てり)” の例文
この面影おもかげが、ぬれいろ圓髷まるまげつやくしてりとともに、やなぎをすべつて、紫陽花あぢさゐつゆとともに、ながれにしたゝらうといふ寸法すんぱふであつたらしい。……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ソラ来たぞ何だか堅いものが。これはてりゴマメだ。石のようにコチコチしている。歯太郎さんがまないと見えて魚の形がそっくりしている。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
二人はお壕ばたの広い通りに出た。夜が更けてもまだ十二時前であるから彼方此方あちらこちら、人のゆききがある。月はさやかにてりて、お壕の水の上は霞んでいる。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
去年の夏はてりがつゞいたので、村居六年はじめて雨乞あまごいを見た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
盤石ばんじやくに圧し伏せられし薔薇ばらの花石をはねのけてり深みかも
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのどちらもの顔一ぱい西日にしびと共にてり渡つた事でした。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
海手うみてより日はてりつけて山桜
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
きよらの月映つきばえてりの色や
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
また同じ鼈甲を差して見ても、差手によっててりが出ない。其の人のひんなり、顔なりが大にあずかって力あるのである。
白い下地 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くろてりやすからず夏山のこの靄立もやだちを我が眼おとろふ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
てりの亂れをもろ肩に
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
淀川よどがわを控えて、城を見て——当人寝が足りない処へ、こうてりつけられて、道頓堀どうとんぼりから千日前、この辺のにえくり返る町の中を見物だから、ぼうとなって、夢を見たようだけれど、それだって
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くも所々ところ/″\すみにじんだ、てりまたかつつよい。が、なんとなくしめりびておもかつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
玉簾たますだれなかもれでたらんばかりのをんなおもかげかほいろしろきもきぬこのみも、紫陽花あぢさゐいろてりえつ。蹴込けこみ敷毛しきげ燃立もえたつばかり、ひら/\と夕風ゆふかぜ徜徉さまよへるさまよ、何處いづこ、いづこ、夕顏ゆふがほ宿やどやおとなふらん。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)