畜生ちきしょう)” の例文
おいらなんざ大連だいれん湾でもって、から負けちゃって、このあわせ一貫よ。畜生ちきしょうめ、分捕りでもやつけねえじゃ、ほんとにやり切れねえや
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
甲「向うに侍が二人立って見ているが、彼奴あいつが助太刀に出そうなもんだ、何だ覗いて居やアがる、本当に不人情な侍だ、あの畜生ちきしょう打擲ぶんなぐれ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「つまるところ表通りの教師のうちの野良猫のらねこ無暗むやみに誘い出したからだと、わたしは思うよ」「ええあの畜生ちきしょうが三毛のかたきでございますよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「随分酷いのね。」と、お葉は落葉を掴んで起上おきあがったが、やがて畜生ちきしょうと叫んで、その葉を七兵衛の横面よこつらに叩き付けた。眼潰めつぶしを食って老爺じじいも慌てた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ふむ、悪い奴だね」お島は首をかしげた。「畜生ちきしょう、私をうらんでいるんだ。だがミシンがなくちゃ為様しようがないね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
噛みはせぬが、威嚇いかくする。彼が流浪るろう時代に子供にいじめられた復讎心ふくしゅうしんが消えぬのである。子供と云えば、日本の子供はなぜ犬猫を可愛かあいがらぬのであろう。直ぐ畜生ちきしょうと云っては打ったり石を投げたりする。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
畜生ちきしょう。こうしてやるから、見ておいで」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可笑おかしい畜生ちきしょうだ、種々いろ/\な事を云やアがる、申し旦那え、わっちア二十両は入りやせん、此奴こいつの前へ対しても金子を貰っちゃアきまりが悪くってけえられやせん
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いたちってけども何鼠の少し大きいぐれえのものだ。こん畜生ちきしょうって気で追っかけてとうとう泥溝どぶの中へ追い込んだと思いねえ」「うまくやったね」と喝采かっさいしてやる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼奴あいつはあんな奴ですよ。畜生ちきしょう人を見損みそこなっていやがるんだ」お島は乱れた髪をかきあげながら、腹立しそうに言った。そしてはずんだ調子で、現場の模様を誇張して話した。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「𤢖の畜生ちきしょうめ。何をやアがるんだ。早く何処どっかへ行ってしまえ。」と、お葉は勝誇かちほこって叫んだ。思いも寄らぬ救援すくいの手を得た冬子は、まりのように転がってお葉の背後うしろに隠れた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちげえねえ、側に居たなア、何を云やアがるんで、耄碌もうろくウしてえるんだ、あん畜生ちきしょう、ま師匠腹をたっちゃアけねえヨ、己はあわてるもんだからへこまされたんだ
こん畜生ちきしょうと起き上がってみたが、馳けられない。気はせくが、足だけは云う事を利かない。じれったいから、一本足で飛んで来たら、もう足音も人声も静まり返って、しんとしている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
畜生ちきしょう……畜生……。」と、お葉はののしりながら逃げ廻った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
乙「こん畜生ちきしょう、やい何処どっから出やアがッた、ヤアやすおきろよ、やい、手前てめえ何処から出やアがッた此ん畜生」
張り揚げて「おや棚へ上げて置いたしゃけがない。大変だ。またあの黒の畜生ちきしょうが取ったんだよ。ほんとに憎らしい猫だっちゃありゃあしない。今に帰って来たら、どうするか見ていやがれ」と怒鳴どなる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
重「ヘイ/\此奴でございますか、畜生ちきしょうめ、四年以来このかた一通りならない苦労をさせやアがって、此ん畜生め」
鎌は詰らねえが宜うがすか、おめえさんと中が悪ければ、ひど畜生ちきしょうだなんてり兼ねえ性質たちだが、旦那にゃア時々小遣こづけえを貰ってる私だから、なんとも思やアしねえがネ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今まで斯様こんなことはたれにも云わなかったが、此の野郎は妙な事を知ってる、ちっかわっていらア此ん畜生ちきしょう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勝「成程、何を云やアがるんだ、あん畜生ちきしょう、ま師匠、堪忍して呉んな、おら一寸ちょっと行ってらア」
甚「厄介な奴だ、畜生ちきしょうめ、ぜにが無くて幽霊を脊負しょって来やアがって仕様がねえ、其処そこへ寝ろ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
甲舁「此ん畜生ちきしょう、何処から出やアがった、此ん畜生ヤイ、出抜けに出やアがッて此ん畜生」
新「ソリャ、此処こゝなんでも何か出るにちげえねえと思った、畜生ちきしょう/\彼方あっちけ畜生/\」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伊「両人が落著おちついたら何うしてもこの恩をかえさねば、畜生ちきしょうにも劣るから、己らは」