二世にせ)” の例文
寤寐ごびにもはなれず起居ききよにもわすれぬ後來のち/\半身はんしん二世にせつま新田につたむすめのおたかなり、芳之助よしのすけはそれとるより何思なにおもひけん前後ぜんご無差別むしやべつ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二世にせちぎりとおきてにさえ出ている夫は、二重にも三重にも可愛がってくれるだろう、また可愛がって下さるよと受合われて、住み馴れたいえを今日限りと出た。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それじゃおかみさんご機嫌よう、二度と忠太郎は参りやしません——愚痴ぐちをいうじゃねえけれど、夫婦は二世にせ、親子は一世いっせと、だれが云い出したか、身に沁みらあ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
双六谷すごろくだにへは、翌早朝よくさうてう意気組いきぐみ今夜こんや二世にせかけた勝敗しようはいしに、たゞむつまじいのであらうとおもふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たがいに堅く二世にせを誓い合って、放しませぬ離れませぬと熱々の間柄である。
曽我の暴れん坊 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
二世にせを契った夫友之助を振捨てゝ、蟠龍軒とじょうを通じて、友之助をき者にせんとたくみたる女でございます、いつぞや私を取って押え、たんまで吐きかけた恩知らず、私の遺恨とは申しながら
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
書面は求馬が今年ことしの春、かえで二世にせの約束をした起請文きしょうもんの一枚であった。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
海山にもかへがたき御恩をあだにいたしそうろう罪科つみとが、来世のほどもおそろしく存じまゐらせ候……とあってお園の方の手紙にはただ二世にせ三世さんぜまでも契りし御方おかたのお身上みのうえに思いがけない不幸の起りしため
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
なに二世にせなぞがあるものか、たましひほろびないでも、ねば夫婦ふうふはわかれわかれだ。』
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
交えねば自身は無論の事、二世にせかけて誓える女性にょしょうをすら通す事は出来ぬ。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よしなんとでも言へ、昨日きのふ今日けふ二世にせかけてちぎりむすんだ恋女房こひにようばうがフト掻消かきけすやうに行衛ゆくゑれない。それさがすのが狂人きちがひなら、めしふものはみな狂気きちがひあついとふのもへんで、みづつめたいとおもふも可笑をかしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
... 働く鬼の女房にょうぼに、」源「枕探しの鬼神きじんとやら、」菊「そういうお主が度胸なら、明日あすが日ばれて縄目にあい、」源「お上のお仕置受ければとて、」菊「ひまゆく駒の二人づれ、」源「二本のやり二世にせかけて、」菊「離れぬ中の紙幟かみのぼり、」源「はては野末に、」菊「身は捨札、」源「思えば果敢はかない、」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)