とは別懇べっこんの間柄、一日も早く下手人を
その畠山家はたけやまけ主人あるじわたくしちちとが日頃ひごろ別懇べっこんにしていた関係かんけいから、わたくし敦子あつこさまとのあいだ自然しぜんしたしかったのでございます。お年齢とし敦子あつこさまのほうふたつばかりしたでございました。
にこにこ笑いながら、縮緬雑魚ちりめんざこと、かれい干物ひものと、とろろ昆布こんぶ味噌汁みそしるとでぜんを出した、物の言振いいぶり取成とりなしなんど、いかにも、上人しょうにんとは別懇べっこんの間と見えて、つれの私の居心いごころのいいといったらない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かの丹下殿とはわたくしも別懇べっこんのあいだがら……殿のおことばがなくとも、必要とあらばいつにても助勢を繰り出すべきところ——しかも、お眼にとまってわたくしどもへ御芳声ごほうせいをいただき
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一学だけは、自分の恋を、知っているし、自分が、あの小間物屋と、別懇べっこんにしていることも、見抜いている筈である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
に於ても誠実が物を言う。僕は同僚との折合おりあいが好い。喧嘩をしてかえって別懇べっこんになったのもある。一杯飲んで胸襟きょうきんを開くと皆ういやつだ。渡る世間に鬼はないという諺はえらい。
ロマンスと縁談 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
余り寒いから今一人で一杯始めて相手欲しやと思って居た処、遠慮は入らぬ、別懇べっこんの間ださア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ゆうべ死んだそうだな、——お気の毒な、——昔は同藩であったが、少しも別懇べっこんではない」
客筋と云うのではない、松坂の富豪池川とは、近い血筋ほどに別懇べっこんな親類交際づきあい
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それでは、この女軽業の小屋の中へおいでになりませんか、今も申し上げる通り、この小屋の親方というのが至極別懇べっこんなんでございますから、楽屋で休みながら、お話を伺おうではございませんか」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その中、同じ帝大出の小西という男と別懇べっこんになった。部が同じだから、話し込む機会が多い。
善根鈍根 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼に逢ってみれば分るが、わしとは別懇べっこんな間がら、その宗友しゅうゆうに頼まれてきたのですがな
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梅「えゝ拙者は春部梅三郎と申す者で、以後別懇べっこんに願います」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
同じクラスに机を並べた村上君だった。然う別懇べっこんの間柄でもないが、野球の応援団を指導していた男だから、一種の公人として親しみを持っている。安達君と違って、万事積極的だ。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
自分の主君の親戚か、別懇べっこんな諸侯に途中で行き会えば、こうするのが諸士の礼儀だし、先も、駕籠の引戸ひきどを開けて、あいさつするのが作法。おれの姿を見ると、吉良殿も、その通り、駕籠戸を
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)