“寂寞”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
せきばく61.7%
じゃくまく10.2%
ひっそり9.8%
じやくまく6.1%
ひつそり3.1%
しじま2.0%
しん1.7%
さびしさ1.4%
じやくばく0.7%
さびしい0.3%
さびしく0.3%
さみ0.3%
さみしさ0.3%
しずか0.3%
しづか0.3%
しやくまく0.3%
じゃくばく0.3%
ひつそ0.3%
セキバク0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
恥を知らない太陽の光は、再び薔薇に返って来た真昼の寂寞せきばくを切り開いて、この殺戮さつりくと掠奪とに勝ち誇っている蜘蛛の姿を照らした。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこに、先刻さっきの編笠目深まぶかな新粉細工が、出岬でさきに霞んだ捨小舟すておぶねという形ちで、寂寞じゃくまくとしてまだ一人居る。その方へ、ひょこひょこく。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまさぐりに、例の上がり場へ……で、念のために戸口に寄ると、息が絶えそうに寂寞ひっそりしながら、ばちゃんと音がした。ぞッと寒い。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつまでも変らずにある真鍮しんちゆうの香炉、花立、燈明皿——そんな性命いのちの無い道具まで、何となく斯う寂寞じやくまく瞑想めいさうに耽つて居るやうで
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一時ひとしきり騒々さう/″\しかつたのが、寂寞ひつそりばつたりして平時いつもより余計よけいさびしくける……さあ、一分いつぷん一秒いちびやうえ、ほねきざまれるおもひ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
急に墓場のような寂寞しじまになったので、そっと首を出して往来をながめると、ああ——と誰もうめいたままで口もきけなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょいと吹留ふきやむと、今は寂寞しんとして、その声が止まって、ぼッと腰障子へ暖う春の日は当るが、軒を伝う猫もらず、雀の影もささぬ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な寂寞さびしさは蛙の鳴く谷底の方からい上って来た。恐しく成って、逃げるように高瀬は妻子の方へ引返して行った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おきなる島山しまやまいたゞき紫嵐しらんつゝまれ、天地てんちるとして清新せいしんたされてときはま寂寞じやくばくとしていつ人影じんえいなく、おだやかにせてはへすなみろう
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
持て御出なさる樣子是から先は松原で寂寞さびしい道だ見ればまだ御年も行ぬ御若衆御一人にては不用心どう駕籠かごに乘て御出なせへと云に半四郎は大にこまり夫は/\御前方御深切にさう云てくださるゝが私しはどうも駕籠がきらひなりれども生質うまれつき仕合に足が達者で日に廿里三十里はらく歩行あるきますから先駕籠はよしに仕ませうと草鞋わらぢひも
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
尋る中彌生やよひの空も十九日子待ねまちの月のやゝ出ておぼろながらに差かゝるつゝみやなぎ戰々そよ/\吹亂ふきみだれしも物寂寞さびしく水音みづおとたかき大井川の此方のをかへ來かゝるに何やらん二ひきの犬があらそひ居しが安五郎を見るとひとしくくはへし物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
戸外おもて寂寞さみしいほどともしびの興はいて、血気の連中、借銭ばかりにして女房なし、河豚ふぐも鉄砲も、持って来い。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
をみな『わが情は香玉の熱きに似もやらず、たゞ少しく君がおん寂寞さみしさを慰めむのみ』狎れむとすれば遮りて『相見るよろこび、何ぞ必ずしもここにあらむ』
『聊斎志異』より (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
塚田巡査が喜んで帰ったあとは又寂寞しずかになった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うごくと見えて寂寞しづか
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
翁のゆきし後、火はくれないの光を放ちて、寂寞じゃくばくたる夜の闇のうちにおぼつかなく燃えたり。夜更け、潮みち、童らがたきし火も旅の翁が足跡も永久とこしえの波に消されぬ。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
寂寞ひつそる。かはづこゑやむだを、なんと、そのは、はづみでころがりした服紗ふくさぎんなべに、れいりつゝ、れい常夏とこなつはなをうけようとした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寂寞セキバクたる光りの海から、高くヌキでゝ見える二上の山。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)