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嬌
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なま
ふりがな文庫
“
嬌
(
なま
)” の例文
燈の消えた闇の中で、隣にむなしく延べてある妻の
嬌
(
なま
)
めかしい夜具を見まもりながら、浅二郎はまじまじといつまでも眠れずにいた。
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
銀鈴のような
嬌
(
なま
)
めかしい声を出したもんだ。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一
分
(
ぷん
)
一
分
(
ぷん
)
の
嬌
(
なま
)
めいて滑りゆくには
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
阿芙蓉
(
あふよう
)
の
萎
(
ぬ
)
え
嬌
(
なま
)
めけるその匂ひ。
有明集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
「御不満なのはあなたです」ゆきをは悩ましげに
溜息
(
ためいき
)
をした、
嬌
(
なま
)
めかしいと云ってもいいほど悩ましげな、訴えるような溜息であった
薊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
幽霊でも酔うものだろうか、お染の
蒼
(
あお
)
い顔がいつかぽっと赤くなり、眼にうるみが出て、身のこなしがますます
嬌
(
なま
)
めかしくなってきた。
ゆうれい貸屋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
眉をしかめたり眼まぜをしたり、
媚
(
こ
)
びた
嬌
(
なま
)
めかしい微笑をみせたりするが、それでもなお人間ばなれのした感じは消えなかった。
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あの夜もずいぶん
嬌
(
なま
)
めかしかったが、いまこの日中の往来に立って、こちらへ笑いかける眼もとも、あでやかに嬌めいてみえた。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「あそこで」あやは
嬌
(
なま
)
めかしい表情で、いま出て来た雑木林のほうへ眼をやった、「あそこであたしを抱いて、可愛がってくれたら云うわ」
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女を助け出したとき、あのかよが人々の面前で、万三郎にひどく
狎
(
な
)
れ狎れしくした。思いきり当てつけがましく、
嬌
(
なま
)
めいたことを云った。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かよは手燭を下に置き、そこへ
跼
(
しゃが
)
んで、わざと甘えたつくり声で云った。彼女が跼むと、
嬌
(
なま
)
めかしい香料の匂いが強くした。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
勘兵衛に強いられて二三杯
舐
(
な
)
めたお笛は、
眼蓋
(
まぶた
)
のあたりをほんのり染め、どことなく体つきに
嬌
(
なま
)
めかしさが匂っていた。
嫁取り二代記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
着物をぬぎ、寝衣をひっかけたところで、なめらかにひき緊った小さな肩と、くびれた裸の脇腹とが、おどろくほど新鮮に
嬌
(
なま
)
めかしく感じられた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
十七か八くらいの、きりょうのいい女たちで、髪かたちも着ている物も、立ち居、身ぶりや言葉つきも、まるでいろまちの者のように
嬌
(
なま
)
めいていた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
仄
(
ほの
)
かな行燈の光りの中で、彼女の胸のなめらかな白さと、
乳暈
(
にゅううん
)
の
鴇色
(
ときいろ
)
をした豊かな張りきった乳房とが、どきっとするほど
嬌
(
なま
)
めかしく色めいてみえた。
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
着物も屋敷にいるときとは違って、色彩の
嬌
(
なま
)
めかしい派手な柄だし、町ふうに結んだ帯もひどくいろめいてみえた。
女は同じ物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
姿は御殿ふうだが、新八を見るまなざしや、その言葉つきは、三年まえに別れたときと違って、それ以前の、
嬌
(
なま
)
めかしく色めいたようすに返っていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
年は四十になるし、
縹緻
(
きりょう
)
もよくはないが、表情の多い眼つきや、やわらかな身ごなしなどで、ふと
濃艶
(
のうえん
)
な
嬌
(
なま
)
めかしさをあらわす若さと、賢さをもっていた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
膚は脂肪がのっていよいよ
艶
(
つや
)
やかに、しっとりと軟らかい弾力を、帯びてきた。自信とおちつきを加えた
眸子
(
ひとみ
)
は、ときに驚くほど
嬌
(
なま
)
めかしい動きかたをする。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女の顔には、虚脱とすてばちの色が、混りあってあらわれ、それまでの単純な表情とはまるでべつな、一種の
嬌
(
なま
)
めかしさ、といったふうなものが感じられた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
机の上にはやりかけの写本がある、擬古体のごく
嬌
(
なま
)
めかしい戯作で、室町時代の
豪奢
(
ごうしゃ
)
な貴族生活、特に銀閣寺将軍の情事に
耽溺
(
たんでき
)
するありさまが主題になっていた。
七日七夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
紫色の地に菊の模様を散らした小袖が、色の白い顔によく似合い、少し衣紋をぬいた
衿足
(
えりあし
)
の、なめらかに脂肪を包んだ肌が、吸いつきたいほど
嬌
(
なま
)
めかしく思えた。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お兼は子を産まないためか、肌の
艶
(
つや
)
もよく、浮気性の女に共通の
嬌
(
なま
)
めかしさ、誘惑的な声と身ぶり、言葉よりずっと明確に意志を伝える眼つき、などをもっていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
