はじ)” の例文
吾齡わがよはひはじめて九つなるに、かしこにて説教せむこと、いとめでたき事なりとて、歡びあふは、母上、マリウチア、我の三人のみかは。
私の生活がああいう態度によって導かれる瞬間がたまにあったならば私ははじめて真の創造を成就することが出来るであろうものを。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
実隆の父は長禄四年に六十三歳をもって薨じたのであるが、そのとき実隆の年はじめて六歳。その後は専ら母親の手塩に育った。
海保漁村の墓表に文久ぶんきゅう二年十月十八日に、六十七歳で歿したとしてあるから、抽斎の生れた文化二年にははじめて十歳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今羅摩が牲にせんとせる馬、のがれて私陀の二児の住所へ来たので、二児はじめて五歳ながら勇力絶倫故、その馬をとらとどめた。
しかしながら、吾人が彼を尊崇する所以ゆえんは、独り学識の上にのみ存するのではない。その毅然たる節義あってはじめて吾人の尊敬に値するのである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
皇慶はじめて叡山に登つた時、水飲ミヅノミ不実柿ミナラガキなどの地で「実のなるのにみなら柿とは如何。湯を呑むのに水飲とは如何」
愛護若 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
右にいったような統一的自己があって、しかして後自然に目的あり、意義あり、はじめて生きた自然となるのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
はじめて冠して、江戸に東遊し、途に阪府を経、木世粛もくせいしゆく(即ち巽斎である。)を訪はんと欲す。偶々人あり、余をらつして、まさに天王寺の浮屠ふとに登らんとす。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
お正月は年のはじめで何もかも芽出度くなければならない。人々が気を新たにしてこれからまた踏み出そうというところで軍でいえば出陣という場合である。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
僕年はじめて十八、家婢にたわむる。『柳樽やなぎだる』に曰く「若旦那夜は拝んで昼叱り。」とけだし実景なり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
其頃は世間に神経衰弱といふ病名がはじめて知られ出した時分であつたのだが、真に所謂神経衰弱であつたか、或は真に漫性胃病であつたか、兎に角医博士達の診断も朦朧もうろう
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
殊に、かの「文化史大系」に到っては、彼の広汎なる科学的智識をもってしてはじめて完成され得たものと云うべきである。おそらくは、今後大衆文芸の第一線に立つ人ではあるまいか。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
フランシスはやがて自分のまとったマントや手に持つしゃくに気がつくと、はじめて今までふけっていた歓楽の想出おもいでの糸口が見つかったように苦笑いをした。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
頼襄らいのぼる序を作りて送る。十一月大阪に帰る。是年松本隣太夫、茨田軍次、白井儀次郎入門す。松本ははじめて七歳なりき。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しんしんえんしゅう等に王とし、そのはなはだしきは、生れてはじめて二歳、あるいは生れてわずかに二ヶ月のものをすら藩王とし、いで洪武十一年、同二十四年の二回に、幼弱の諸子をも封じたるなれ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
弘独リ走ツテ帰リ泣イテ家慈かじニ訴フ。家慈嗚咽おえつシテこたヘズ。はじメテ十歳家慈ニ従ツテ吉田ニ至ル。とも函嶺はこねユ。まさニ春寒シ。山雨衣袂いべいしたたル。つまずキカツたおルコトシバ/\ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私欲的なればなる程、他人の私欲を害することに少なからざる心中の苦悶を感ずるのである。かえって私欲なき人にしてはじめて心を安んじて他人の私欲を破ることができるであろうと思う。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
そして明治維新、開港となりはじめて日本は数百年の怠惰安佚あんいつの眠りから覚めた。西洋の文物は続々として輸入され、封建的鎖国の殻を破った我が国は、忽ちにしてその風貌をあらため始めた。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
従来誰も解せなんだ蜻蜓の英国名の起原が東欧の俗譚を調べてはじめてわかり、支那の俚伝がその傍証に立つ、これだから一国一地方の事ばかり究むるだけではその一国一地方の事を明らめ得ぬ。
節義の存するところ、水火を踏んで辞せず、節義の欠くるところ、王侯の威も屈する能わず、猗頓いとんの富も誘うべからずして、はじめてもって士と称するに足るのである。学者は実に士中の士である。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
はじめて東京に上つて、始めて三階の客となつたあちこちの大学予科生たちが、三年後には大学生となり、其から又、三年たつて学士号を持つ頃になると、おしもおされもせぬ一廉の芝居通人になつて
芝居に出た名残星月夜 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
妻は始めから今までぢつと我慢してこの声にむちうたれてゐたのかとはじめて気がついて見ると、彼には妻の仕打ちが如何いかにも正当な仕打ちに考へなされた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
その頃は世間に神経衰弱という病名がはじめて知られ出した時分であったのだが、真にいわゆる神経衰弱であったか、あるいは真に漫性胃病であったか、とにかく医博士いはかせたちの診断も朦朧もうろう
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
経済、政治、その他一切の社会現象、人間の知識の凡てを、文学者が自らのものとした時、はじめて十九世紀に全盛を見、以後次第に衰微した文学が再び勢よく発芽し、花咲きでるであろう。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
美術家は能く自然を愛し、自然に一致し、自己を自然の中に没することに由りてはじめて自然の真を看破し得るのである。また一方より考えて見れば、我はわが友を知るが故にこれを愛するのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
三つの生活様式の中間色をなす、過渡期の生活が起滅する間に、新しい生活様式がはじめて成就されるであろう。歴史的に人類の生活を考察するとかくあることが至当なことである。
広津氏に答う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
方氏一族かくの如くにしてほとんど絶えしが、孝孺の幼子徳宗とくそう、時にはじめて九歳、寧海県ねいかいけん典史てんし魏公沢ぎこうたく護匿ごとくするところとなりて死せざるを得、のち孝孺の門人兪公允ゆこういんの養うところとなり、つい兪氏ゆしおかして
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
中流階級に訴える僕の仕事が労働階級によって利用される結果になるかもしれない。しかしそれは僕がはじめから期待していたものではないので、結果が偶然にそうなったのにすぎないのだ。
片信 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
クララは自分で知らなかった自分の秘密をその時フランシスによってはじめて知った。長い間の不思議な心の迷いをクララは種々いろいろに解きわずらっていたが、それがその時始めて解かれたのだ。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
然し男女の愛に於て、本能ははじめてその全体的な面目を現わして来る。愛する男女のみが真実なる生命を創造する。だから生殖の事は全然本能の全要求によってのみ遂げられなければならぬのだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
待って今後のことははじめてなすべきものと信じ候小生ごときはすでに起たざるべからざるのよわいに達しながら碌々ろくろくとして何事をもなしえざること痛悔つうかいの至りに候ことに生来病弱事志ことこころざしと違い候は天の無為を
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)