三浦みうら)” の例文
わたくし三浦みうらとついだころは五十さいくらいでもあったでしょうが、とう女房にょうぼう先立さきだたれ、独身どくしんはたらいている、いたって忠実ちゅうじつ親爺おやじさんでした。
もなくいんさまは三浦みうらすけ千葉ちばすけ二人ふたり武士ぶしにおいいつけになって、なんさむらい那須野なすのはらててわたしをさせました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「それについて、中村君、きみの部下の三浦みうら刑事をかしてもらいたいんだがね。あの男は、警視庁第一の変装の名人だからね。」
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三浦みうらはいつもナポレオン一世の下に陣取りながら、結城揃ゆうきぞろいか何かの襟を重ねて、ユウゴオのオリアンタアルでも読んで居ようと云うのですから
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
言って見れば、山上一族が住む相州三浦みうら公郷村くごうむらからほど遠からぬ横須賀の漁港に、そこに新しいドック修船所が幕府の手によって開き始められていたのだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
枳園は大磯を根拠地として、なか三浦みうら両郡の間を往来し、ここに足掛十二年の月日を過すこととなった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
快霽かいせい三浦みうらニ抵ル。路左折スレバ則ようや狭隘きょうあいナリ。小渡ヲ過グ。村吏数人路側ニ相迎フ。始テ北岸ノワガ部内ニ係ルヲ知ル。大沢アリ品井トイフ。周廻二、三里。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その頃流行はやり出したばかりの麻雀マージャンを四人で打ったり、日曜日の午後などには三浦みうら三崎みさきの方面へドライヴしてはゴルフにきょうじたり、よその見る眼もむつまじい四人連れだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
三浦みうらむすめ
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まだうらわかでありながら再縁さいえんしようなどというこころ微塵みじんもなく、どこまでも三浦みうら殿様とのさまみさおとうすとは見上みあげたものである。
ふなべりによれば、しぶきを立てる大波のうねり、船尾に帯をのべる夜光虫の燐光りんこう、目を上ぐれば、眉を圧して迫る三浦みうら半島の巨大なる黒影、明滅する漁村の燈火、そして
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
曰く「僧院の秋」の会、曰く「三浦みうら製糸場主」の会、曰く猫の会、曰く杓子しやくしの会、方今はうこんの文壇会はなはだ多しといへども、いまだ滑脱くわつだつの妙を極めたる、くの如き応酬ありしを聞かず。かたはらに人あり。
客はいよいよ不思議がって、ここの本陣の先祖に相州そうしゅう三浦みうらから来たものはないかと尋ねる。答えは、そのとおり。その先祖は青山監物けんもつとは言わなかったか、とまた客が尋ねる。まさにそのとおり。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わたくしべつ婦道ふどううの、義理ぎりうのとって、六ヶむずかしい理窟りくつからして、三浦みうらみとどまったわけでもなんでもございませぬ。
「まさか君が嘘を云っているのじゃあるまいね」と青木はまだ疑わしそうに「それじゃ聞くがね、君は麹町の三浦みうらって云う家を知らないかね。そこの屋根裏の赤い部屋を」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)