をく)” の例文
この遷都せんとは、しかし、今日こんにち吾人ごじんかんがへるやうな手重ておもなものでなく、一をくだい慣習くわんしふによつて、轉轉てん/\近所きんじよへお引越ひきこしになつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
前年護謨林ゴムりんに従事して居た長田秋濤をさだしうたう氏夫妻が住んで居たと云ふ林間の瀟洒せうしやたる一をくよぎり、高地にある三井物産支店長の社宅の楼上で日本食の饗応を受けた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
をくを造るに巧妙たくみなりし達膩伽尊者たにかそんじやの噂はあれど世尊在世の御時にも如是かく快き事ありしを未だきかねば漢土からにもきかず、いで落成の式あらば我を作らむ文を作らむ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
土臭ほとんむせばんと欲す。父とをくの内外を見れば、被害は屋瓦のちたると石燈籠いしどうろうの倒れたるのみ。
ちつゞく惡鬼あくきばらひ、をくあつする黒雲くろくもをぬぐつて、景氣けいきなほしに「明月めいげつ」も、しかし沙汰さたぎるから、せめて「良夜りやうや」とでもだいして、小篇せうへんを、とおもふうちに……四五人しごにんのおきやくがあつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をくたい主義しゆぎ慣習くわんしふもつと雄辯ゆうべん説明せつめいするものゝ一はすなは歴代れきだい遷都せんと史實しじつである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
奇体な窓を幾つも屋上に建て出した古風な老をくなどが其処そこに多く見出いだされる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
むかうのやまえて、れせまる谿河たにがはに、なきしきる河鹿かじかこゑ。——一匹いつぴきらしいが、やまつらぬき、をくいて、こだまひゞくばかりである。かつて、はなながとき箱根はこねおもふまゝ、こゑいた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)