子供を一人産んで、
嬌
(
なま
)
めかしく成熟した女、
良人
(
おっと
)
を持ち家庭を持つ一人の妻、そういう印象であった。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お兼は子を産まないためか、
肌
(
はだ
)
の
艶
(
つや
)
もよく、浮気性の女に共通の
嬌
(
なま
)
めかしさ、誘惑的な声と身ぶり、言葉よりずっと明確に意志を伝える眼つき、などをもっていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おみやのようすはすっかり変っており、それまでのじだらくさや、
嬌
(
なま
)
めかしさはまったくみられず、兄である自分に対しても、はっきりと眼をあげてものを云った。
樅ノ木は残った:04 第四部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
とうとう
喧嘩
(
けんか
)
になってしまった。立膝をした裾合から水色
縮緬
(
ちりめん
)
の
嬌
(
なま
)
めかしいものがちらちらみえる。
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼の傍には、銀之丞の妹春枝が、後手に縛られて、くずれ
牡丹
(
ぼたん
)
のように
嬌
(
なま
)
めかしく打伏している。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「そうね、御存じないのがあたりまえですわね」とおみやは
嬌
(
なま
)
めかしいしぐさで、裾前や衣紋を直しながら、
斜交
(
はすか
)
いに男を見た、「あたしあなたと同じ屋敷にいますの」
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
まだ病後の
窶
(
やつ
)
れはあるが、若い躯は
恢復
(
かいふく
)
も早いらしく、皮膚は
艶
(
つや
)
やかになり、血色もよく、活き活きと光りを
湛
(
たた
)
えた眼もとなど、一種の
嬌
(
なま
)
めかしささえ加わったようである。
雪の上の霜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
やがて化粧の香料のつよい匂いが鼻につき若いからだの
嬌
(
なま
)
めいた姿が眼ざわりになった。
菊千代抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
顔つきも緊ったし、動作も、口のききようも、以前にはない
屹
(
きっ
)
としたものがある。まえにはどこかしら崩れたような、じだらくな
媚
(
こび
)
が感じられ、不道徳な
嬌
(
なま
)
めかしさが匂っていた。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
しもぶくれのふっくらとした
顎
(
あご
)
と、受け口の、ひき緊った
唇
(
くち
)
つきと、そして右の眼尻にある、かなり大きな
黒子
(
ほくろ
)
とが、
凛
(
りん
)
とした表情に、柔らかな、幾らか
嬌
(
なま
)
めいた印象を与えていた。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
背丈も低いほうであるが、調和のとれた、かたちのいい
躯
(
からだ
)
つきで、立ち居の姿に下町ふうの
嬌
(
なま
)
めかしさと、かなり濃厚ないろけが感じられ、それが他の六人のなかで際立ってみえた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
小麦色の細おもてに、眉が濃く、眼尻のあがった、いかにも勝ち気らしい顔だちであるが、小さい肩や、そこだけ緊って肉づいた腰つきなどに、洗練された
嬌
(
なま
)
めかしさと色気が感じられた。
葦は見ていた
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
暗くしてある
行燈
(
あんどん
)
の柔らかい光りで、金屏にかこまれた夜具の色が、
浄
(
きよ
)
らかな
嬌
(
なま
)
めかしさをみせている。きぬは
白無垢
(
しろむく
)
の上に打掛を重ね、両手を膝に置き、ふかく
俯向
(
うつむ
)
いたまま坐っていた。
山椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女はショオルのあいだから
嬌
(
なま
)
めかしく、むしろ勝誇ったように笑っていた。
正体
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
些
(
いささ
)
かのたるみもない肌は
艶
(
つや
)
やかに張っているし、髪の毛もたっぷりと黒く、青い眉の
剃
(
そ
)
りあとや、その下に少しくぼんでいるつぶらな眼など、どちらかというと
嬌
(
なま
)
めかしくさえ感じられた。
燕(つばくろ)
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
黒門のお登女さまも出ていて、輿が通りかかると
嬌
(
なま
)
めかしく杢助に挨拶した。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おみやは濃い化粧をした顔で、なにかを暗示するように、
嬌
(
なま
)
めかしく笑った。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
手当てをしているのは津留である、彼女はぼっと
嬌
(
なま
)
めかしく上気していた。
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
杉乃は子を産んでから少し肥え、色も白く血色もよくなり、健康な
嬌
(
なま
)
めかしさが
溢
(
あふ
)
れるようにみえた。けれども、そのときは顔もきびしく硬ばり、蒼ざめて眼は咎めるような光りを帯びていた。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かたく盛上った胸のふくらみも……今宵は見違えるように
嬌
(
なま
)
めかしい。
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ちょっと
嬌
(
なま
)
めかしいくらい冴えた美しさにあふれていた。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あどけないほど柔軟で匂やかな
嬌
(
なま
)
めかしさをもっていた。
つばくろ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
嬌
漢検1級
部首:⼥
15画
“嬌”を含む語句
愛嬌
嬌態
嬌羞
愛嬌者
御愛嬌
嬌瞋
嬌笑
嬌娜
嬌声
無愛嬌
嬌名
嬌然
嬌音
嬌嗔
嬌飾
愛嬌造
嬌魅
嬌艶
嬌媚
不愛嬌
...