打驚うちおどろ)” の例文
廿四日、天気てんきし。となりきゃくつとめて声高こわだか物語ものがたりするに打驚うちおどろきてめぬ。何事なにごとかと聞けば、衛生えいせい虎列拉これらとの事なり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前のも哥沢節の稽古に出でて初夜しょやすぐる頃四ツ谷まる横町よこちょうかどにて別れたり。さればわが病臥やみふすとは夢にも知らず、八重はふすま引明ひきあけて始めて打驚うちおどろきたるさまなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ながかく突然いきなり御尋問おたづね申せば御不審ごふしん御道理ごもつともなれど私しは彦兵衞がせがれにて當年たうねん十五歳に相成一人のはゝ御座ござところ彦兵衞御仕置おしおきに成しと聞て打驚うちおどろもとより正直なる父彦兵衞人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
血の文字を書きしとは、如何に考うるとも受取られず、あゝ余はたゞこれだけの事に気附てより、後にも先にもおぼえなき程に打驚うちおどろき胸のうちにわかに騒ぎいだして、轟く動悸どうきに身も裂くるかと疑わる。
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
適度に切りて鍋に入れつつ妻君フト顧りみ「お登和さん、大層マア長い繊が出来ましたね。二尺も三尺も何処どこまでも切れないのが不思議です。よくそう綺麗きれいたいらに出来ますね」と打驚うちおどろく。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
でし月影に一名の曲者くせものくわふるって新仏にいぼとけつちまんじゅうを発掘せる有様を認め腰を抜かさんばかりに打驚うちおどろき泥坊泥坊とよばわりければ曲者もびっくり仰天ぎょうてん雲を霞とにげ失せたり届けいでにより時を
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
時にかく打驚うちおどろきてへやを眺むる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
行く戀病こひやみなりとは露知つゆしらぬ兩親大きに氣をもみて相藥など與ふるうち其日の申刻なゝつさがころ淺草邊まで掛取かけとりに行たる忠兵衞歸り來てきけ斯々かう/\言わけと主個あるじが話すに打驚うちおどろきおいやと仰せ有たるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
始め與力同心打驚うちおどろき是は慮外りよぐわいなり御出馬さき殊にくつわへ取り付とはそも氣違きちがひ亂心らんしんか女め其處そこはなしをれ不禮に及ばは切り捨るぞ大膽不敵も程こそあれ退しされ/\と大音にしかりながらにすがる手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)