“しん”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:シン
語句割合
心18.8%
信11.2%
芯9.8%
真8.9%
森8.4%
神4.9%
寂4.7%
寂然2.8%
秦2.7%
寝2.6%
晋1.9%
清1.9%
新1.8%
眞1.7%
進1.6%
讖1.5%
死1.4%
親1.4%
森然1.3%
臣1.1%
蕊0.8%
身0.6%
辛0.5%
晉0.4%
森閑0.4%
紳0.4%
参0.3%
寂寞0.3%
伸0.3%
振0.3%
核0.3%
震0.3%
箴0.2%
深0.2%
眞實0.2%
粛然0.2%
診0.2%
晨0.1%
申0.1%
針0.1%
侵0.1%
寂寥0.1%
心臓0.1%
沁0.1%
瞋0.1%
膸0.1%
蘂0.1%
鍼0.1%
閴0.1%
品0.1%
審0.1%
ヷ神0.1%
丑0.1%
中0.1%
中子0.1%
中心0.1%
奏0.1%
寐0.1%
寢0.1%
幽寂0.1%
慎0.1%
梓0.1%
梢0.1%
森乎0.1%
汁0.1%
沈0.1%
津0.1%
深然0.1%
瀋0.1%
無念0.1%
甄0.1%
疹0.1%
真個0.1%
真実0.1%
縉0.1%
藩0.1%
螓0.1%
襯0.1%
譖0.1%
辰0.1%
閑0.1%
閑寂0.1%
閴寂0.1%
闃寂0.1%
闐0.1%
陰森0.1%
静寂0.1%
静粛0.1%
髄0.1%
麎0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
もの優しく肩が動くと、その蝋の火が、件の絵襖の穴を覘(のぞ)く……その火が、洋燈(ランプ)の心(しん)の中へ、𤏋(ぱっ)と入って、一つになったようだった。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この夏もお互(たがひ)に旅(たび)先や何かで久しく顏(かほ)を合せなかつた二人、さて新秋になると、向(むか)うは熱(あた)海で勉強(べんけう)して大に強(つよ)くなつたと自信(しん)を持ち
「おらあもういっそく(百)四五十もあげたぜ、そろそろひきあげて一杯やるとしようや、おらあもう躯の芯(しん)まで冷えきっちまった」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこを遡(さかのぼ)ると、自分の現(うつ)し身(み)を搏(う)っている血をとおして、遠い大祖(おおおや)たちの神業(かみわざ)と、国体の真(しん)が、いつか明らかに、心に映じてくる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
湯の谷もここは山の方へ尽(はずれ)の家で、奥庭が深いから、傍(はた)の騒しいのにもかかわらず、森(しん)とした藪蔭(やぶかげ)に、細い、青い光物が見えたので。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神(しん)澄み、心和やかにして、一片の俗情さえも、断じて自分を遮りえないという、こういう境地に辿りつかないでは、うそだと思います。
表門の潜戸(くゞりど)ばかりを開(あ)けた家中は空屋敷(あきやしき)のやうに寂(しん)として居る。自分は日頃から腹案して居る歌劇(オペラ)脚本の第一頁に筆を下して見た。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
寂然(しん)と更けた纐纈城、耳を澄ませば地下に当って、物の呻くような音がする。人間の血を無限に貪(むさぼ)る、血絞り機械の音である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
むかし秦(しん)の良臣は、匈奴(きょうど)の滅びざるうちは家を造らず、といいました。蜀外一歩出れば、まだ凶乱を嘯(うそぶ)く徒、諸州にみちている今です。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ともしらぬ一同は、その日も帰らぬ源三郎を案じながらも、門之丞のことなどあれこれと話しあって、その晩は早く寝(しん)についた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昭は一時、大いに威を振るい、大魏大将軍になり、また、晋(しん)王の九錫(きゅうしゃく)をうくるにいたって、ほとんど、帝位に迫るの勢威を示した。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『乍浦集』の原本は西暦千八百四十二年即(すなわち)我が天保十三年壬寅の年英国の軍隊が南清(しん)の諸州を寇(こう)し遂に香港(ホンコン)を割譲せしむるに至った時
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
