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狹苦
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せまくる
塗りたての
壁は
狹苦しい
小屋の
内側を
濕つぽく
且闇くした。
壁の
土の
段々に
乾くのが
待遠で
卯平は
毎日床の
上の
筵に
坐つて
火を
焚た。
踏切りの
近くには、いづれも
見すぼらしい
藁屋根や
瓦屋根がごみごみと
狹苦しく
建てこんで、
踏切り
番が
振るのであらう、
唯一
旒のうす
白い
旗が
懶げに
暮色を
搖つてゐた。
宗助は
玄關から
下駄を
提げて
來て、すぐ
庭へ
下りた。
縁の
先へ
便所が
折れ
曲つて
突き
出してゐるので、いとゞ
狹い
崖下が、
裏へ
拔ける
半間程の
所は
猶更狹苦しくなつてゐた。
狹苦しい
掘立小屋は
彼が
當初に
思ひ
込んだ
程彼の
爲に
幸な
處ではなかつた。
狹苦しいにしてもきちんとした
傭人部屋の
周圍の
土に
箒目を
入れて
水でも
打つて
見たり、
其處らで
作る
朝顏の
苗を
貰つてどんな
姿にも
鉢へ
植て
見たりして
居ると
奉公が
辛くも
思はないのであつた。