初夏しよか)” の例文
さく年の初夏しよか兩親れうしんの家から別居べつきよして、赤坂區さかく新町に家を持ち、馴染なじみのその球突塲たまつきばとほくなるとともにまたほとんどやめたやうなかたちになつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
小林君が洋傘かうもりで指さしたはうを見ると、成程なるほどもぢやもぢや生え繁つた初夏しよか雑木ざふきこずゑが鷹ヶ峯の左の裾を、鬱陶うつたうしく隠してゐる。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けつしてわるくいふのではない、こゑはどうでも、商賣しやうばいみちによつてかしこくなつたので、この初夏しよかも、二人ふたりづれ、苗賣なへうり一組ひとくみが、下六番町しもろくばんちやうとほつて、かど有馬家ありまけ黒塀くろべい
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
初夏しよかの永い日にさへその暮れかけるのを惜しむやうなこともあつた。
畦道 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
またさわやかな初夏しよか百姓ひやくしやうせはしくなつた。おつぎはんだおしな地機ぢばたけたのだといふ辨慶縞べんけいじま單衣ひとへるやうにつた。はりつやうにつたときおつぎはこれ自分じぶん仕上しあげたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ああ季節は今初夏しよか、日は水蒸氣たてこめる中空を薄曇らせ
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
ああ陽炎のもえる初夏しよかの小徑
海よ (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
しかあれ、初夏しよかゆふあかり
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
○ 初夏しよかの雪
薄暗き硝子ガラス戸棚の中。絵画、陶器、唐皮からかは更緲さらさ牙彫げぼり鋳金ちうきんとう種々の異国関係史料、処狭きまでに置き並べたるを見る。初夏しよかの午後。遙にちやるめらの音聞ゆ。
長崎小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
和田わださんがまだ學校がくかうがよひをして、本郷ほんがう彌生町やよひちやうの、ある下宿げしゆくとき初夏しよかゆふべ不忍しのばずはすおもはず、りとて數寄屋町すきやまち婀娜あだおもはず、下階した部屋へや小窓こまど頬杖ほゝづゑをついてると、まへには
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
○ 初夏しよかの雪
初夏しよかそら
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)