弓勢ゆんぜい)” の例文
(この人に、信長ほどな器量きりょうがあるかどうか。ここまでは意外な神速と才腕を見せて来たが、この辺が精いッぱいな弓勢ゆんぜいではないか)
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大王猿猴の勧めに依って弓を引いて敵に向いたもうに、弓勢ゆんぜい人にすぐれてひじ背中はいちゅうに廻る。敵、大王の弓勢を見てを放たざる先にのがれぬ。
七本目とつづいて三本は途方もないところへれ飛んで、八本目にようやく的中、九本目十本目は、弓勢ゆんぜい弱ったか、へなへなと地を這いながら
ド、ド、ド、ド——ッという足音がして、この弓勢ゆんぜいに胆を冷やした、あばら組三十五人は、一度に後へ退いた。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あるとき清原武則きよはらたけのりというこれもゆみ名人めいじん名高なだかかった人が、義家よしいえのほんとうの弓勢ゆんぜいりたがって、丈夫じょうぶよろい三重みかさねまで木の上にかけて、義家よしいえさせました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「風があつて都合が悪いが、かくどちらの矢が遠く行くか、お前と弓勢ゆんぜいを比べて見よう。」
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その間に、見物はようやく不穏の色を以て、小森の弓勢ゆんぜいを眺めるようになりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いかに二郎、保元ほうげん弓勢ゆんぜい平治へいぢ太刀風たちかぜ、今も草木をなびかす力ありや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
弓勢ゆんぜい荒るるアカイアの軍勢、汝ぢ脅喝に
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
と見込みをつけ、一書をしたためて、弓勢ゆんぜいの強い一武者に、矢文として、搦手からめての山から城中へ射込ませた。もちろん勧降状である。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西条流鏑矢の半弓!——弓勢ゆんぜいまたなかなかにあなどりがたく、寄らば射ろうとばかりにねらいをつけようとしたせつな。
この弓勢ゆんぜいに恐れてかワッと寄せ手は声を上げて半町ばかり退いた。その有様を主馬之介は莞爾にっことばかり見送ったが、やがて半弓カラリと捨てて邸の中へ走り込んだ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つのゆみ——または李満弓りまんきゅうともいう半弓型のものである。けれどあずさに薄板金を貼り、漆巻うるしまきめてあるので、弓勢ゆんぜいの強いことは、強弓とよぶ物以上である。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
叫んだのといっしょに、矢さばき弓勢ゆんぜいもまたみごと、名人ののど首ねらって、きりきりと引きしぼりました。
「あいや客人、日置正次殿、我等必死のお願いでござる、貴殿の弓勢ゆんぜいお示し下され! 寄せて参ったは、不頼のともがら、あばら組と申す奴原やつばら、討ち取って仔細無き奴原でござる!」
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
此家このやを遠巻きにして、わあッわあアと騒いでいる。——そして大した弓勢ゆんぜいではないが、旺んに、矢を送って来た。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「未熟の弓勢ゆんぜいお目にかけお恥ずかしゅう存じます」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……こたえがないのは、さては恐れて、深くかくれているのか。さらば、義貞の弓勢ゆんぜいだけでも知ッておけ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「張苞の弓勢ゆんぜいごときは、何も奇とするには足りない。広言に似たれど、わがのゆく先を見よかし」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、わしは根ッからの鎌倉武士だ、まだ弓勢ゆんぜいに年はらせていないつもりだ。そのつもりで貴さまら兄弟も善戦してみせてくれ。わしも決して弓の手をゆるめはしまい。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加賀爪伝内かがづめでんないの遠矢が、がくぶちにりっぱに立っているのに、貴公きこうの矢が鳥居とおいはしらにも立っていないのはどうしたしだいか、これ、弓勢ゆんぜいたらずして、矢走やばしりのとちゅうから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加賀爪伝内の切ってはなった黒鷹くろたか石打羽いしうちは、まさしく、白鳥しらとりみね大鳥居おおとりいがくぶちにさっているのに、それにひきかえて蔦之助つたのすけ妻羽白つまはじろ弓勢ゆんぜいよわかったため
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いったい、頼朝の手勢の中には、其方そちほどな弓勢ゆんぜいの武者が、どれくらいいるのか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その弓勢ゆんぜいに恐れてか、日没と共に、平家の陣はひそとしてしまった。——今夜も淡い月が出ていた。すこし雨曇りの空ではあるが、雲はれていて、時折、雁の影がよぎって行った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「されば、てまえの弓勢ゆんぜいは、山崎の御合戦の折にも、韮山城にらやまじょう城詰しろづめの折にも、しばしば大殿の御感にあずかった、極めつきの弓でござる。的場のお子供衆の中ではお慰みになりませぬ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
腕よりは、気稟きひんである。弓勢ゆんぜいというよりは気魄きはくである。信長が射る矢は
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「この弓勢ゆんぜいでは知れたもの」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)