おこのが払(はら)った手(て)のはずみが、ふと肩(かた)から滑(すべ)ったのであろう。袂(たもと)を放(はな)したその途端(とたん)に、新(しん)七はいやという程(ほど)、おこのに頬(ほほ)を打(う)たれていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
海蛇(うみへび)に捕(と)られたとは、眞(しん)に妙(めう)な事(こと)だと思(おも)つて居(を)りましたが、それがよく隱語(いんご)を使(つか)ふ伊太利人(イタリーじん)の僻(くせ)で、其(その)書面(しよめん)ではじめて分(わか)りましたよ。
思はゞお花殿に力を添(そへ)敵(かたき)吾助を討取べしと其許心付れしならば其由悴に告て給るべし又此金子は纔(わづか)ながらお花殿へ進(しん)じ申度とて金二百兩の包を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この言葉が讖(しん)をなしたのか、果然、その晩、季節はずれの暴風が一夜吹きつのった。そして眼の前の砂丘の上へ石の標柱を現出した。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
年忌の法会(ほうえ)などならばその人を思ひ出すとか、今に幻(まぼろし)に見ゆるとか、年月の立つのは早いものとか、彼人が死(しん)でから外に友がないとか
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「耳の形のふくよかなことは。これは水耳(すいじ)と申します。木耳(もくじ)にしなければなりますまい。六親(しん)を失い財帛(ざいはく)不足孤苦無援の木耳にね」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
白く谷川がさらさらと流(ながれ)ている。その辺は一面に小石や、砂利で、森然(しん)として山に生い茂った木立が四境(あたり)を深く鎖(とざ)している。
捕われ人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「『君(きみ)辱(はずかし)めらるれば臣(しん)死(し)す』ということさえある。臣が君より上席に坐れば、とりもなおさず臣が君を辱めることになる」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
怪談を話す時には、いつもランプの蕊(しん)を暗くし、幽暗(ゆうあん)な怪談気分にした部屋(へや)の中で、夫人の前に端坐(たんざ)して耳をすました。
B それで其女(そのをんな)はね。私(わたし)の一身(しん)を捧(さゝ)げる人(ひと)はあなたより外(ほか)にはないとか何(なん)とか云(い)つてね。是非(ぜひ)この哀(あは)れなる悶(もだ)えの子(こ)を救(すく)つて下(くだ)さいとか何(なん)とか書(か)いたものだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
我(わが)越後のごとく年毎(としごと)に幾丈(いくぢやう)の雪を視(み)ば何(なん)の楽(たのし)き事かあらん。雪の為(ため)に力(ちから)を尽(つく)し財(ざい)を費(つひや)し千辛(しん)万苦(く)する事、下(しも)に説(と)く所(ところ)を視(み)ておもひはかるべし。
晉(しん)の少主(せうしゆ)の時(とき)、婦人(ふじん)あり。容色(ようしよく)艷麗(えんれい)、一代(いちだい)の佳(か)。而(しか)して帶(おび)の下(した)空(むな)しく兩(りやう)の足(あし)ともに腿(もゝ)よりなし。餘(よ)は常人(じやうじん)に異(こと)なるなかりき。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
が、神聖の地域として、教主の宮川覚明が、許さない限りは寄り付くことの出来ない、この岩山の洞窟の入り口——そこの辺りには人気がなくて、森閑(しん)として寂しかった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
武の長男の紳(しん)が王という家の女(むすめ)を娶(めと)っていた。ある日武は他出して林児を留守居にしてあった。そこの書斎の庭に植えてある菊の花が咲いていた。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
子曰く、参(しん)や、吾が道、一以て之を貫くと。曾子曰く、唯(い)と。子出(い)ず。門人問いて曰く、何の謂ぞやと。曾子曰く、夫子の道は、忠恕のみと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と得意の一節寂寞(しん)とする。——酔えば蒼(あお)くなる雪の面(おもて)に、月がさすように電燈の影が沈むや。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『性理字義(せいりじぎ)』に曰く、『生死をもって論ずれば、生は気の伸(しん)、死は気の屈(くつ)。死の上について論ずれば、すなわち魂の升(のぼ)るは神となり、魄の降(おり)るは鬼となる。 ...
