-
トップ
>
-
此娘
>
-
このこ
夜もすがら枕近くにありて
悄然とせし老人二人の
面やう、何處やら寢顏に似た處のあるやうなるは、
此娘の若しも父母にては無きか
随分不器量な
娘だつたが、ミハイロは女に掛けては贅沢でないから、
此娘が道具を持つて
側へ来た時から
全然気に入つて
了つて、頭巾の蔭から
瞥と
面を見られた時には、何だか
恍然となつた……はて
お
禮を
申て
頂いてお
出でと
蒔散らせば、これを
此娘の十八
番に
馴れたる
事とて
左のみは
遠慮もいふては
居ず、
旦那よろしいのでございますかと
駄目を
押して
さわいでさわいで
騷ぎぬかうと
思ひますとて
手を
扣いて
朋輩を
呼べば
力ちやん
大分おしめやかだねと三十
女の
厚化粧が
來るに、おい
此娘の
可愛い
人は
何といふ
名だと
突然に
問はれて
もう
此樣な
事は
御聞かせ
申ませぬほどに
心配をして
下さりますなとて
拭ふあとから
又涙、
母親は
聲たてゝ
何といふ
此娘は
不仕合と
又一しきり
大泣きの
雨、くもらぬ
月も
折から
淋しくて
帳塲格子のうちに
此娘を
据へて
愛敬を
賣らすれば、
秤りの
目は
兎に
角勘定しらずの
若い
者など、
何がなしに
寄つて
大方毎夜十二
時を
聞くまで
店に
客のかげ
絶えたる
事なし、いそがしきは
大和尚