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黄塵
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こうじん
ふりがな文庫
“
黄塵
(
こうじん
)” の例文
「見よ、見よ。
凶雲
(
きょううん
)
没
(
ぼっ
)
して、
明星
(
みょうじょう
)
出づ。
白馬
(
はくば
)
翔
(
か
)
けて、
黄塵
(
こうじん
)
滅
(
めっ
)
す。——ここ数年を出でないうちじゃろう。青年よ、はや行け。おさらば」
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのうちに天気が好くなると今度は強い南のから風が吹いて、
呼吸
(
いき
)
もつまりそうな
黄塵
(
こうじん
)
の中を泳ぐようにして駆けまわらねばならなかった。
電車と風呂
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
さすがに紅海は太陽の光と熱砂の
霞
(
かすみ
)
と共に暑かった。汗と
砂漠
(
さばく
)
の
黄塵
(
こうじん
)
によって私の肉体も顔も口の中までも包まれてしまった。
大切な雰囲気:03 大切な雰囲気
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
黄塵
(
こうじん
)
万丈の風に乗って、泣くようなその売り声が町の角々から漂ってくるとき、人は「
哈爾賓
(
ハルビン
)
らしさ」の核心に触れる。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
南行三日めの
午
(
ひる
)
、漢軍の後方はるか北の地平線に、雲のごとく
黄塵
(
こうじん
)
の揚がるのが見られた。匈奴騎兵の追撃である。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
▼ もっと見る
われら
薄倖
(
はくこう
)
の詩人は田園においてよりも
黄塵
(
こうじん
)
の都市において更に深く「自然」の恵みに感謝せねばならぬ。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黄塵
(
こうじん
)
白日、子らの
喧噪
(
けんそう
)
、バケツの水もたちまちぬるむ炎熱、そのアパアトに、気の毒なヘロインが、堪えがたい焦躁に、身も世もあらず、もだえ、のたうちまわっているのである。
音に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
空風
(
からかぜ
)
が
巷
(
ちまた
)
の
黄塵
(
こうじん
)
を巻いて走り、残り少なくなった
師走
(
しわす
)
の日と人とを追い廻していた。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
当日は
烈
(
はげ
)
しい
黄塵
(
こうじん
)
だった。黄塵とは
蒙古
(
もうこ
)
の
春風
(
しゅんぷう
)
の
北京
(
ペキン
)
へ運んで来る
砂埃
(
すなほこ
)
りである。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雪は天界の
黄塵
(
こうじん
)
を含んで、地上に落ち、それが飯を黄色に染めてしまうのである。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
この向島も全く昔の
俤
(
おもかげ
)
は失われて、西洋人が讃美し憧憬する広重の
錦絵
(
にしきえ
)
に見る、隅田の美しい流れも、現実には
煤煙
(
ばいえん
)
に汚れたり、自動車の
煽
(
あお
)
る
黄塵
(
こうじん
)
に
塗
(
まみ
)
れ、殊に震災の
蹂躙
(
じゅうりん
)
に全く荒れ果て
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
支那の黄土をまきあげた
黄塵
(
こうじん
)
といふのは、
素
(
もと
)
より濁つて暗くすさまじいもののやうだが、松の花粉の風に流れるのはその黄塵をも想像させるほどで、ただそれが明かるく、透明の感じを持ち
智恵子抄
(新字旧仮名)
/
高村光太郎
(著)
六日後の牢城から江州郊外への刑場の道はたいへんな
雑閙
(
ざっとう
)
だった。聞きつたえた見物人がわんわんと
黄塵
(
こうじん
)
の下に波打っている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それからほんの一瞬間、玄関の先に
佇
(
たたず
)
んでいた。が、
身震
(
みぶる
)
いを一つすると、ちょうど馬の
嘶
(
いなな
)
きに似た、気味の悪い声を残しながら、往来を
罩
(
こ
)
めた
黄塵
(
こうじん
)
の中へまっしぐらに走って行ってしまった。……
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「長野、観心寺、中津原口、
三道
(
さんどう
)
ともにうごいていますし、遠くの東条、石川の空にまで、
黄塵
(
こうじん
)
が立ち舞っているなど、ただごとではありません」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼等は互に
抱
(
だ
)
き合ったなり、じっと長椅子に坐っていた。
北京
(
ペキン
)
を
蔽
(
おお
)
った
黄塵
(
こうじん
)
はいよいよ烈しさを加えるのであろう。今は入り日さえ窓の外に全然光と言う感じのしない、
濁
(
にご
)
った
朱
(
しゅ
)
の色を
漂
(
ただよ
)
わせている。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
口取の右馬介にいわれて、気がつくと、身はいつか、
喧々
(
けんけん
)
たる闘犬の声、見物人のどよめき、耳もと近い太鼓の音など——
黄塵
(
こうじん
)
万丈の中に来ていた。
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
水をうったように、
群集
(
ぐんしゅう
)
のこえと
黄塵
(
こうじん
)
がしずまって、ふたたび、
御岳
(
みたけ
)
の
広前
(
ひろまえ
)
に
森厳
(
しんげん
)
な空気がひっそりと
下
(
お
)
りてきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
振向けば、郭汜の兵馬が、
黄塵
(
こうじん
)
をあげて、狂奔してくる。帝は、あなとばかり声を放ち、皇后は怖れわなないて、帝の膝へしがみついてはや、泣き声をおろおろと洩らし給う。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その黄母衣組の
士
(
さむらい
)
が一騎に、ただの騎馬武者が五名ほど、一頭の裸馬を中に囲って、
黄塵
(
こうじん
)
の中から次々に姿をあらわし、
驀
(
ま
)
っしぐらに、眼のまえをよこぎって
彼方
(
かなた
)
へ駈け去った。
篝火の女
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ところが、さきごろから、
琵琶湖
(
びわこ
)
の附近にも、
戦
(
いくさ
)
の
黄塵
(
こうじん
)
がまきあがった。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お
汝
(
こと
)
は、遠くの
黄塵
(
こうじん
)
を、新手の参加と見たというが、それも違う」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
騒然たる物音と叫喚の後は、一陣の
黄塵
(
こうじん
)
がもうもうと巻きあがって、西へ東へと散って行く群集と共に消え去ったが、更に再び、ここを目がけて鬨の声を作って押し返して来た一団の人影があった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
万丈の
黄塵
(
こうじん
)
と、敵の馬蹄の音は、はや彼方に近づいていた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
利家は坂を駈け降りながらその
黄塵
(
こうじん
)
万丈と硝煙を横に見て
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
花
埃
(
ぼこ
)
りだ。ひどい
黄塵
(
こうじん
)
だ。しかし花見の喧騒ではない。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ゆくてに、再び、
黄塵
(
こうじん
)
が望まれた。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それともうもうたる
黄塵
(
こうじん
)
の
万丈
(
ばんじょう
)
。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“黄塵”の意味
《名詞》
黄色い砂塵。
俗塵。
(出典:Wiktionary)
黄
常用漢字
小2
部首:⿈
11画
塵
漢検準1級
部首:⼟
14画
“黄”で始まる語句
黄昏
黄金
黄
黄色
黄金色
黄楊
黄泉
黄葉
黄昏時
黄八丈