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
別府(べっぷ)さんがそういうのもむりはなかった。きょうの星野(ほしの)は、投手としてはかなりできがよかったけれども、打者としては、ふるわなかった。投手ゴロひとつ、三振(しん)ひとつ、という不景気(ふけいき)な成績(せいせき)だ。
星野くんの二塁打 (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
……いま言ったように、核(しん)のところにはっきりしないところがあって、殺されるまではわかっているが、どんな方法で殺られるかわからねえから防ぎがつかないのだ。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
八年春三月、工部尚書(こうぶしょうしょ)厳震(げんしん)安南(あんなん)に使(つかい)するの途(みち)にして、忽(たちま)ち建文帝に雲南に遇(あ)う。旧臣猶(なお)錦衣(きんい)にして、旧帝既(すで)に布衲(ふとつ)なり。震(しん)たゞ恐懼(きょうく)して落涙止(とど)まらざるあるのみ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この語は箴(しん)をなした。三島由紀夫は終戰とともに、非情な「殺人者」として登場したからである。もつともこの正體を世間が認識するまでには、相當の時日を必要とした。
それから追いおいに立身して、深(しん)州の録事参軍(ろくじさんぐん)となったが、風采も立派であり、談話も巧みであり、酒も飲み、鞠(まり)も蹴る。それで職務にかけては廉直(れんちょく)というのであるから申し分がない。
私は眞實(しん)から愛した。その心持には今日でも變りがない。
雪をんな (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
二人(ふたり)は連れだって中二階の前まで来たが、母屋(おもや)では浪花節(なにわぶし)の二切(ふたき)りめで、大夫(たゆう)の声がするばかり、みんな耳を澄ましていると見えて粛然(しん)としている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「震災後二年を隔てゝ夏秋の交に及び、先生時邪に犯され、發熱劇甚(げきじん)にして、良醫交〻(こも/″\)來(きた)り診(しん)し苦心治療を加ふれど効驗なく、年八十にして七月十八日溘然(かふぜん)屬纊(ぞくくわう)の哀悼(あいたう)を至す」
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『晨(しん)と榮子は来ないけれど。』
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
是(ここ)に於(おい)て(七)之(これ)を右(みぎ)に鼓(こ)す。婦人(ふじん)大(おほい)に笑(わら)ふ。孫子(そんし)曰(いは)く、『約束(やくそく)明(あきら)かならず、(八)申令(しんれい)熟(じゆく)せざるは、將(しやう)の罪也(つみなり)』と。復(ま)た三令(れい)五申(しん)して之(これ)を左(ひだり)に鼓(こ)す。婦人(ふじん)復(ま)た大(おほい)に笑(わら)ふ。
今までは注射針(しん)を以て左の腕の静脈から血を採って居たが、今回だけは、僕の左の橈骨(とうこつ)動脈にガラス管をさしこみ、その儘(まゝ)ゴム筒(かん)でつないで、僕の動脈から
恋愛曲線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
始(はじめ)には越後の諸勝(しよしよう)を尽(つく)さんと思ひしが、越地(ゑつち)に入し後(のち)、年(とし)稍(やゝ)侵(しん)して穀価(こくか)貴踊(きよう)し人心穏(おだやか)ならず、ゆゑに越地を践(ふむ)こと僅(わづか)に十が一なり。しかれども旅中(りよちゆう)に於て耳目(じもく)を新(あらた)にせし事を挙(あげ)て此書に増修(そうしう)す。
出る、ともう、そこらで梟(ふくろう)の声がする。寂寥(しん)とした森の下を、墓所に附いて、薄暮合いに蹴込(けこみ)が真赤(まっか)で、晃々(きらきら)輪が高く廻った、と思うと、早や坂だ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
活しながらに一枚〻〻皮を剥ぎ取れ、肉を剥ぎとれ、彼等が心臓(しん)を鞠として蹴よ、枳棘(からたち)をもて脊を鞭(う)てよ、歎息の呼吸涙の水、動悸の血の音悲鳴の声、其等をすべて人間(ひと)より取れ、残忍の外快楽なし
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
沁(しん)みりと、伝右衛門はいった。そして
べんがら炬燵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仏が寺門屋下に鴿(はと)蛇猪を画いて貪(どん)瞋(しん)痴(ち)を表せよと教え(『根本説一切有部毘奈耶』三四)、その他蛇を瞋恚(しんい)の標識とせる事多きは、右の擬自殺の体を見たるがその主なる一因だろう
