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紙燭
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ししょく
ふりがな文庫
“
紙燭
(
ししょく
)” の例文
戦いを予感して、寺内ふかく
潜
(
ひそ
)
んでいた僧は、やがて
紙燭
(
ししょく
)
を持って出て来た。そして山門をあけるや否、どこかへ隠れてしまった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と幸三郎は
沈着
(
おちつ
)
いた人ゆえ
悠々
(
ゆう/\
)
と玄関の処へ来ますとステッキがあります。これを
提
(
さ
)
げ、片手に
紙燭
(
ししょく
)
を
点
(
とも
)
したのを持って
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
昼だというのに部屋の隅に、幾本か
紙燭
(
ししょく
)
が
燈
(
とも
)
されている。話声を戸外へ洩らすまいと、雨戸を閉ざしているからである。壁には影法師が映っている。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
差し出した
紙燭
(
ししょく
)
の光りでちらりとその二人を見眺めた対馬守の声は、おどろきと意外に
躍
(
おど
)
って飛んだ。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
風はそよ吹きてすでに死せるがごとく横たわる浪子の
鬢髪
(
びんぱつ
)
をそよがし、医はしきりに患者の
面
(
おもて
)
をうかがいつつ脈をとれば、こなたに立てる看護婦が手中の
紙燭
(
ししょく
)
はたはたとゆらめいたり。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
紙燭
(
ししょく
)
をさし出して慾心の
黒闇
(
くらやみ
)
を破ったところは親父だけあったのである。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
とうとう江戸町家の二階で
紙燭
(
ししょく
)
、油火、
蝋燭
(
ろうそく
)
を禁じたのです。
銭形平次捕物控:047 どんど焼き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
家の内にも明りが
映
(
さ
)
しているが武蔵の眼に見えたのは、その家の軒先に、誰か、
紙燭
(
ししょく
)
を持って立ってでもいるらしい
燈
(
ひ
)
であった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鉄砲、刀、槍、弓矢、……
紙燭
(
ししょく
)
の光に照らされて、その一所はキラキラと輝き、一所は
陰影
(
かげ
)
をつけている。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これが馬鹿のお母さんなら
直
(
すぐ
)
に起き上って
紙燭
(
ししょく
)
でも
点
(
とも
)
し、から/\方々を開け散かして、「此の
娘
(
こ
)
は何うしたんだよ」なんて呶鳴って騒ぐんだが、
沈着
(
おちつ
)
いた方だから
其様
(
そん
)
な
蓮葉
(
はすは
)
な真似はしない
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
が、
紙燭
(
ししょく
)
をかざして、中坪の濡れ縁を通りかけた人影は、なにか不審なと、すぐ
異
(
い
)
を感じていたらしく、ふと、たたずんだまま外を見ていた。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
暗い土間から見えるものは、古びた板戸としみのある古襖と、鼡の走っている
破損
(
こわ
)
れた床と、それらをぼんやり照らしている、今にも消えそうな
紙燭
(
ししょく
)
とであった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お坊主が、
網雪洞
(
あみぼんぼり
)
を
灯
(
つ
)
ける、
紙燭
(
ししょく
)
を広間へくばる。——だが、それすら今日に限って、なんとなく薄暗い気がしてならない。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紙燭
(
ししょく
)
が明るく
燈
(
とも
)
っている。その光に照らされて、そういう色々の商売道具が、あるいは光りあるいは煙り、あるいは
暈
(
ぼ
)
かされている様が、凄味にも見えれば
剽軽
(
ひょうきん
)
にも見える。
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一瞬は、さすがびくとしたが、彼女の白い手の
紙燭
(
ししょく
)
は
慄
(
ふる
)
えもしていない。むしろ、きつ過ぎるほどな
眼
(
まな
)
ざしでさえあった。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
政子の印象もよかったし、駒を馴らしてみると、案外な
逸足
(
いっそく
)
なので、頼朝は厩の物音を聞くと
夜半
(
よなか
)
でも、
紙燭
(
ししょく
)
をかかげて
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると、
紙燭
(
ししょく
)
を持って、舎弟の万太郎が書院の
床壁
(
とこかべ
)
を茫然と眺めている。まったく、
胆
(
きも
)
を奪われたていで、義通がうしろへ来たことにも気がつかない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
門辺
(
かどべ
)
にかがりを
焚
(
た
)
いている家もあるし、
紙燭
(
ししょく
)
を持ってわざわざやがて通るであろう聟どのの到着を、婚家と共に、待ち久しげに
佇
(
たたず
)
