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數代
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すだい
求むることはせずとそれ
平生の
詞なるもの
盡未來この
不和の
中解ける
筈なし
數代續きし
兩家のよしみ
一朝にして
絶やさんこと
先祖の
遺旨にも
違ふことなり
世の
人は
愚とも
笑はん
痴とも
見ん
有らざる
中に同町三丁目に
數代續く小西長左衞門といふ
藥種屋あり間口凡そ二十間
餘りにして
小賣店問屋店の
二個に分ち
袖藏あり奧藏あり男女
夥多の召仕ありて何萬兩といふ
身代なれば
何暗らず送りゆく
主個長左衞門は
今茲(享保二年)五十の坂を
制し
凱歌の
聲いさましく
引揚げしにそれとかはりて
松澤が
周章狼狽まこと
寐耳に
出水の
騷動おどろくといふ
暇もなく
巧みに
巧みし
計略に
爭ふかひなく
敗訴となり
家藏のみか
數代續きし
暖簾までも
皆かれが
手に
歸したれば
木より
落たる
山猿同樣たのむ
木蔭の
雨森新七といふ
番頭の
白鼠去年生國へ
歸りし
後は