天地てんち)” の例文
すべて本来の持ち味をこわさないことが料理の要訣ようけつである。これができれば俯仰ふぎょう天地てんちずるなき料理人であり、これ以上はないともいえる。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
が、なんとなく、ひとよりも、そらくもが、いろ/\のかげつて、はなながめさうな、しづんださびしいおもむきつたのは、奧州あうしう天地てんちであらう。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おきなる島山しまやまいたゞき紫嵐しらんつゝまれ、天地てんちるとして清新せいしんたされてときはま寂寞じやくばくとしていつ人影じんえいなく、おだやかにせてはへすなみろう
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さうして自分じぶん天地てんちそのはねを一ぱいひろげる。何處どこてもたゞふかみどりとざされたはやしなか彼等かれらうたこゑつてたがひ所在ありかつたりらせたりする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おどろいたのは御亭主ごていしゆでした。大變たいへんなことになつたものです。天地てんちが、ひつくりかえつたやうです。そんながそれ以來いらい幾日いくにち幾日いくにちつゞきました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
天地てんちあいだにはそこにうごかすことのできぬ自然しぜん法則さだめがあり、竜神りゅうじんでも、人間にんげんでも、その法則さだめそむいては何事なにごともできぬ。
このはこの中にはいっているのは、竜宮りゅうぐうのふしぎな護符ごふです。これをっていれば、天地てんちのことも人間界にんげんかいのことものこらず目にるようにることができます。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなればはじめより此上このうへらで、世間せけん裏屋うらやかぎれるものとさだめ、我家わがやのほかに天地てんちのなしとおもはゞ、はかなきおもひにむねえじを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ことに、このらせをけて、天地てんちくつがえったほど驚愕きょうがくおぼえたのは、南町奉行みなみまちぶぎょう本多信濃守ほんだしなののかみいもうとれんであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よ、東海とうかいそらあけて、きょくじつたかくかがやけば、天地てんち正気せいきはつらつと、希望きぼうはおどる大八島おおやしま……。」
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いま世界せかい各國かくこくたがひへいみがき、こと海軍力かいぐんりよくには全力ぜんりよくつくして英佛露獨エイフツロドクわれをとらじと權勢けんせいあらそつてる、しかして目今もくこんその權力けんりよく爭議さふぎ中心點ちゆうしんてんおほ東洋とうやう天地てんち
比日このころ天地てんちわざわひ、常に異なる事有り。思ふに朕が撫育むいくなんぢ百姓に於きて闕失けつしつせる所有らむか。今ことさらに使者を発遣ほつけんしての疾苦を問はしむ。宜しく朕がこころを知るべし。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
贔屓ひいきなさるゝかと言しかば越前守殿大いにいかられナニ婦人ふじんを贔屓するとは不屆の一言天地てんち自然しぜん淨玻璃じやうはりかゞみたて邪正じやしやうたゞごふはかりを以て分厘ふんりんたがはず善惡を裁斷する天下の役人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
空氣がにごツてゐるばかりならいが、其の空氣を吸ツてきてゐる人間はみなにごツてゐる………何しろ二百まんからの人間が、せま天地てんちに、パンに有付ありつかうと思ツて盰々きよと/\してゐるんだ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
随分ずゐぶんちやをとこだな……草履下駄ざうりげたかたちんばにいてやつがあるか、いぬがくはへてつた、ほかに無いか、それではそれでけ、醋吸すすひの三せい孔子こうし老子らうし釈迦しやかだよ、天地てんち唐物緞子からものどんす
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
鶴見が壺中こちゅう天地てんちなぞというのはこんなものかと思っているうちに、夢が青い空気のなかからしぼりだされる。虚無の油である。それがまた蟄伏ちっぷくしていたくちなわのうごめきを思わせる。
しかし自から不幸の輪廓をえがいてこのんでそのうち起臥きがするのは、自から烏有うゆうの山水を刻画こくがして壺中こちゅう天地てんちに歓喜すると、その芸術的の立脚地りっきゃくちを得たる点において全く等しいと云わねばならぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもわたしつてゐる仲間なかまは、今晩こんばんはやつてないでゐるのに、さうしてわたし一人ひとりあかるくほがらかな天地てんちつきたいしてゐるのに、そのうへかりれてとほる、といつた滿足まんぞくはしてゐながら
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
突進し、震蕩しんたうし、顛覆する天地てんちの苦鬪
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
み、たきのごとくに暴雨ばううそ〻ぎて天地てんちめい
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
天地てんちのかぎりにひろごりぬる。
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
天地てんち初生しよせいの元気を復活し
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
くしき天地てんちの靈となり
天地有情 (旧字旧仮名) / 土井晩翠(著)
これよりして、くちまでの三里余りよは、たゞ天地てんちあやつらぬいた、いはいしながれ洞窟どうくつつてい。くもれても、あめ不断ふだんるであらう。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はやし彼等かれら天地てんちである。落葉おちばくとて熊手くまでれるとき彼等かれらあひともなうて自在じざい徜徉さまよふことが默託もくきよされてある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
天地てんちの二しん誓約うけいくだりしめされた、古典こてん記録きろく御覧ごらんになれば大体だいたい要領ようりょうはつかめるとのことでございます。
うみ砂山すなやまや、そらにかがやいているひかりには、すこしのわりがなかったけれど、天地てんちきゅうにおしだまってしまって、なにもかも、おしのごとくにられたのです。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
