身上みのうえ)” の例文
ようや身上みのうえの相談をして、お照は宅へ帰って、得心の上武田重二郎を養子にした処が、お照は振って/\振りぬいて同衾ひとつねをしません。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お酒が少しばかりまわりますと、親切に色々とあたし身上みのうえをお尋ねになりましたので、何もかも真個ほんとの事をスッカリ話しました。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『そなたも、三ツ四ツのころには、中御門家なかみかどけで養われていたことがあるのですよ。——ちょうど、いまの姫の身上みのうえみたいに』
すずしい風の来るところを択んで、お福は昼寝の夢をむさぼっていた。南向の部屋の柱に倚凭よりかかりながら、三吉はお雪から身上みのうえの話を聴取ろうと思った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある時係官がお杉と重太郎との身上みのうえついて彼に語り聞かせて、お前をきずつけた当の相手はおそらく行方不明の重太郎であろうと告げるや、彼はにわかに色を変えて
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
先方の申すには然らば小生に頼む時いつそ事情を打明けて小生の身上みのうえ動きがたき場合には直ちに小生より貴兄へこの事件交渉してもらひたしとの事に御座候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
わたくしにはそれがなによりつらく、今更いまさらなん取得とりえもなき、むかし身上みのうえなどをつゆほども物語ものがたりたくはございませぬ。
「先生、僕ちょっと家へ帰って来たいと思うのですが、妹の身上みのうえがどうも心配で」
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
さて私は死に臨んでお前の身上みのうえにかかっているある秘密の片鱗を示そう。お前の実父は飯田の家中南条右近とはなっているが、しかし誠はそうではない。お前の実の両親は全然別にある筈だ。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
岩淵いわぶち渡場わたしば手前に、姉のせがれが、女房持で水呑百姓をいたしておりまして、しがない身上みのうえではありまするけれど、気立のい深切ものでございますから、私もあてにはしないで心頼りと思うております。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和尚も巡礼の身上みのうえで聊かでも銭を出して、仏の回向えこうをして呉れと云うのは感心な志と思いましたから、ねんごろに仏様へ回向を致します。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あなたの現在げんざいのお身上みのうえもおさっいたしますが、すこしはわたくしうえさっしてくださいませ。わたくしひとつのきたしかばね、ただ一人ひとり可愛かわい子供こどもがあるばかりに、やっとこのきていられるのです。
海山にもかへがたき御恩をあだにいたしそうろう罪科つみとが、来世のほどもおそろしく存じまゐらせ候……とあってお園の方の手紙にはただ二世にせ三世さんぜまでも契りし御方おかたのお身上みのうえに思いがけない不幸の起りしため
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
変遷のいちじるしからざる山間さんかんの古いしゅくではあるが、昔に比ぶれば家も変った、人も変った、自分も老いた。誰に逢っても昔の身上みのうえを知られる気配きづかいもあるまいと多寡たかくくって、彼は平気で町中まちなかを歩いた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此奴こいつらはわが身上みのうえを知って居る上からは助けて置いては二人の難儀と思い、永禪和尚と声を掛けられるや否や持って居た刀で庄吉の肩へ深く切付ける、庄吉はきゃアと云って倒れる。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
井生森又作という三十五歳に相成あいなりましてもいまだ身上みのうえさだまらず、怪しいなり柳川紬やながわつむぎあわせ一枚で下にはシャツを着て居りますが、羽織も黒といえばていいけれども、紋の所が黒くなって
あなたはしからぬお方で、御出家のお身上みのうえで……御幼年の時分から御修業なすって、何年の間行脚をなすって、わしは斯う云う修業をした、仏法は有難いものじゃ、斯ういうものじゃによって
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何者が左様な事を申したか、実に貴方へお目にかゝるのは面目次第もない心得違い、此処こゝへ逃げてまいりまして、当家の世話になって居ります程の身上みのうえの宜しくない拙者ゆえ、何と仰せられても
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
年は二十七位だが、うしても廿三四位としか見えないというすこぶ代物しろものを見るよりも、伴藏は心を動かし、二階を下りて此のの亭主に其の女の身上みのうえを聞けば、さる頃夫婦の旅人りょじんが此の家へ泊りしが