松太郎は、二十四といふ齡(とし)こそ人並に喰つてはゐるが、生來の氣弱者、經驗のない一人旅に、今朝から七里餘の知らない路を辿つたので、心の膸(しん)までも疲れ切つてゐた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひたむきに閑(しづ)けかりけり日の方や向日葵(ひまはり)の蘂(しん)ぞ灼(や)けつくしたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
致させしに胸先(むねさき)より小腹(せうふく)の邊りへ一二鍼(しん)打(うつ)や否(いな)や立所に全快致しけり勇右衞門は持病(ぢびやう)ゆゑ寒暖(かんだん)に付て發(おこ)る時は急に治(をさ)まらぬ症なるに城富の鍼治(しんぢ)にて早速快氣(こゝろよく)なりける故大いに喜び紙に包(つゝみ)て金二百疋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
暫時(しばらく)、三人は無言になつた。天も地も閴(しん)として、声が無かつた。急に是の星夜の寂寞(せきばく)を破つて、父の呼ぶ声が丑松の耳の底に響いたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
丑松は唯単独(ひとり)になつた。急に本堂の内部(なか)は閴(しん)として、種々(さま/″\)の意味ありげな装飾が一層無言のなかに沈んだやうに見える。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
私はまた親睦会というから大方演じゅつ会のような種(たち)のもんかしらとおもったら、なアにやっぱり品(しん)の好い寄席(よせ)だネ。此度(こんだ)文さんも往ッて御覧な、木戸は五十銭だヨ
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「品(しん)が悪(わり)いてッたッて」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
聞(きゝ)吉兵衞不審(しん)に思ひ御意(い)の如く幼少(えうせう)の時不※(ふと)怪我(けが)を致せしが其痕(あと)が今に殘(のこ)り在しを娘が人相(さう)に係(かゝ)ると人々が申せしとて平常(つね)に苦勞致し居(をり)しが此度斯樣(かやう)の死を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
上へ返して押たる者と相見え爪印が逆(さかさ)に成て居るはコリヤ如何の譯なりやと云ければ九助はハツトばかりにて一言の返答(へんたふ)もなく只落涙(らくるゐ)に沈(しづ)み俯向(うつむい)て居たるにぞ理左衞門は迫込(せきこん)でコリヤ何ぢや御重役方よりの御不審(しん)なるぞ汝(おの)れ何心なく押たのか但(たゞし)指(ゆび)に痛所(いたみしよ)にても有て逆(ぎやく)に押たるやコリヤ何ぢや/\と迫(せき)立れど九助は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
荷車は二頭の牛に挽(ひ)かせる物と定(きま)つて居るらしいが、牝(め)牛はヒンヅ教でシヷ神(しん)の権化(ごんげ)である所から絶対に使役しない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
「胴(どいがえ)じゃございませんか。それからこいつが轆轤座(ろくろざ)、切梁(きりはり)、ええと、こいつが甲板の丑(しん)、こいつが雇(やとい)でこいつが床梁(とこ)、それからこいつが笠木(かさぎ)、結び、以上は横材でございます」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
寒気は骨の中(しん)まで突き通す
サガレンの浮浪者 (新字新仮名) / 広海大治(著)
家からお米も炭も取り寄せ、火鉢(ひばち)の炭火で炊(た)いた行平(ゆきひら)の中子(しん)のできた飯を噛(か)んで食べた。自炊を嫌(きら)ふ階下の亭主の当てこすりの毒舌を耳に留めてからは、私はたいがい乾餅(ほしもち)ばかり焼いて食べてゐた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
家内中の口を奢らせぬようにする……と言うのが前の御寮さんの心掛けで、さすが大家の御寮さんは違うたもの……これならば蔵元屋の身代は万劫(まんご)末代、大磐石と中心(しん)から感心しておりました
太祖の詔、可なることは則(すなわ)ち可なり、人情には遠し、これより先に洪武十五年高(こう)皇后の崩ずるや、奏(しん)王晋(しん)王燕(えん)王等皆国に在り、然(しか)れども諸王喪(も)に奔(はし)りて京(けい)に至り、礼を卒(お)えて還れり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それから三千年(ねん)前(ぜん)の往古(わうこ)を考(かんが)へながら、寐(しん)に就(つ)くと、不平(ふへい)、煩悶(はんもん)、何等(なんら)の小感情(せうかんじやう)は浮(うか)ぶなく、我(われ)も太古(たいこ)の民(たみ)なるなからんやと疑(うたが)はれる程(ほど)に、安(やす)らけき夢(ゆめ)に入(い)るのである。
