いか)” の例文
旧字:
知る者にあらずいかでか料理通の言なりというべき就中なかんずく小説のごときは元来その種類さまざまありて辛酸甘苦いろいろなるを五味を愛憎する心を
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かくのごとく汝らも外は正しく見ゆれども、内は偽善と不法とにて満つるなり。蛇よ、まむしすえよ、なんじらいかで、ゲヘナの刑罰を避け得んや。
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
かかるはなはだしき挫折に対しいかでかその反動の起こらざるべき。当時ドイツの学者ラインホールド・シュミード氏の著わせし記述にいわく
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
たゞ打ちあるほどの人にも座せず、一、二人のほどだにもいかでかと思ひしに、父の大臣討ち取られし日、御方みかたいくさ千人ことごとくにこの人を犯してき
さもあらば、必ず思知る時有らんと言ひしその人の、いかで争で吾が罪をゆるすべき。ああ、吾が罪はつひゆるされず、吾が恋人は終に再び見る能はざるか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「百首の題を給ふ。年内に詠進すべしと云々、連々として三百首いかでか風情を得んや、はなはだ以て堪へがたし」
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
元より悟空ごくうが神通なき身の、まいて酒に酔ひたれば、いかで犬にかなふべき、黒衣は忽ちひ殺されぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
れど今回の分娩ぶんべんは両親に報じやらざりし事なれば今更にそれぞとも言ひ分けがたく、殊には母上の病気とあるに、いか余所よそにやは見過みすごすべき、し途中にて死なば死ね
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
いつぞや召使の婢が金子をかすめて出奔せしに、お艶はいかのがすべきとて、直ちに足留あしどめの法といえるを修したりき、それかあらぬか件の婢は、脱走せし翌日よりにわかに足のやまい起りて
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふとまどより見おこせたるに、やゝ程とほくへだてて女人をみなひとり、着けたるきぬ白う花のひまに照り映ゆるさまなり。かゝる境にいかでとあやしけれど、趨り出でゝ見むとすれば、はやう遁れき。
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たま/\来つて蘭軒の故宅を買ふものが、いかでか蘭軒の徳風にのつとることを得よう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
◯十人の子をことごとく失い身はこの上なき困苦の中にある友に向って、この言をなすのいかに無情なるよ! 汝の子の死は罪の故なりと告ぐ。かかる言を以てしていかでヨブを首肯せしむるを得よう。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
実子をもうしなわんといたした無慈悲の女、天道いかでこれを罰せずに置きましょう長二郎の孝心厚きに感じ、天が導いて実父の仇を打たしたものに違いないという理解に、家齊公も感服いたされまして
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
欠かば いかでか威名八州を振ふを得ん
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かく汝らは預言者を殺しし者の子たるを自らあかしす。なんぢら己が先祖の桝目ますめみたせ。蛇よ、まむしすゑよ、なんぢらいかでゲヘナの刑罰を避け得んや。
如是我聞 (新字新仮名) / 太宰治(著)
落着かれぬままに文三がチト読書でもしたら紛れようかと、書函ほんばこの書物を手当放題に取出して読みかけて見たが、いッかないかな紛れる事でない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
我の愛か、死をもておびやかすとも得て屈すべからず。宮が愛か、なにがしみかどかむりを飾れると聞く世界無双ぶそう大金剛石だいこんごうせきをもてあがなはんとすとも、いかでか動し得べき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
同志ひそかに此処ここつどいては第二の計画を建て、磯山逃奔とうほんすともいかで志士の志の屈すべきや、一日も早く渡韓費を調ととのえて出立の準備をなすにかずと、日夜肝胆かんたんくだくこと十数日
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
何たる無情ぞ、しこのままに死なば死ね、いかでかかる無法の制裁に甘んじ得んや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
仮令たとひ此方こなたにては知らぬ顔してあるべきも、いかでかの人の見付けて驚かざらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さあれ覆水ふくすいいかでか盆にえるべき、父上にはいずれ帰国の上、申し上ぐることあるべしと答え置き、それより中江、栗原両氏に会いて事情を具し、しょうにその意なきことをことわりしかば
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)