もて)” の例文
思兼神というのは、天照大御神あまてらすおおみかみが岩戸へ隠れたとき、岩戸開きの総計画をお考えになった神様で、「数人の思慮おもいはかを一つの心に兼もてる意なり」
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
と詠じし心にかなひしは實に此半四郎のこと成べし茲に其素性そのすじやうを尋るにもと讃州丸龜在高野村の百姓半左衞門と云者二人のせがれもてり兄を半作とよび弟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
目鏡めがめちうだとわらはるゝもありき、町子まちこはいとゞ方々かた/\もてはやし五月蠅うるさく、おくさんおくさんと御盃おさかづきあめるに、御免遊ごめんあそばせ、わたしいたゞきませぬほどにと盃洗はいせんみづながして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
然るに何様どういうものだったか、其時は勢威日に盛んであった丁謂は、寂照をとどめんと欲して、しきり姑蘇こその山水の美を説き、照の徒弟をして答釈をもてかえらしめ、照を呉門寺に置いて
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ほんとに老女おばさん、どうしたら篠田様のやうな御親切な御心がもてませうかネ——わたしネ老女さん、男なんてものは、みん我儘わがまゝで、道楽で、うそつきで、意気地いくぢなしのものと思つてたんですよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「貴様と同じやうに俺は現実のことには面白味がもてないんだ、あゝツ!」
鶴がゐた家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
我手にもてる呼出状を一寸ちょっと眺めて
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
さけび歩くにぞ名主なぬしの甚兵衞ももてあまし其隱居所いんきよじよ追出おひいだしけりさればお三婆は住家すみかを失なひ所々方々とうか彷徨さまよひしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
又、泥障あおりかけもてきたれ、という。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あらそひ入り來る故實に松葉屋の大黒柱だいこくばしら金箱かねばこもてはやされ全盛ぜんせいならぶ方なく時めきけるうちはや其年も暮て享保七年四月中旬なかば上方かみがたの客仲の町の桐屋きりやと云ふ茶屋より松葉屋へあがりけるに三人連にて歴々れき/\と見え歌浦うたうら八重咲やへざき幾世いくよとて何も晝三ちうさん名題なだい遊女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)