かり)” の例文
かりしほと麥は刈られぬ。刈麥の穗麥は伏せて、畝竝うねなみにさららと置きぬ。麥刈ればそよぐさみどり、うねにすでに伸びつる陸稻をかぼならしも。
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
薬鑵やくわん土瓶どびん雷盆すりばちなどいづれの家にもなし、秋山の人家じんかすべてこれにおなじ。今日秋山に入りこゝにいたりて家を五ツ見しが、あはひえかりこむころなれば家にる男を見ず。
つきのすごくてひとるやうなるも威嚴いげんそなはれるかとうれしく、かみみちかくかりあげて頬足ゑりあしのくつきりとせしなど今更いまさらのやうにながめられ、なにをうつとりしてるとはれて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
には麻手あさてかりししきしぬ東女あづまをみなわすれたまふな 〔巻四・五二一〕 常陸娘子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
されば水筋みづすぢゆるむあたり、水仙すゐせんさむく、はなあたゝかかをりしか。かりあとの粟畑あはばたけ山鳥やまどり姿すがたあらはに、引棄ひきすてしまめからさら/\とるをれば、一抹いちまつ紅塵こうぢん手鞠てまりて、かろちまたうへべり。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かりしほと麦は刈られぬ。刈麦の穂麦は伏せて、畝竝うねなみにさららと置きぬ。麦刈ればそよぐさみどり、うねにすでに伸びつる陸稲をかぼならしも。
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
稲の下にもすすきの中にも、細流せせらぎささやくように、ちちろ、ちちろと声がして、その鳴く高低たかひくに、静まった草もみじが、そこらのかりあとにこぼれたあわの落穂とともに、風のないのに軽く動いた。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)