つまびら)” の例文
雑誌記者しばしば来って女子拒婚問題の事を問う。余初め拒婚の字義を解せず、為に婦人雑誌を購読して漸くその意をつまびらかにするを得たり。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「誰々と、いちいちつまびらかには聞き及びませんが、左右の御近臣数名と、お小姓衆三、四十人ほどお召し連れとのみ伺いましたが」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これが医から農に転じた人であるが、何故彼が永年家の業であつた医をやめて鋤鍬を手にするやうになつたかつまびらかでない。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
この土居の地名の多く存している中国・四国の村々に入り、その地形をつまびらかにしつつ昔からの生活を考えたら、多くの面白い事実が発見せられることと思う。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
例せば予が樹蔭にかくれて窺うを見付け何物たるをつまびらかにせぬ時、特異の叫びをなして予を叫び出したと。
中臣朝臣宅守なかとみのあそみやかもりが、罪を得て越前国に配流された時に、狭野茅上娘子さぬのちがみのおとめの詠んだ歌である。娘子の伝はつまびらかでないが、宅守と深く親んだことは是等一聯の歌を読めば分かる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
場所は米沢よねざわ市に近い。詳しくは南置賜みなみおきたま広幡ひろはた村にある。どの系統の窯か歴史はつまびらかでないが、作風からすると本郷の窯と兄弟である。作るものや名称に似通った点が多い。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
夷船は大的なれば、大砲の百発百中もとより疑いなし〔大いにしかり〕。あるいは夷舶の堅牢けんろう破り難きを説く者あれども、夷の船制をつまびらかにするに深くおそるるに足らず〔何故に〕。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
悼王たうわうもとよりけんなるをく。いたればすなはしやうとす。((呉起))はふあきらかにしれいつまびらかにし、不急ふきふくわんて、(一〇五)公族こうぞく疏遠そゑんものはいし、もつ戰鬪せんとう撫養ぶやうす。
有名な『中庸』という本に「ひろく之を学び、つまびらかに之を問い、慎んで之を思い、明らかに之を辨じ、あつく之を行う」という文句ことばがありますが、けだしこれはよく学問そのものの目的
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
彼は、その理由をつまびらかにしやうかとも思つたが、余り馬鹿気てゐて話になりさうもなく、よし聞かれたとしても、それ位のことで相手に負担を感ぜさせるのも気の毒な気がして、止めた。
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
此の詩蓋し子蒼の少作、故に云ふところをつまびらかにせず。(老学庵筆記、巻七)
その頃東京の自分へ送った手紙には、「直宗光」と云う赤い大きな名刺を添えて、実戦に処した経験などをつまびらかに云って来た。通化附近の戦に股を射貫かれて倒れ、遂に捕虜となったらしい。
釈宗演師を語る (新字新仮名) / 鈴木大拙(著)
この清水狂太郎のことは、いくら調べてみても、どうもつまびらかでない。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その内容の価値に至ってはつまびらかにせず、ただ、品位あるが故に、地位高きがために、態度高尚なるが故に、人に対して親切であるが故に、感化せられていたようなものでしたけれども、ここに至って
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして、命のいとの震動から出る二人の響をつまびらかに比較した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一つは本国が遠い出先の事情をつまびらかにしないことによるが
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
こうつまびらかに観て来ると、八人の数は、半分もうごけず、その半分から我れに触れて来る切っ先に至っては、やっと一人がせきのやまである。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
語気からいえば恋愛だが、天皇との関係はつまびらかでない。また天武天皇の十二年に、王女の病あつかった時天武天皇御自ら臨幸あった程であるから、その以前からも重んぜられていたことが分かる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さうして、いのちいと震動しんどうから二人ふたりひゞきつまびらかに比較した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、声をひそめて、あるじ晁蓋ちょうがいから、今暁の事の次第、劉唐りゅうとうの本体、またその劉唐が持ちこんだところの情報などを、つまびらかに打ち明けられて、さすがに呉学人も黙考、久しいていだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
額田王ぬかだのおおきみの歌だが、どういう時にんだものかつまびらかでない。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
それから戦後の行動はつまびらかでない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)