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重
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え
ふりがな文庫
“
重
(
え
)” の例文
西洋の女のように気を失うことはなかったが、でも、失神と紙
一
(
ひ
)
と
重
(
え
)
の状態にあった。克彦はもう目をつぶるより仕方がなかった。
月と手袋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
四十年前の日も、つい昨日の日も、ここでは同じに明け、同じに暮れていたのだろう。津村は「昔」と壁ひと
重
(
え
)
の隣りへ来た気がした。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
紙ひと
重
(
え
)
の違いだが、
因縁
(
いんねん
)
のつけようじゃ浮気をしたも同然なんだからね。そこを一本、おどしたら、あの女、物になるかも知れんです。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
業
(
ごう
)
を煮やした
貴縉
(
きけん
)
紳士ならびに夫人令嬢は、それぞれ車から降り立って、二人の車を十
重
(
え
)
二十重に取り囲み、口々にがやがやと抗議を申し込む。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
壁
(
かべ
)
一
重
(
え
)
隣
(
となり
)
の
左官夫婦
(
さかんふうふ
)
が、
朝飯
(
あさめし
)
の
膳
(
ぜん
)
をはさんで、
聞
(
きこ
)
えよがしのいやがらせも、
春重
(
はるしげ
)
の
耳
(
みみ
)
へは、
秋
(
あき
)
の
蝿
(
はえ
)
の
羽
(
は
)
ばたき
程
(
ほど
)
にも
這入
(
はい
)
らなかったのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
小供が泣くときに
最中
(
もなか
)
の一つもあてがえばすぐ笑うと一般である。主人が
昔
(
むか
)
し去る所の御寺に下宿していた時、
襖
(
ふすま
)
一
(
ひ
)
と
重
(
え
)
を隔てて尼が五六人いた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
腰は二
重
(
え
)
に崩れ、
咳
(
せ
)
いたり痰を吐いたり、水
洟
(
ばな
)
をすすり上げたり、
涎
(
よだれ
)
を流したり老醜とはこのことかむしろ興冷めてしまったが、何れにしても怪しい。
猿飛佐助
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
が、初て極楽に来た時のように、七
重
(
え
)
の宝樹を見ても、余り有難いとも思えなかった。伽陵頻迦の鳴いて居るのを聞いても、余り微妙だとも思えなくなった。
極楽
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
が歴史的には、ここの地形と京都の人煙との間には、いつも
一
(
ひ
)
ト
重
(
え
)
の
山霞
(
やまがすみ
)
を引いて、世に不満な人間どもが反骨を養うには恰好な地の利であった所にはちがいない。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
邇邇芸命
(
ににぎのみこと
)
はそれらの神々をはじめ、おおぜいのお供の神をひきつれて、いよいよ大空のお住まいをおたちになり、いく
重
(
え
)
ともなくはるばるとわき重なっている、深い雲の
峰
(
みね
)
をどんどんおし分けて
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
ピッタリ一
重
(
え
)
にくっついた——の中へ足を通した。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
というと
覆面
(
ふくめん
)
のむれ、ガチャガチャと一
挺
(
ちょう
)
の
鎖駕籠
(
くさりかご
)
を
舁
(
か
)
きこんできて、七
重
(
え
)
八
重
(
え
)
にしばりあげた
貴人
(
きじん
)
の僧をそのなかに
押
(
お
)
しこみ、それッとかつぎあげるや
否
(
いな
)
、まッ黒にもんで
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東京あたりの家のように、外側にもう
一
(
ひ
)
と
重
(
え
)
ガラス戸があればよいけれども、そうでなかったら、紙が汚れて暗かったり、穴から風が吹き込んだりしては、捨てて置けない訳である。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
はねに
近
(
ちか
)
くなったって、お
客
(
きゃく
)
は
唯
(
ただ
)
の
一人
(
ひとり
)
だって、
立
(
た
)
とうなんて
料簡
(
りょうけん
)
の
者
(
もの
)
ァねえやな。
舞台
(
ぶたい
)
ははずむ、お
客
(
きゃく
)
はそろって一
寸
(
すん
)
でも
先
(
さき
)
へ
首
(
くび
)
を
出
(
だ
)
そうとする。いわば
紙
(
かみ
)
一
重
(
え
)
の
隙
(
すき
)
もねえッてとこだった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
しかし、なん度もなん度も膝を浮かして、襖に手をかけようとしたが、その紙ひと
重
(
え
)
の襖が、今はもう遠く及びがたい城壁のように、ぴったりと間を仕切って、たやすく開けることが出来なかった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
その顔は死相と
紙一
(
ひ
)
ト
重
(
え
)
の白さだ。生き物の必死がしめす或る
凄気
(
せいき
)
さえおびている。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを世上一般では
甲館
(
こうかん
)
と称したり、お
館
(
やかた
)
とよんだり、また躑躅ヶ崎城ともいっているが、決して城造りではなく、平凡平坦な土地に、
水濠
(
みずぼり
)
ひと
重
(
え
)
廻
(
めぐ
)
らした大きな邸宅にすぎないのである。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
重
常用漢字
小3
部首:⾥
9画
“重”を含む語句
重々
二重
重量
三重
重宝
重大
一重
九重
起重機
二重瞼
貴重
重箱
重傷
尊重
重代
推重
鄭重
幾重
羽二重
厳重
...