鬱蒼うつさう)” の例文
杉とひのき鬱蒼うつさうとしてしげつて、真昼でも木下闇こしたやみを作つてゐるらしいところに行き、さくのところで小用こようを足した。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かたへに一ぽんえのきゆ、年經としふ大樹たいじゆ鬱蒼うつさう繁茂しげりて、ひるふくろふたすけてからすねぐらさず、夜陰やいんひとしづまりて一陣いちぢんかぜえだはらへば、愁然しうぜんたるこゑありておうおうとうめくがごとし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いよ/\利根の水源すゐげん沿ふてさかのぼる、かへりみれば両岸は懸崖絶壁けんがいぜつぺき、加ふるに樹木じゆもく鬱蒼うつさうたり、たとひからふじて之をぐるを得るもみだりに時日をついやすのおそれあり、故にたとひ寒冷かんれいあしこふらすとも
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
莊園のやしきの極く眞近かに迫つてさへそれを見ることが出來ない、それ程に深く鬱蒼うつさうと陰鬱な森が、周りに生ひ茂つてゐるのであつた。花崗岩みかげいしの門柱の間の鐵の門が入口を示した。
白河の関址と申すところは、一の広袤くわうぼうある丘陵を成し、樹木鬱蒼うつさうとして、古来斧斤ふきんを入れざるものあり、巨大なる山桜のさるをがせを垂れたるもの、花の頃ぞさこそと思はれ申候。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
假令たとひどんなもの彼等かれらあひだへだてようとしても彼等かれらあひちかづく機會きくわい見出みいだしたことは鬱蒼うつさうとしてさへぎつて密樹みつじゆこずゑとほしてどこからか地上ちじやうひかりげてるやうなものであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そなたの鬱蒼うつさうたる枝葉えだは
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と、すぱ/\とけむりかす。ちか煙草たばこ遠霞とほがすみで、天守てんしゆつゝんだ鬱蒼うつさうたる樹立こだちかげいてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)