つまび)” の例文
それらの事情はつまびらかにしないが、弱冠にして老坪内博士の事業に拮抗する壮挙を実現し、左團次を筆頭に、猿之助、松蔦しょうちょう、寿美蔵
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
詳細の事は個々の憲法につきその条項をつまびらかに研究し、またその制定の来歴をも明らかにして、初めてこれを知るべき問題である。
今日の我国民が思想上に於ける地位をつまびらかにせんとせば、少なくとも右の三勢力に訴へ、而して後明らかに、其関係を察せざる可からず。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
其方そのほうは一種の眼光をそなえた人物であるから、さだめて異国へ渡ってから、何か眼をつけたことがあるだろう、それをつまびらかに申し述べよ』
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ただにこれと争わざるのみならず、たまたまかの事情を知るべき機会を得たる人にても、いまだこれをつまびらかにせずしてまずこれを恐るるのみ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
イエスの生涯は四福音書につまびらかである。釈迦の伝記に至っては、小乗の経律を初めとして大乗の諸経典に至るまでその多きに苦しまざるを得ぬ。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
外に広きものこれを複雑とい、内につまびらかなるものこれを精細と謂う。精細の妙は印象を明瞭めいりょうならしむるにあり。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
また汝の兄弟は、白衣しろきころものことを述べしところにて、さらにつまびらかにこの默示をわれらにあらはす。 九四—九六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さて、自分は此處で、かの歌の如何にして作られ、如何にして傳唱されたかを、つまびらかに説明した。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
古来東洋では孝は百行ひゃっこうの本なりというが、これはあえて誤れりとはせぬけれども、なお説いてつまびらかならざるものがある。何となれば、孝とは子の親に対する道である。
現代の婦人に告ぐ (新字新仮名) / 大隈重信(著)
坂上主膳さかがみしゅぜんという武士のために、楯岡たておかの藩祖の菩提寺ぼだいじのすこししも手町の辻で斬られたのであった。原因は意趣いしゅ、そのつまびらかな事実は、おまえがもっと大人になれば自然分ってくる。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その子成人ののち、命なりけり小夜の中山とつねに口ずさみ、諸国をめぐつてついに池田の宿にてかの盗賊のかたきにであひ、親のかたきをやす/\と討ちしとぞ。そのしょうつまびらかならず
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
この旅稼ぎの万歳法師らとの関係はいまだこれをつまびらかにせぬが、常時その配下に属して各地に転戦した勇士の中には、この箸尾万歳の徒の祖先も必ず参加していたに相違ない。
俗法師考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
すかし屁のり元同然日本における屁の故事をつまびらかにせねど、天正十三年千葉新介が小姓に弑せられたは屁を咎めしに由り、風来ふうらいの書いた物に遊女が放屁を恥じて自殺せんとするを
それ以来逢わぬからまだこの人のレビュー観をつまびらかにすることが出来ない。
物語れり證據しようこの品もたしかなれば我々も隨從ずゐじうして將軍の御落胤らくいんなりと名乘出ん所存なり萬々ばん/\首尾しゆびよく仕課しおほせなば寶澤の吉兵衞には西のまる乘込のりこむか左なくとも三家の順格位じゆんかくぐらゐは手の内なれば此度このたび同道仕つりしとつまびらかに物語れば天忠は始終しじう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いったい此の時代の男子の平均の身長が何程であったかをつまびらかにしないが、思うに戦国のむかしに於いても
蕪村の熱情を現わしたるものもこれのみ。春風馬堤曲とは支那の曲名を真似たるものにて、そのかく名づけしゆえんは蕪村の書簡につまびらかなり。書簡に曰く
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
とみにこれを彼に取りてこれに移すべからず、いわんやその利害のいまだつまびらかならざるものにおいてをや。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
さて、自分は此処で、かの歌の如何にして作られ、如何にして伝唱されたかを、つまびらかに説明した。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
竜之助は、もっとつまびらかにそのことを聞いてみたいがと思っていると、階下したから数多くの人の足音。
それを見謬って蛇が蛸にるといったらしい。キュヴィエーいわく、欧州東南の海に蛸類多き故に、古ギリシア人蛸を観察せる事すこぶるつまびらかで、今日といえども西欧学者の知らぬ事ども多しと。
上御意の如く誠に天命てんめい遁難のがれがたきものにして島が死骸取隱し方淺果あさはかなりとのおほせ此平左衞門に取何程かはづかしきことに御座候これに付ては種々申上度儀御座候へども其事つまびらかに申上るときは主人の惡事に御座候尤も斯成行し上は是非ぜひに及ばず罪は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かの士君子が世間の栄誉を求めざるは大いに称すべきに似たれども、そのこれを求むると求めざるとを決するの前に、まず栄誉の性質をつまびらかにせざるべからず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と思ふと、両親の顔や弟共の声、馬の事、友達の事、草刈の事、水汲の事、生れ故郷がつまびらかに思出されて、お定はじつと涙の目を押瞑おしつぶつた儘、『阿母あツばあ、許してけろ。』と胸の中で繰返した。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ああわが祖は天神あまつかみ母は海神なるにいかで我を陸にも海にも厄するかと言いおわって剣を抜きて海に入り鋤持神さひもちのかみとなるとある、この鋤の字を佐比とむ事『古事記伝』ではつまびらかならず、予種々考えあり
事実の有無にかかわらず外面の美風だけはこれを維持してなお未だ破壊に至らずといえども、不幸なるは我が日本国の旧習俗にして、事の起源は今日、得てつまびらかにするによしなしといえども
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
外国人が我が日本国の事情をつまびらかにせんとするは、容易なることにあらざるが故に、彼らをして我が真面目しんめんもくを知らしめんとするには、事の細大に論なく、仮令たとえ無用に属する外見の虚飾にても
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)