車座くるまざ)” の例文
そこで彼らは次の日、近くの大満寺山へのぼって、なんの気がねもない青天井の下で、天狗の集会のような車座くるまざをかこんでいた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
得たれば久々ひさ/″\にて一ぱいのまふと或料理屋あるれうりや立入たちいり九郎兵衞惣内夫婦三人車座くるまざになりさしおさへ數刻すうこく酌交くみかはせしがやゝ戌刻過いつゝすぎやうやく此家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また一ツは米国水兵数多あまた車座くるまざになりて日本料理のぜんに向ひ大きなる料理のたいを見て驚き騒げる様を描きしものあるを記憶す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は赤いかがり火影ほかげに、古代の服装をした日本人たちが、互いに酒を酌みかわしながら、車座くるまざをつくっているのを見た。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十畳位の広さの部屋に、十四五人の男達が車座くるまざをつくり、おのおの客膳きゃくぜんを前にして酒を飲んでいたのである。
風宴 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
むしろが持ち出された。四人は車座くるまざになった。一人は気軽く若い者の机の上から湯呑茶碗を持って来た。もう一人の男の腹がけの中からは骰子さいが二つ取出された。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
……学校の制服を脱ぎ捨てると、車座くるまざになった潮くさい基督エスどもの盃に威勢よくウイスキーを注いで廻る。
キャラコさん:05 鴎 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
恐らく母はもうこらえきれなかったのだろう。いきなりその家の縁側えんがわから障子しょうじをあけて座敷に上った。明るいランプの下に、四、五人の男が車座くるまざに座って花札はなふだをひいていた。
そしてその咲く時は葉がなく、ただ花茎かけいが高く直立していて、その末端まったんに四、五車座くるまざのようになって咲き、反巻はんかんせる花蓋片かがいへんは六数、雄蕊ゆうずいも六数、雌蕊しずい花柱かちゅうが一本、花下かかにある。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
七人ばかりの村の者は、たいらかな岩の上に車座くるまざに坐って弁当を使いはじめた。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
医者いしゃ玄庵げんあんをはじめ、つまのおむら、座元ざもと羽左衛門うざえもん、三五ろうひころう、その人達ひとたちが、ぐるりと枕許まくらもと車座くるまざになって、なにかひそひそとかたっているこえが、とおくに出来事できごとのようにきこえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
八十に近い祖母と、六ツ位の女の子と、松さんとは親密に車座くるまざになった。祖母のおぜんには大きな香魚あゆの塩焼がおどっている。松さんは心おきなく何か一生懸命に話したり願ったり、食べたりしている。
あとは、車座くるまざになって一同が、不安げな顔を見合わせて
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家臣の掃守かもりなどが車座くるまざになって酒を酌みかわしている。
奴等車座くるまざ
かきて貸元かしもとをなし願山坊主ばうずは向鉢卷にて壺を振宵より大勢おほぜい車座くるまざ居並ゐならび互に勝負しようぶ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこでゾロリと車座くるまざになった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)