しら)” の例文
米を大量にしらげるための杵であって、後に餅搗きにこれを転用したことは、今でも餅臼もちうすが是と不釣合ふつりあいに小さいのを見てもわかる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
戴きましょうだが、毎月その扶持米をしらげてもらいたい。モ一つついでにその米をめしか粥にたいて貰いたい。イヤ毎月と云わずに毎日もらいたい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
越えてはなりません、飯はこのまえにも固く申した筈だが、しらげた米はお命をちぢめるばかりですから、麦七に米三の割をきっと守って下さい
「ははは。麦ぢやない、これはお米だよ。この外套を一々うすで磨り落して、それからまたしらげ上げたあとでなくつちやお互の口にのぼらないんだ。」
米として見た処で鳥の餌の少し上等な位にしかしらげられないだらうと思はれる。地租特免になつても、小作ばかりの此貧村の百姓に何のお蔭があらう。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
婦人おんなはいつかもう米をしらげ果てて、衣紋えもんの乱れた、乳のはしもほの見ゆる、ふくらかな胸をそらして立った、鼻高く口を結んで目を恍惚うっとりと上を向いて頂を仰いだが
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこでアンポンタンは、武家はしらけた白米こめをもらうのでないという事を知った。どんな風にして、お米をしらけるのかきくと、薬研やげんで薬を刻むようにするのだといった。
ところがこの藤尾村に水車が出来てから、前記の如く、ここへ持ち込んで米をしらげてもらうという口実の下に、京都へ米を密輸入して、切手口銭のかすりを取るというやからが出て来た。
しらげるために水車場に持つて行くのだとは思へなかつた。三俵一時にではあるし、それと彼女の行く方向は違つてゐた。お石は飯米として今迄取つておいた米を賣りに行くのだとしか思へなかつた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
酒徳利を並べる者、しらげた飯を食いちらす者、唄う声はやす音、禁令法度などはどこ吹く風かという景色である。
そういう中でも田植の日の飯米はんまいなどは、かたい家では早くからしらげてたわらにして、用意して置くものが今でもある。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
婦人をんな何時いつかもうこめしらてゝ、衣紋えもんみだれた、はしもほのゆる、ふくらかなむねらしてつた、はなたかくちむすんで恍惚うつとりうへいていたゞきあふいだが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
せっかくの文明の利器がかえってまれて、人間労力の徒費に逆転することになったというわけになるのだが、もう一つ水車禁止の理由には、ここの水車へ持ち込んで米をしらげることの口実で
夕餉ゆうげには卵を買って、しらげた米で、心をこめて雑炊を拵えた。それから戸納とだなをあけて大きい包を取出した。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たとえば信州遠山とおやまでは、粟などのいて外皮をいたものもヨネである(方言六巻一号)。天竜川を越えて三河の北設楽きたしだら郡でも、稗、麦ともに皮をとってしらげることをヨネスルという。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「はい」とあだこはこっくりをした、「米はしらげたのが一斗、ほかに俵で一俵借りました。 ...
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たとえば舂女つきめはもともみから米にする作業にまで関与しておった。三本の手杵てぎねで調子を取りうたを歌って、儀式の日の米をしらげ、それをさらに小搗こづいて粉にはたくのも、彼女らの手わざであった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)