んでいる人々もある。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「盗賊ならなお心配はいりません。欲しい物を持って行かせればいいのです。お母あさん、
紙燭
(
ししょく
)
をともしてください。そして私の手に持たせてください」
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ななめに、
紙燭
(
ししょく
)
の黄色い明かりがながれた。その明かりに、
泛
(
う
)
いた
僧形
(
そうぎょう
)
のかげを見ると、顔をだした
公卿侍
(
くげざむらい
)
は
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼が曳き込む駒のひづめが
戛々
(
かつかつ
)
と邸内へひびくと、待ちもうけていたらしく、
紙燭
(
ししょく
)
を手にした侍たちが
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
階下の
厠
(
かわや
)
へ降りてゆく。——と、すぐ
詰
(
つめ
)
の
間
(
ま
)
の者が
紙燭
(
ししょく
)
を掲げて板縁にひざまずいた。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、強い声を響かせて、
紙燭
(
ししょく
)
を持った一僧が、内陣柱の蔭からこなたへ歩いて来た。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
利三は
紙燭
(
ししょく
)
を持って先に立つ。
幾巡
(
いくめぐ
)
りする廻廊の長い間行き合う人もない。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
村井春長軒
父子
(
おやこ
)
は、その側に、
紙燭
(
ししょく
)
を持って
佇
(
たたず
)
んだ。もとより何の予感があったわけではないが、父子が今生の永別を一瞬惜しみあうために、その紙燭はしばし夜風に燃えているようだった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、
厠
(
かわや
)
へ立った。そして
紙燭
(
ししょく
)
を借り、用をすますと、ふと夜風恋しく、べつな廊下を曲がって行った。そしてなおまた、廊づたいに暗い一室の前まで来て、何かにごつんと
躓
(
つまず
)
いたものだった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
侍女、老臣、若侍など六、七人の影が、
紙燭
(
ししょく
)
のゆらぎを
袂
(
たもと
)
で
庇
(
かば
)
いながら
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とたんに、
紙燭
(
ししょく
)
が仆れて、暗黒の中に、白い糸のような、煙が曳いた。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ただ、まことの師をたずねて、まことの道を探して歩く。——それが生涯果てのない道であっても……」二人の若い
弥陀
(
みだ
)
の弟子たちは、じっと、そばにある
紙燭
(
ししょく
)
の消えかかる灯を見つめていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何事かと、あわただしく駈けこんでみると、
京普請
(
きょうぶしん
)
の小間どりな奥の一室、そこに、当夜の兇行を物語るすべてのものが、八弥と耀蔵のかざす
紙燭
(
ししょく
)
のもとにまざまざと照らし出されているのだった。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かすかな
紙燭
(
ししょく
)
をともして、身まわりの品をまとめた幾ツもの
行李
(
こうり
)
を、侍に渡しては、そっと、馬の背に積むやら、数正の妻を始め、
息女
(
むすめ
)
や、
侍女
(
こしもと
)
たちが、各〻、身がるな旅支度を急ぎおうていたり
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紙燭
(
ししょく
)
を、そばにおいて、誰やら自分を抱きかかえているのであった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
油で拭き磨いたような太柱や板縁を、
紙燭
(
ししょく
)
の光がてらてらと揺れうごいて来る。お目ざめ——と
覚
(
さと
)
って、
厨
(
くりや
)
のわきのお
手水
(
ちょうず
)
の
間
(
ま
)
へ足を急がせて来る小姓の森
坊丸
(
ぼうまる
)
、魚住勝七、
祖父江孫丸
(
そふえまごまる
)
などであった。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紙燭
(
ししょく
)
を持って、息子は、宵の湯殿の入口に、うずくまっていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紙燭
(
ししょく
)
を持って、何気なく、お杉は奥から出てきた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かがみ腰に信濃が持っている
紙燭
(
ししょく
)
であった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
僧が二人、左右から、
紙燭
(
ししょく
)
を捧げる。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“紙燭”の意味
《名詞》
宮中において夜間の行事で使用した松の枝などでできた照明具。
紙などのこよりを灯油に浸して火を灯す照明具。
(出典:Wiktionary)
紙
常用漢字
小2
部首:⽷
10画
燭
漢検準1級
部首:⽕
17画
“紙”で始まる語句
紙片
紙
紙幣
紙鳶
紙屑
紙入
紙袋
紙縒
紙捻
紙芝居