飛付とびつ)” の例文
飛付とびつくように此方こっちからドアを開けると、先の日と同じく古雅こがな青磁色の洋装で、幽里子はニッコリ立っているではありませんか。
此うなツては、幾らえらい藝術家も、やなぎ飛付とびつかうとするかはづにもおとる………幾ら飛付かうとして躍起やツきになツたからと謂ツて取付くことが出來ない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
『それこの拳骨げんこつでもくらへ。』と大膽だいたんにも鐵拳てつけん車外しやぐわい突出つきだし、猛獸まうじういかつて飛付とびついて途端とたんヒヨイとその引込ひきこまして
織次は飛んで獅子の座へなおったいきおい。上から新撰に飛付とびつく、とつんのめったようになって見た。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おそれあたりて、わがにくあらたなるべし。」みんなあとから、かみあかい、血色けつしよく一人ひとりとほる。こいつにけていたのだから、きふ飛付とびついてやつた。この気味きみわるで、そのくちおさへた。
『それツ。』と一聲いつせい吾等われら周章狼狽あわてふためい鐵檻てつおりくるまなか逃込にげこんだが、危機一髮きゝいつぱつ最後さいご逃込にげこんだ武村兵曹たけむらへいそうはまだその半身はんしん車外しやぐわいにあるのに、ほとんど同時どうじ飛付とびついて雄獅子をじゝのために
宗三郎は矢庭に女に飛付とびつくと、庭石からひきおろすように、自分の胸にひしと抱きしめました。無抵抗に宗三郎の腕に倒れた女は、宗三郎の近づく顔の前に、始めてその右半面を見せたのです。
猟色の果 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とら比較的ひかくてきおろか動物どうぶつで、憤然ふんぜんをどらして、鐵車てつしや前方ぜんぽうから飛付とびついたからたまらない、おそ旋廻圓鋸機せんくわいえんきよきのために、四肢しゝや、腹部ふくぶ引裂ひきさかれて、苦鳴くめいをあげて打斃うちたをれた。もつと狡猾こうくわつなるは猛狒ゴリラである。