兀頭はげあたま)” の例文
黒服の親仁とっさんは、すっぽりとちゅう山高を脱ぐ。兀頭はげあたまで、太いくび横皺よこじわがある。けつで、閣翁を突くがごとくにして、銅像に一拝すると
角の質屋の旦那どのが御年始着だからとて針を取れば、吉はふふんと言つてあの兀頭はげあたまには惜しい物だ、御初穂おはつうれでも着てらうかと言へば
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「好い朝ですな」と、プリスタフは云つて、帽を脱いで、愉快気に兀頭はげあたまを涼しい風に吹かせた。そして愉快気に云つた。
と誇らしげに云って、ハッと兀頭はげあたまが復び下げられたのに、年若者だけ淡い満足を感じたか機嫌が好く
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
柄杓とともに、助手を投出すとひとしく、俊明先生の兀頭はげあたまは皿のまわるがごとくむきかわって、漂泊さすらいの男女の上に押被おっかぶさった。
今日は何が何箇いくつあるまで知つているのは恐らく己れの外には有るまい、質屋の兀頭はげあたまめお京さんに首つたけで
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
思いよらぬはまぐりの吸物から真珠を拾い出すと云うことわざがあるわ、腹を広く持て、コレ若いの、恋はほかにもある者を、とことばおかしく、兀頭はげあたま脳漿のうみそから天保度てんぽうど浮気論主意書うわきろんしゅいがきという所を引抽ひきぬ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
よう、という顔色かおつきにて、兀頭はげあたまの古帽を取って高く挙げ、しわだらけにて、ボタン二つ離れたる洋服の胸を反らす。太きニッケル製の時計のひもがだらりとあり。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日けふなに何箇いくつあるまでつてるのはおそらくれのほかにはるまい、質屋しちや兀頭はげあたまめおきやうさんにくびつたけで
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
屈託無げにはしているが福々爺ふくふくやの方は法体ほったい同様の大きな艶々したまえ兀頭はげあたまの中で何か考えているのだろう、にこやかには繕っているが、其眼はジッと女の下げているかしら射透いすかすように見守っている。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きちはふゝんとつて兀頭はげあたまにはしいものだ、御初穗おはつうれでもらうかとへば、馬鹿ばかをおひでないひとのお初穗はつうると出世しゆつせ出來できないとふではないか
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前々から、ちゃら金が、ちょいちょい来ては、昼間の廻燈籠まわりどうろうのように、二階だの、濡縁ぬれえんだの、薄羽織と、兀頭はげあたまをちらちらさして、ひそひそと相談をしていましたっけ。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
胡麻塩ごましお兀頭はげあたま、見るから仏になってるのは佃町のはずれに独住居ひとりずまいの、七兵衛という親仁おやじである。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私は今夜中に此れ一枚ひとつを上げねば成らぬ、角の質屋の旦那どのが御年始着だからとて針を取れば、吉はふゝんと言つて彼の兀頭はげあたまには惜しい物だ、御初穗おはつうれでも着て遣らうかと言へば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(旅のものだ、いつでもというわけには行かない。夜を掛けても女を稼ごう。)——厚かましいわ。うわばみに呑まれたそうに、兀頭はげあたまをさきへ振って、ひょろひょろ丘の奥へ入りました。
年倍としばいなる兀頭はげあたまは、ひものついたおおき蝦蟇口がまぐち突込つッこんだ、布袋腹ほていばらに、ふどしのあからさまな前はだけで、土地で売る雪を切った氷を、手拭てぬぐいにくるんで南瓜とうなすかぶりに、あごを締めて、やっぱり洋傘こうもり
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大粒なしずくは、また実際、ななめとも謂わず、すぐともいわず、矢玉のように飛び込むので、かの兀頭はげあたまの小男は先刻さっきから人知れず愛吉の話に聞惚ききとれて、ひたすら俯向うつむいて額をおさえているのであったが
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やあ、」と声を懸けたのは、くだん兀頭はげあたまの小男であった。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)