)” の例文
むろんそうした生徒は、先生に、「これは君までの話だ、他の生徒には絶対にもらさないように。」と懇々こんこんめされるのが常である。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
代助はかぜむねに当る事と思つて、立ちまつてくらのきを見上げながら、屋根からそらをぐるりと見廻すうちに、忽ち一種の恐怖に襲はれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
観潮楼くわんてうろうや、断腸亭だんちやうてうや、漱石そうせきや、あれはあれで打ちめにして置いて、岡栄一郎をかえいいちらう氏、佐佐木味津三ささきみつざう氏などの随筆でも、それはそれで新らしい時代の随筆で結構ではないか。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
尤も俳優の誰彼は、とつくに鹿児島行きを聞き込んで、楽みにしてゐるらしいが、たつた一人梅玉だけは熊本の興行をめに、真つ直に帰つて来るものだと思つてゐる。
岩魚いわなメ、島々しまじま、松本……この辺の路、掌に地図を持っているようにくわしい。その地図に、赤い鉛筆で記号を書き入れるように、私は私自身の感情の動きを予知した。松本通信部で新聞を見る。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ちまったり、乾物屋の乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町をさがり、そこの果物屋で足をめた。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
蝙蝠傘屋かうもりがさやまへにも一寸ちよつとまつた。西洋せいやう小間物こまもの店先みせさきでは、禮帽シルクハツトわきけてあつた襟飾えりかざりにいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
男の先生二人とは名前を予ねて知り合っていたので、岩魚いわなメで名乗り合い、松本まで後になり先になりして歩いたが、流石に娘たちは男の学生みたいに騒ぎも威張りもせず、誠に気持ちがよかった。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
御米およねそでにして道具屋だうぐやまへまつた。ると相變あひかはらずあたらしい鐵瓶てつびん澤山たくさんならべてあつた。其外そのほかには時節柄じせつがらとでもふのか火鉢ひばち一番いちばんおほいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
Kはぴたりとそこへ立ちまったまま動きません。彼は地面の上を見詰めています。私は思わずぎょっとしました。私にはKがその刹那せつな居直いなおり強盗のごとく感ぜられたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
待ち合わせるために振り向いてまった私の顔を見て、先生はこういった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
同時に彼は何物をか考へるために、無暗むやみところに立ちまらざるを得なかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのうち、強い日に射付けられたあたまが、うみの様にうごき始めた。立ちまつてゐると、倒れさうになつた。あるき出すと、大地が大きな波紋をゑがいた。代助は苦しさをしのんでふ様にうちへ帰つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「なあに仏国の革命なんてえのも当然の現象さ。あんなに金持ちや貴族が乱暴をすりゃ、ああなるのは自然の理窟りくつだからね。ほら、あの轟々ごうごう鳴って吹き出すのと同じ事さ」と圭さんは立ちまって
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「先生」と高柳君は往来にまった。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)