水車すいしゃ)” の例文
すずめは、一銭銅貨いっせんどうかをくわえて、おおいそぎで水車すいしゃ小屋ごやの方へとんでいきました。このすずめは水車小屋ののきばにすんでいたのでありました。
落とした一銭銅貨 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かくて水車すいしゃはますますぶじに回転かいてんしいくうち、意外いがい滑稽劇こっけいげきが一を笑わせ、石塊せっかいのごとき花前も漸次ぜんじにこの家になずんでくる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
むらはずれの、小川おがわにかかっている水車すいしゃは、あさからばんまで、うたをうたいながらまわっていました。おんな主人しゅじんも、水車すいしゃといっしょにはたらきました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『ムタラ川の急流きゅうりゅうでは、水車すいしゃがまわりだしますよ。』と、婦人ふじんは言ったが、いらいらしてきたので、ほおは赤くほてってきた。
水車すいしゃの叔父さんに背負おぶさって、家に着いたのは最早もうトボトボ頃であった。お母さんは乃公を抱占だきしめて涙を流した。宛然まるで十年も別れていたようである。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それには水車すいしゃが要るということで、大抵は大きい水車のある所をえらんだようですが、今から考えれば火薬の取り扱い方に馴れていなかったんでしょう
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
水車すいしゃは、「カタン—コトン、カタン—コトン、カタン—コトン。」とまわっていました。小舎こやなかには、二十にんこなひきおとこが、うすってました。
先生の中二階からはその屋根が少しばかりしか見えないが音はよく聞こえる水車すいしゃ、そこにこうちゃんという息子むすこがある、これも先生の厄介になッた一人で
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「下には水車すいしゃがあります。さっきの水は、この水車がうけます。そこで水車がまわります。よくわかりますね」
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
水車すいしゃは、もすがらふだんの諧音かいおんをたてて、いつか、孟宗藪もうそうやぶの葉もれに、さえた紺色こんいろがあけていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田川の流れをひいて、小さな水車すいしゃが廻って居る。水車のほとりに、かしの木が一本立って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かわやぶしたながれ、そこにかかっている一つの水車すいしゃをゴトンゴトンとまわして、むら奥深おくふかくはいっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
水車すいしゃおとむかしのように、うたをうたってまわっていましたけれど、おんなはけっして、むかしのように幸福こうふくでなかった。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、とうとうしまいには、粉ひきの水車すいしゃと、そのうしろにはえている一本の大きなリンゴの木のほかには、なにひとつないようになってしまいました。
水車すいしゃの運動はことなき平生へいぜいには、きわめて円滑えんかつにゆくけれど、なにかすこしでも回転かいてんにふれるものがあると、いささかの故障こしょう全部ぜんぶの働きをやぶるのである。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
呂宋兵衛るそんべえの遠術になやまされて、クロがだいぶつかれているようすなので、竹童は、水車すいしゃのかけてある流れによって、わしにも水を飲ませじぶんも一口すって、さて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「カタン—コトン、カタン—コトン、カタン—コトン」と水車すいしゃまわあいだに、こなひきおとこは、「コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ」とうすってた。
花前の働きぶりはほとんど水車すいしゃ回転かいてんとちがわない。時間じかん順序じゅんじょといい、仕事しごと進行しんこうといい、いかにも機械的きかいてきである。余分よぶんなことはすこしもしないかわりに、なすべきことはちょっとのゆるみもない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
といって、そのまま水車すいしゃ小屋ごやにかえりました。
落とした一銭銅貨 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
なにしろ、そいつはおれにたからものをうんとくれるって約束やくそくをしたんだからな。そのかわり、おれは水車すいしゃのうしろに立ってるものをやるって証文しょうもんを書いたんだ。
ある水車すいしゃごや(1)に、こなひきのおじいさんが住んでいました。おじいさんのとこには、おかみさんもいず、子どももなく、若いものが三人奉公ほうこうしているだけでした。