景公(けいこう)、諸大夫(しよたいふ)と郊(かう)に迎(むか)へ、師(し)を勞(ねぎら)ひ禮(れい)を成(な)し、然(しか)る後(のち)反(かへ)つて(三二)寢(しん)に歸(かへ)る。既(すで)にして穰苴(じやうしよ)を見(み)、尊(たつと)んで大司馬(たいしば)と爲(な)す。田氏(でんし)日(ひ)に以(もつ)て益〻(ますます)齊(せい)に尊(たつと)し。
して——(女神(じょしん)は、まったく活(い)きておいでなさる。幽寂(しん)とした時、ふと御堂(みどう)の中で、チリンと、幽(かすか)な音のするのは、簪(かんざし)が揺れるので、その時は髪を撫(な)でつけなさるのだそうで。)
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「慎(しん)ちゃんの所はどうおしだえ? お父さんは知らせた方が好(い)いとか云ってお出でだったけれど。」
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
此(こ)の太祖の言は、正(まさ)に是れ太祖が胸中の秘を発せるにて、夙(はや)くより此(この)意ありたればこそ、其(それ)より二年ほどにして、洪武三年に、樉(そう)、棡(こう)、棣(てい)、橚(しゅく)、楨(てい)、榑(ふ)、梓(しん)、檀(たん)、杞(き)の九子を封じて
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
暴風が梢(しん)をわたる森の胸をひらき
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
灰ばんだ土へしつかりと埋め込まれて森乎(しん)としながら、死んでゐるやうな穏かさをもつてゐるからである。庭を愛するひとびとよ、枝や葉を見ないで根元が土から三四寸離れたところを見たまへ。
冬の庭 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
「汁(しん)の身(み)なんざそんでも、どうにか出來(でき)んのか」
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大成は陳(ちん)姓の家から幼(おさ)な名(な)を珊瑚(さんご)という女を娶(めと)ったが、大成の母の沈(しん)というのは、感情のねじれた冷酷な女で、珊瑚を虐待したけれども、珊瑚はすこしも怨(うら)まなかった。
珊瑚 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
長沮(ちょうそ)・桀溺(けつでき)耦(なら)びて耕す。孔子之を過(よ)ぎり、子路をして津(しん)を問わしむ。長沮曰く、夫(か)の輿(よ)を執る者は誰と為すと。子路曰く、孔丘と為すと。曰く、是れ魯の孔丘かと。曰く、是なりと。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
第二十一子模(ぼ)を瀋(しん)王とし、第二十二子楹(えい)を安(あん)王とし、第二十三子桱(けい)を唐(とう)王とし、第二十四子棟(とう)を郢(えい)王とし、第二十五子𣟗(い)を伊(い)王としたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しばらく彼も我も無念(しん)になって竿先を見守ったが、魚の中(あた)りはちょっと途断(とだ)えた。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
甄(しん)皇后を除くため、張韜(ちょうとう)という廷臣(ていしん)と謀って、桐の木の人形に、魏帝の生年月日を書き、また何年何月地に埋むと、呪文を記して、わざと曹丕の眼にふれる所へ捨てた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この時も高が風邪(かぜ)なれど、東京、大阪、下の関と三度目のぶり返しなれば、存外(ぞんぐわい)熱も容易には下(さが)らず、おまけに手足にはピリン疹(しん)を生じたれば、女中などは少くとも梅毒患者(ばいどくかんじや)位には思ひしなるべし。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちょうど、子爵とその婆(ばばあ)との間に挟まる、柱に凭(もた)れた横顔が婦人(おんな)に見える西洋画家は、フイと立って、真暗(まっくら)な座敷の隅へ姿を消した。真個(しん)に寐入っていたのでは無かったらしい。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これはどうもならぬそのやうに茶利(ちやり)ばかり言はで少し真実(しん)の処を聞かしてくれ、いかに朝夕(てうせき)を嘘の中に送るからとてちつとは誠も交る筈(はづ)、良人(おつと)はあつたか
