気味ぎみ)” の例文
旧字:氣味
そして恐る/\卓子テーブルの下を覗き込んで見ると、自分が調弄からかひ気味ぎみにそつと触つたのは、おとなしい姉娘のと思ひの外、おきやんな妹娘の足であつた。
「園部さん、窓をあけてよ、暑いわ」みどりが「おきつねさん」と綽名あだなされているすこしあが気味ぎみまぶたをもった眼を、苦しそうにあげて云った。
麻雀殺人事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたくしすこどく気味ぎみになり、『すべては霊魂みたま関係かんけいから役目やくめちがうだけのもので、べつ上下じょうげがあるわけではないでしょう。』となぐさめてきました。
葉子は今まで急ぎ気味ぎみであった歩みをぴったり止めてしまって、落ち付いた顔で、車夫のほうに向きなおった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
吉は勝手の方へ行って、雑巾盥ぞうきんだらいに水を持って来る。すっかり竿をそれで洗ってから、見るというと如何にも良い竿。じっと二人はあらた気味ぎみに詳しく見ます。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
主人は二度まで思い通りにならんので、少々気味ぎみで「おい、ちょっと鳴くようにぶって見ろ」と云った。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
やっては! と小文治もいささかあわて気味ぎみに、地についていた朱柄あかえやり片手かたてのばしにかれの脾腹ひばらへ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平生へいぜい悪人をのみ取り扱うに慣れたる看守どもの、一図いちずに何か誤解せる有様にて、妾の言葉には耳だもさず、いよいよあざけ気味ぎみに打ち笑いつつ立ち去りたれば、妾は署長の巡廻を待って
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
といったまま、しばらくもくしている。細君はじれ気味ぎみ
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
目の性が悪いと見えて、縁があかく、ただ気味ぎみであった。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
マチルドは、ためらい気味ぎみだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
こんなつめたいつまこころが、なんでいつまで良人おっとむねにひびかぬはずがございましょう。ヤケ気味ぎみになった良人おっとはいつしか一人ひとり側室そばめくことになりました。
大変あせ気味ぎみとなって、前後をわきまえず連続的にこいつを用いているのを、発見せられたものだと言うことだ。
麻雀インチキ物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
徳川どのも、この度はすこしあわ気味ぎみだったとみえる。間接ではあるが、この秀吉のために、光秀を牽制けんせいしてその兵力を分散せしめる役をしてくれたような結果になった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「有りますよ。」と商人あきんどくれ気味ぎみに言つた。「をひが一人お国に捕虜になつてまさ。」
途端とたんに恐ろしい敏捷すばやさで東坡巾先生はと出て自分の手からそれを打落うちおとして、ややあわ気味ぎみで、飛んでもない、そんなものを口にして成るものですか、としっするがごとくに制止した。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『イヤそれはもうしばらくってもらいたい。』とたき竜神りゅうじんさんはあわて気味ぎみははせいしました。
流石さすがの帆村も、ちとくさ気味ぎみでいたところ、ふと彼の注意をいたデマ罰金事件があった。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と少ししか気味ぎみで云うと
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「検事さん、待って下さい」と捜査課長はあわ気味ぎみに云った。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
針目博士は、からかい気味ぎみに蜂矢に話しかける。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)