一艘いつそう)” の例文
弦月丸げんげつまる運命うんめい最早もはやぷん、二ふん甲板かんぱんにはのこ一艘いつそう端艇たんていい、くなりては今更いまさらなにをかおもはん、せめては殊勝けなげなる最後さいごこそ吾等われらのぞみである。
うかべたか、みづのじと/\とあるへりにかけて、小船こぶね一艘いつそうそこつたかたちは、ところがられぬおほいなるうをの、がくり、とんだ白髑髏しやれかうべのやうなのがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゞゐてとりふねかぬほど一點いつてんポツンとしろかげ、それが段々だん/″\ちかづいてるとそは一艘いつそう白色巡洋艦はくしよくじゆんやうかんであつた。
五位鷺ごゐさぎはたらくこと。ふね一艘いつそうぐなれば、あしかぜ風情ふぜいにもまらず、ひら/\と上下うへしたつばさあふる。とふねはうは、落着済おちつきすましてゆめそらすべるやう、……やがてみぎははなす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしまど硝子越がらすごしに海面かいめんながめると、星影ほしかげあわ波上はじやうには、一二そうさびうかんで小端艇せうたんていほかには、この大海原おほうなばらわたるともゆべき一艘いつそうふねもなかつた。