驚嘆きょうたん)” の例文
もうわたしもおとぎ話にあるわかいはつかねずみのように、見るもの聞くものが驚嘆きょうたん恐怖きょうふたねになるというようなことはなかった。
よもや、新参しんざん民蔵たみぞうが、その人の一民部みんぶであろうとは、ゆめにも知らない梅雪入道ばいせつにゅうどう、おもわず驚嘆きょうたんの声をもらしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「茨城県磯崎に『ウルフ』の巣を見付け出したのは、何といっても驚嘆きょうたんすべきお手柄だ」草津大尉は、前方を注視しながら、独言ひとりごとのように云った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
マードック先生のわれら日本人に対する態度はあたかも動物学者が突然青く変化した虫に対すると同様の驚嘆きょうたんである。
保吉はいつか粟野さんの Asino ——ではなかったかも知れない、が、とにかくそんな名前の伊太利イタリイ語の本を読んでいるのに少からず驚嘆きょうたんした。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくし今更いまさらながら生死せいしさかいえて、すこしもかわっていない良人おっと姿すがた驚嘆きょうたん見張みはらずにはいられませんでした。
それはそうと私は世間の人間には全く驚嘆きょうたんのほかはない。みんな一人の例外もなく生活しているのだ。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
こうなると大衆はだんだんだまってしまって、ただただ驚嘆きょうたんの眼をみはるのです。にっこりと笑った三要は払子ほっすを打って法戦終結を告げ、勝負は強いて言わずに、次の言葉を発しました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
農民四、五(驚嘆きょうたんす)この人ぁ医者ばかりだなぃ。八卦はっけも置ぐようだじゃ。
植物医師:郷土喜劇 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
公平無私な官吏かんり苛斂誅求かれんちゅうきゅうを事とせぬ政治家の皆無かいむだった当時のこととて、孔子の公正な方針と周到な計画とはごく短い期間に驚異的きょういてきな治績を挙げた。すっかり驚嘆きょうたんした主君の定公が問うた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それは、あくまでも私の生活を通して見た大作曲家で、私の抱懐ほうかいする尊崇と、愛着と、驚嘆きょうたんと、そして時には少しばかりの批判とを、なんのおおうところもなく、思うがままに書き連ねたものである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
その花容かよう花色かしょくすこぶる多様で、紅色、紫色、白色はくしょく、黄色などのものがあり、また一重咲ひとえざき、八重咲やえざきもあって、その満開まんかいを望むと吾人ごじんはいつも、その花の偉容いよう、その花の華麗かれい驚嘆きょうたんを禁じ得ない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
三人は芝生に立って、驚嘆きょうたんの眼をみはって斯おびただしい雨雲の活動を見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし、こうなるとかれもまた、意地いじでも見物けんぶつをあッと驚嘆きょうたんさせてやらなければしゃくである。第一、この水独楽みずごまがまわらないというわけはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ケンが恐竜島の探検談を一席やる、僕がつづいて島の生活について語る。そして映画についての説明をする。人々はただ驚嘆きょうたんのうちに僕らの行動をたたえるだろう。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
煙客翁えんかくおうはそのを一目見ると、思わず驚嘆きょうたんの声を洩らしました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
マチアは驚嘆きょうたんしていた。
言う者も聞く者も、ともに不思議な出来事に、驚嘆きょうたんの連発であったが、これこそ不連続線のなせる悪戯いたずらであったとは、後に「火の玉」少尉が元気を回復してからの種明たねあかしであった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それが、いかにおどろくべきことであったかは、すぐ聞いている竹童の目の玉にあらわれて、あるいは驚嘆きょうたん、あるいは壮感そうかん、あるいは危惧きぐの色となり、せわしなく、ひとみをクルクル廻転させた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今更ながら、博士の学問の深くつ大きいことについては驚嘆きょうたんほかありません。どうかわが国を救っていただきたい。九十九き、ただ残る一路は金博士に依存する次第である。
いやもう実に迅速じんそくも迅速、われら凡人どもには、一代でも到底成しあたうまいと思われることを、ここわずかな年月としつきによくもやり通して来られたものと、われら家臣どもも驚嘆きょうたんしているほどなのだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
卓子テーブルに並べられた大皿を見て、博士はまず驚嘆きょうたんの声を放った。そうでもあろう。
生れたてのあかぼうのように、彼のひとみは驚嘆きょうたんして、この世の美に打たれている。知らず識らずまなじりから涙がながれて止まらない。涙は耳の穴をもこそぐった。この知覚ちかくさえ生きている証拠しょうこではないか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからのちの、アンの働きぶりは、驚嘆きょうたんあたいするものがあった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
髯男は、むずい数学解法を発見でもしたかのように、驚嘆きょうたんした。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)