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兄の縉(しん)は、大斧をよくつかい、弟の紳(しん)は方天戟(ほうてんげき)の妙手として名がある。兄弟しめし合わせて、彼を挟み討ちに
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藩(しん)王以下は、永楽(えいらく)に及んで藩に就きたるなれば、姑(しば)らく措(お)きて論ぜざるも、太祖の諸子を封(ほう)じて王となせるも亦(また)多しというべく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ト螓(しん)の首を斜(ななめ)に傾(か)しげて嫣然(えんぜん)片頬(かたほ)に含んだお勢の微笑に釣(つ)られて、文三は部屋へ這入り込み坐に着きながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
山は朝霧なお白けれど、秋の空はすでに蒼々(あおあお)と澄み渡りて、窓前一樹染むるがごとく紅(くれない)なる桜の梢(こずえ)をあざやかに襯(しん)し出(いだ)しぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
已(すで)にして大夫(たいふ)鮑氏(はうし)・高(かう)・國(こく)の屬(ぞく)、之(これ)を害(い)み、景公(けいこう)に譖(しん)す。景公(けいこう)、穰苴(じやうしよ)を退(しりぞ)く。苴(しよ)、疾(やまひ)を發(はつ)して死(し)す。田乞(でんきつ)・田豹(でんへう)の徒(と)、此(これ)に由(よ)つて高(かう)・國(こく)等(ら)を怨(うら)む。
忠義堂の前には四ながれの旛(ばん)がつるされ、堂上には三層の星辰台がみえ、三聖の神像をなかに、二十八宿(しゅく)、十二宮辰(しん)の星官(ほしがみ)たちの像も二列にならんでまつられている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
話柄が途切れて閑(しん)とすると、暑さが身に沁みて、かんかん日のあたる胴の間に、折り重なっていぎたなく寝そべった労働者の鼾が聞こえた。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
老先生が眼鏡を掛て、階下(した)で牛肉を切つて居る間は、奧の二階は閑寂(しん)として居る。そこには先生の書籍(ほん)が置並べてある。机の上には先生の置き忘れた金錢(かね)がある。
遽(にわ)かに閴寂(しん)とした家の内の空気は余計に捨吉の心をいらいらさせた。小父さんから姉さんから下女までも動いて行っている中で、黙ってそれを視ている訳には行かなかった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岸本は節子と一緒に石を敷きつめた墓地の一区域へと出た。そこまで行くと人足達の姿も高い墓石に隠れて、唯土でも掘り起すらしい音が闃寂(しん)とした空気にひびけて伝わって来ていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と幸三郎は飲めない酒を飲んでグッスリ寝付きますと、温泉場も一時(午前)から三時までの間は一際闐(しん)と致します。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それにも拘(かかわ)らず邸内が陰森(しん)として物寂しく、間ごとに点(とも)された燭台の灯も薄茫然(うすぼんやり)と輪を描き、光の届かぬ隅々には眼も鼻もない妖怪(あやかし)が声を立てずに笑っていそうであり
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
相変らず静寂(しん)としている。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
敷石のぱっと明(あかる)い、静粛(しん)としながら幽(かすか)なように、三味線(さみせん)の音(ね)が、チラチラ水の上を流れて聞える、一軒大構(おおがまえ)の料理店の前を通って、三つ四つ軒燈籠の影に送られ、御神燈の灯に迎えられつつ
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼にいわれたとおり、大悟(たいご)の眼(まなこ)をふさいで、もう生きる気も捨て、死ぬ気もすて、颯々と夜を吹くかぜと小糠星(こぬかぼし)の中に、骨の髄(しん)まで、冷たくなってしまったもののようであった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善庵は次男格(かく)をして片山氏を嗣(つ)がしめたが、格は早世した。長男正準(せいじゅん)は出(い)でて相田(あいだ)氏を冒(おか)したので、善庵の跡は次女の壻横山氏麎(しん)が襲(つ)いだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)