假初かりそめ愚痴ぐち新年着はるぎ御座ござりませぬよし大方おほかたまをせしを、やがあわれみてのたまはもの茂助もすけ天地てんちはいして、ひとたか定紋でうもんいたづらにをつけぬ、何事なにごとくて奧樣おくさま
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
も見ずして迯行にげゆきけり然ば松葉屋まつばやの二かい天地てんちくつがへるばかりのさわぎになりあるじ半左衞門はんざゑもんを始として皆々みな/\かいかけ來り見るにへい四郎はあけそみ苦痛くつう有樣ありさまにのた打廻うちまはかたはらに瀬川せがは懷劔くわいけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしいそ取上とりあげた。素早すばや一個いつこ夫人ふじんわたし、今一個いまいつこ右手めてとらへて『日出雄ひでをさん。』とばかり左手ひだり少年せうねん首筋くびすぢかゝへたときふねたちまち、天地てんちくだくるがごとひゞきとも海底かいていぼつつた。
まづ此方こちらへと、鑑定めきゝをしてもらつもりで、自慢じまん掛物かけもの松花堂しやうくわだう醋吸すすひせいを見せるだらう、掛物かけものだ、箱書はこがき小堀こぼりごんらうで、仕立したてたしかつたよ、天地てんち唐物緞子からものどんすなか白茶地しらちやぢ古金襴こきんらんで。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぼく諸君しよくんこの不可思議ふかしぎなる大宇宙だいうちうをも統御とうぎよしてるやうな顏構かほつきをしてるのをると冷笑れいせうしたくなるぼく諸君しよくんいますこしく眞面目まじめに、謙遜けんそんに、嚴肅げんしゆくに、この人生じんせいこの天地てんち問題もんだいもらひたいのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
一議いちぎに及ばず、草鞋わらじを上げて、道を左へ片避かたよけた、足の底へ、草の根がやわらかに、葉末はずえはぎを隠したが、すそを引くいばらもなく、天地てんちかんに、虫の羽音はおとも聞えぬ。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たかれ、いえたおれ、はしながれてしまったので、じつに、天地てんちくらになったのであります。人々ひとびとは、そのときのおそろしかったことをいまでも記憶きおくしています。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たま姫樣ひめさま御出生ごしつしやうきもへず、るやさくらむなしくなりぬるを、何處いづくりてか六三ろくさ天地てんちなげきて、ひめいのちゆゑばかりみじかきちぎりにあさましき宿世しゆくせおもへば、一人ひとりのこりてなんとせん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たもちしと云事あり是等は即ち理外りぐわいの物語りにて天地てんちの間に不思議の有しことはあげかぞへ難し切れて助かる道理は無しと雖も世界の不思議神佛しんぶつの利益は無にも非ずさすれば其方の父富右衞門も蘇生そせいいたすじき者でも無い隨分ずゐぶん神佛を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
達吉たつきちは、天地てんちくらだった。大波おおなみが、自分じぶんんだ。からだ前後上下ぜんごじょうげれていた。わずかに、けると、しっかりと自分じぶんはけやきのえだにしがみついていた。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうじて主人しゆじんうちにあるときと、そとでしのちと、家内かない有樣ありさまは、大抵たいてい天地てんちちがひあるが家並いへなみさふらふなり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがて、ときならぬいい音色ねいろが、山奥やまおくのしかもさびしい野原のはらうえこりました。ふえ胡弓こきゅうおと、それにじってかなしいうたふしは、ひっそりとした天地てんちおどろかせました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
可悲かなしい、可恐おそろしい、滅亡めつばう運命うんめいが、ひとたちのに、暴風雨あらしつて、天地てんちとともに崩掛くづれかゝらうとするまへよる、……かぜはよし、なぎはよし……船出ふなでいはひに酒盛さかもりしたあと、船中せんちうのこらず
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やみなかあかるくらす、燈台とうだい一筋ひとすじひかりうばって、それをもみしてしまって、天地てんちあいだに、いっさいのひかりをなくしてしまおうとしているように、暴風ぼうふうあめとがちからしまずに
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨夜ゆうべやとつた腕車くるまが二だいゆきかどたゝいたので、主從しうじうは、朝餉あさげ支度したく匇々そこ/\に、ごしらへして、戸外おもてると、東雲しのゝめいろともかず黄昏たそがれそらともえず、溟々めい/\濛々もう/\として、天地てんちたゞ一白いつぱく
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのあとは、まったくかぜゆき天地てんちで、それはたとえようのないほど、さかんな景色けしきでありました。子供こどもはそれをわすれることができなかったのです。子供こどもは、こうした吹雪ふぶきるのが大好だいすきでした。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
して鳥類てうるゐ廣大無邊くわうだいむへん天地てんちいへとし、やまけり、うみよこぎり、自在じざい虚空こくう往來わうらいして、こゝろのまゝにしよくみ、おもむところねぐら宿やどる。さるをとらへてかごふうじてださずば、その窮屈きうくつはいかならむ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雷鳴らいめいに、ほとんひなむとした人々ひと/″\みゝに、驚破すはや、天地てんちひとつのこゑ
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これからわしの天地てんちだ。」と、じいさんはほほえみました。
手風琴 (新字新仮名) / 小川未明(著)
不思議ふしぎや、うたつたとき白痴ばかこゑこのはなしをおきなさるお前様まへさまもとよりぢやが、わし推量すゐりやうしたとは月鼈雲泥げつべつうんでい天地てんち相違さうゐ節廻ふしまはし、あげさげ、呼吸こきふつゞところから、だいきよらかなすゞしいこゑといふもの
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひろさびしい天地てんちあいだ自由じゆうにふるまうことができたのでした。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
一段高まる経の声、トタンにはたたがみ天地てんちに鳴りぬ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天地てんちが ゆれうごきました。
うみぼうずと おひめさま (新字新仮名) / 小川未明(著)