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よそめ
ふりがな文庫
“
他目
(
よそめ
)” の例文
突き放され、突き放され、またのたりつく有様は
他目
(
よそめ
)
には
滑稽
(
こっけい
)
でもあるけれども、その当人は名状し難い苦しみにもがいているのです。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
四畳の座敷に六人がいる格で一
膳
(
ぜん
)
のお膳に七つ八つの
椀茶碗
(
わんぢゃわん
)
が混雑をきわめて
据
(
す
)
えられた。
他目
(
よそめ
)
とは
雲泥
(
うんでい
)
の差ある愉快なる
晩餐
(
ばんさん
)
が始まる。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
そして、しめやかな通夜を
他目
(
よそめ
)
に見て——俺は、生活と夢を一致させるために死んだのだ——とおっしゃりたかったに相違ありませんわ。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
……その野西という美男の若侍は、
今日
(
こんにち
)
までも蔵元屋の騒動を
他目
(
よそめ
)
に見た白々しい顔で、鶴巻屋に泊っておりまする筈。
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
何を待つかと
他目
(
よそめ
)
には思われるようなその婦人の姿を窓の下に見つけたことは、一層岸本の心を異郷の旅らしくさせた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
「妻子には恨まれても、宗門の
滅却
(
めっきゃく
)
を
他目
(
よそめ
)
に見てはいられない。城や一族は捨て去るとも、人の道は捨てられぬ」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに受持以外に課外二時間
宛
(
づつ
)
と来ては、
他目
(
よそめ
)
には労力に伴はない報酬、
否
(
いや
)
、報酬に伴はない労力とも見えやうが、自分は露
聊
(
いささ
)
かこれに不平は抱いて居ない。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
行
(
ゆ
)
く
人
(
ひと
)
はなし
乘
(
の
)
る
人
(
ひと
)
は
猶更
(
なほさら
)
なからんを
何
(
なに
)
を
待
(
ま
)
つとか
馬鹿
(
ばか
)
らしさよと
他目
(
よそめ
)
には
見
(
み
)
ゆるゐものからまだ
立去
(
たちさ
)
りもせず
前後
(
ぜんご
)
に
目
(
め
)
を
配
(
くば
)
るは
人待
(
ひとま
)
つ
心
(
こゝろ
)
の
絶
(
た
)
えぬなるべし
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
他目
(
よそめ
)
にも
數
(
かず
)
あるまじき君父の恩義
惜氣
(
をしげ
)
もなく振り捨てて、人の
譏
(
そし
)
り、世の笑ひを思ひ給はで、弓矢とる御身に
瑜伽
(
ゆが
)
三密の
嗜
(
たしなみ
)
は、世の無常を如何に深く觀じ給ひけるぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
昌さんはあの「あ——あア」といふ聲を出して必死に拒んだ。民さんがその肩をつきやる。彼はどうしてこんなに怒るのかと
他目
(
よそめ
)
には思へるほど奇妙な怒りに燃えてゐるのである。
南方
(旧字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
仮りに気違いであるとしても、彼は普通の乱心狂気でない、おそらく何かの宗教を盲目的に信仰して、その強い信仰から
他目
(
よそめ
)
には物狂わしく見えるようにもなったのであるまいか。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
間違えて他人の地面に置いて行くことはなかろうかと、
他目
(
よそめ
)
には案じられるが、遠方の立木や山などの見通しで見当をつけて、自分の地面を間違えるようなことは決してないそうな。
春雪の出羽路の三日
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
結婚はあまり彼女の心に染まぬものであったが、彼女はよく夫婿に仕えて、夫婦仲も好く、
他目
(
よそめ
)
には模範的夫婦と見られた。
良人
(
おっと
)
はやさしい人で、
耶蘇
(
やそ
)
教信者で、外川先生の雑誌の読者であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
他目
(
よそめ
)
には、母親でなければならぬと想像されるところの女の人を傍らに置きながら、母よと呼ぶのでもなければ、乳をとせがむのでもない。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
天を
活
(
い
)
かし地を活かし人をも活かすの力を持っている。
他目
(
よそめ
)
に解せられない愉快な晩餐というも全く木綿子の力である。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
それに受持以外に課外二時間
宛
(
づゝ
)
と來ては、
他目
(
よそめ
)
には勞力に
伴
(
ともな
)
はない報酬、否、報酬に伴はない勞力とも見えやうが、自分は
露聊
(
つゆいさゝ
)
かこれに不平は抱いて居ない。
雲は天才である
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼女を
繞
(
めぐ
)
る事情とが、この古い武家屋敷に、女ふたりの主従だけを取り残して、
他目
(
よそめ
)
にも勿体ない程な若さと美しさを、空しく
鋲打
(
びょううち
)
の門の中に閉じ籠めさせて来たのであった。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
他目
(
よそめ
)
にももどかしいほど回復もおそかった。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「さようで……あの斬られたお熊さんと十五違いぐらいで御座いましょうか……いつもお二人で仲よく
当寺
(
こちら
)
へお参りになりましたもので、
他目
(
よそめ
)
には実の
親娘
(
おやこ
)
としか見えませぬくらい仲が宜しゅう御座いましたが……南無南無南無……」
狂歌師赤猪口兵衛:博多名物非人探偵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
他目
(
よそめ
)
には誰も何とも気がつかなかったが、印度人はブルブルと
慄
(
ふる
)
えて、危なく槍を取落すところを、しっかりと持ち直して、わざとらしく横を向きました。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
近頃はこの事件に
匙投
(
さじな
)
げ気味になったのではないかとさえ、
他目
(
よそめ
)
には思われました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを
得避
(
えさ
)
くる事もできないで、巣を破られた
蜂
(
はち
)
が、その巣跡にむなしくたむろしているごとくに、このあばら屋に
水籠
(
みずごも
)
りしている予を
他目
(
よそめ
)
に見たらば、どんなに寂しく見えるだろう。
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
肥大なる与八と、短小なる米友が打連れて歩くところは、当人たちは至極無事のつもりだけれど、
他目
(
よそめ
)
で見ればかなりの奇観を呈しているのでありました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、苦労を語りあうことが、
他目
(
よそめ
)
にも
羨
(
うらや
)
ましいほど親しい藤孝と光秀なのである。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
今の庵主は五十
許
(
ばかり
)
の品のよい老女で、この老女がこの頃になって何か胸に思い余ることがありげに、しきりに心を苦しめているのが、そう思って見れば
他目
(
よそめ
)
にも見えます。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
モシ、
他目
(
よそめ
)
で見たならば、たしかにこれは
馬喰
(
うまくら
)
いの
丑五郎
(
うしごろう
)
以上の悪態であります。卒塔婆小町の婆さんも、ここに至るとホトホト米友を憎らしく思いだしてきたのも無理ではありません。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お君は日頃に
似気
(
にげ
)
なく争いました。お銀様はほとんど狂気の
体
(
てい
)
で写真を
遣
(
や
)
らじとしました。一枚の写真を争う
両人
(
ふたり
)
は、ほとんど
他目
(
よそめ
)
からは組打ちをしているほどの烈しさで揉み合いました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
他
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
“他”で始まる語句
他
他人
他所
他人事
他家
他愛
他処
他事
他国
他所行