腹立はらだた)” の例文
『そんなものはくッてよ!』とあいちやんはすこぶ腹立はらだたしげにひました、帽子屋ばうしやと三月兎ぐわつうさぎとは、『ッ!ッ!』とつゞけさまにさけびました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
さむれば昨宵ゆうべ明放あけはなした窓をかすめて飛ぶからす、憎や彼奴あれめが鳴いたのかと腹立はらだたしさに振向く途端、彫像のお辰夢中の人にははるか劣りて身をおおう数々の花うるさく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
親とは言ながら奥様の手前もあり、私は面目ないと腹立はらだたしいとでしかるように言いました。もう奥様は其処へいらしって、燈火あかりに御顔を外向そむけて立っておいでなさるのです。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
三沢の便たよりははたして次の日の午後になっても来なかった。気の短い自分にはこんなズボラを待ってやるのが腹立はらだたしく感ぜられた、いてもこれから一人で立とうと決心した。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私等わたしら二人ふたりうちいずれが瘋癲者ふうてんしゃだろうか。』と、ドクトルは腹立はらだたしくなっておもうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
山𤢖同様の分際で、深川生れのお葉さんに惚れるとは、途方もない贅沢な奴だと、今の今までは馬鹿馬鹿しくもあり、腹立はらだたしくもあったが、うなって見ると自分にも罪が無いでもない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
った人を葬むるのに、そんな無作法なことってないと腹立はらだたしかった。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さるにてもなほものありげにわが顔をみつつくが、ひややかにあざけるが如くにくさげなるぞ腹立はらだたしき。おもしろからぬ町ぞとばかり、足はわれ知らず向直むきなおりて、とぼとぼとまた山あるかたにあるきいだしぬ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『二ちがつてる!と帽子屋ばうしや長太息ためいききました。『牛酪バターやくたないとおまへふていたぢやないか!』とひたして、腹立はらだたしげに三月兎ぐわつうさぎはうました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
愈々いよいよ影法師の仕業に定まったるか、エヽ腹立はらだたし、我最早もはやすっきりと思い断ちて煩悩ぼんのう愛執あいしゅう一切すつべしと、胸には決定けつじょうしながら、なお一分いちぶんの未練残りて可愛かわゆければこそにらみつむる彫像、此時このとき雲収り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さるにてもなおものありげにわが顔をみつつくが、ひややかにあざけるがごとく憎さげなるぞ腹立はらだたしき。おもしろからぬ町ぞとばかり、足はわれ知らず向直りて、とぼとぼとまた山あるかたにあるきいだしぬ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
證據しようこやある』と王樣わうさま腹立はらだたしげに繰返くりかへされました、『いなら死刑しけいだ、るかいかはやまをせ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
思えば苦しい仔細しさいがあってと察しては御前の心も大方は見えていじらしく、エヽ腹立はらだたしい三世相さんぜそう、何の因果をたれが作って、花に蜘蛛くもの巣お前に七蔵しちぞうの縁じゃやらと、天燈様てんとうさままで憎うてならぬこの珠運しゅうん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)