窓硝子まどがらす)” の例文
さて、その青鳶あおとびも樹にとまったていに、四階造しかいづくり窓硝子まどがらすの上から順々、日射ひざし晃々きらきらと数えられて、仰ぐと避雷針が真上に見える。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氏はまたその小説にさへ読み耽る事の出来ない程の、ほんの一寸した閑を見つけた折には、窓硝子まどがらすを指先で叩き/\、下らぬ小唄をうたならはしになつてゐる。
宗助そうすけ苦笑くせうしながら窓硝子まどがらすはなれてまたあるしたが、それから半町はんちやうほどあいだなんだかつまらないやう氣分きぶんがして、徃來わうらいにも店先みせさきにも格段かくだん注意ちゆういはらはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そしておほひの無い窓硝子まどがらすを透して私の方を覗き込んだとき、そのきら/\した光が私を起してしまつた。
木の枝を押し分けると、赤い窓帷カアテンを掛けた窓硝子まどがらすが見える。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
と云ううちにも、すそも袂も取って、空へ頭髪かみながら吹上げそうだったってな。これだ、源助、窓硝子まどがらすが波を打つ、あれ見い。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ駿河臺下するがだいした電車でんしやりた。りるとすぐ右側みぎがは窓硝子まどがらすなかうつくしくならべてある洋書やうしよいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
廊下をばらばらと赤く飛ぶのを、浪吉が茱萸をなげうつと一目見たのは、矢を射るごとく窓硝子まどがらすす火の粉であった。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京都きやうと襟新えりしんうち出店でみせまへで、窓硝子まどがらす帽子ばうしつばけるやうちかせて、精巧せいかう刺繍ぬひをしたをんな半襟はんえりを、いつまでながめてゐた。そのうち丁度ちやうど細君さいくん似合にあひさうな上品じやうひんなのがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
這奴しゃつ窓硝子まどがらす小春日こはるび日向ひなたにしろじろと、光沢つやただよわして、怪しく光って、ト構えたていが、何事をか企謀たくらんでいそうで、その企謀たくらみの整うと同時に、驚破すわ事を、仕出来しでかしそうでならなかったのである。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どぶはなしに柵を一小間ひとこま、ここに南天の実が赤く、根にさふらんの花がぷんと薫るのと並んで、その出窓があって、窓硝子まどがらすの上へ真白まっしろに塗ったかねの格子、まだ色づかない、つたの葉が桟に縋ってひさしう。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)