女衒ぜげん)” の例文
女衒ぜげんの悪いのに引っ掛って、手取りたった二十八両、その時はもう元金が百三十両で、一年の利子にもならない始末でございました
おつねは長屋の人にたのんで、山谷さんやあたりにいる女衒ぜげんに話して貰って、よし原の女郎屋へ年季一杯五十両に売られることになりました。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
マッサージをやる美人後家の下宿をねらって這入ったら、奥の間に脊髄病の入れ墨男が居て、その後家を女衒ぜげんの手先に使っていた……。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
過ち易きは、人のみち、算盤そろばんの珠。迷ひ易きは、女衒ぜげんの口、恋のみち、謎、手品、本郷の西片町、ほれぼれと惚れてだまされたるかなし。
第二真珠抄 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雇い婆に、耳打ちして、てん屋へ、何かあつらえにやる様子を、雲霧は、風呂の中で、感じていた。すると、格子先で、女衒ぜげんくめ
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分が女衒ぜげんの手から手へ渡りながら、きびしく檻禁されていたときのことを思いだしたのである。その紙には字が書いてあった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女衒ぜげん、などなど、これらの生業なりわいと共に社会の裏側にうごめき続け、その時も尚パリの裏街、——貧しい詩人や絵描きや音楽家や
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
そっちの四十ばばあの女衒ぜげんとふたりが、きょうまでおめえさんをここへ閉じこめて、毎日毎日責め折檻していたんだろう。
その翌朝、七ツ頃、顎十郎は岩槻染、女衒ぜげん立縞の木綿の着物に茶無地の木綿羽織。長い顎を白羽二重の襟巻でしっかりとくるんでブラリと脇阪の部屋を出る。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
即ち、本職の女衒ぜげんや口入屋から女を買ふのは、高い金がいるばかりでなく、上玉じやうだまが容易に得られない。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
お辰の話きいては急につのを折ってやさしく夜長の御慰みに玉子湯でもしてあげましょうかと老人としより機嫌きげんを取る気になるぞ、それを先度せんども上田の女衒ぜげんに渡そうとした人非人にんぴにん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「捨ててしまうとは勿体もったいねえ話だ。だまして城下へ連れて来てよ、女衒ぜげんへ掛けて売ったらどうだ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
裏に居た女衒ぜげん小市こいちという男を存じて居りましたから、これへ参ってはなしをいたして見ましょう
婦女誘拐ゆうかいを職とする、法網くぐりの女衒ぜげんたちのために、仲宿をすることもあるので、女わらべの泣きごえが、世の中に洩れるのをはばかり、庫裡くりの下にあなぐらを掘って、そこに畳をしき込み
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
父や母に捨てられて女衒ぜげんにつれられて出た東北の町、小さな山にとりかこまれ、その山々にまだ雪のあつた汚らしいハゲチョロのふるさとの景色が劫火の奥にいつも燃えつづけてゐるやうな気がした。
続戦争と一人の女 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
女衒ぜげんの惡いのに引つ掛つて、手取りたつた二十八兩、その時はもう元金が百三十兩で、一年の利子にもならない始末でございました
誤ち易きは、人のみち、算盤そろばんの珠。迷ひ易きは、女衒ぜげんの口、恋のみち、なぞ、手品、本郷の西片町、ほれぼれと惚れてだまされたるかなし。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
女衒ぜげん、桂庵はどちらかといえば表面的にやっている。その他、出入りの理髪師、その他の商人で極めて裏面的にやっているものは数限りない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「——てめえは忘れたかもしれねえがこっちは覚えてるぞ、女衒ぜげんの六、外へ出たくねえのなら、ここでてめえのしたことをばらしてやろうか」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もって、客席へはべらすさえ、言語道断だ。それをなお、此方の妻にすすめるとは女衒ぜげんにも劣る畜生根性。——貴様の背骨はよほど曲がっているな
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
年あけたるのち、居所を定めず女衒ぜげんなぞいたしおりしとか聞き及びそうろうも、つまびらかには存じ申さずそうろう。
そこには、おきみの新しい買ひ手である高崎の銘酒屋の主人と、一人の女衒ぜげんとが坐つてゐたのである。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
京、大阪の女衒ぜげんどもは、わずかばかりの金穀で貧乏公卿の息女を買い落し、みちのくの果てに送りだしたが、うそかまことか、その中に、烏丸中納言の息女と名乗るのがいたという話なのである。
奥の海 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
江戸の女衒ぜげんが玉を見に来て、二月の晦日にいったん帰って、三月の二十七日にまた出直して来て、金を渡して本人を連れて行ったそうですが、その勤めさきを駒八の家では秘し隠しにしているので
女衒ぜげんの真似をしている時、さんざん人も泣かせたはずですから、うらみを買った覚えはかぞえ切れないほどあるでしょうが、しかし、八朔の白無垢を着て
女に逃げられた女衒ぜげんが、たえず女を殺していた日には商売にならない、という道理から宅助らしい我慢なのだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
油っけのぬけたやつが、女衒ぜげんみてえなまねしやがって、何するんでえ。来年あたりゃ西国順礼にでも出たくなる年ごろじゃねえかよ。はええところ恐れ入りな
職業婦人の第二職業の紹介者、女衒ぜげん、周旋人、又はブローカーといったようなものは名前を換えて色々いる。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
女衒ぜげんの六がなかまの復讐ふくしゅうおそれたとき、広い世間にではなく、この島をかくれがに選んだように、かれらにとってもまた、ここが安全なかくれがなのであろう。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
年は二十一で、下谷の金杉の生まれだと女衒ぜげんが話した。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
女持の匕首あひくちか何んか持出して、清水屋の井戸端でお君を一と突きに殺し、取つて返して御假屋横町で、女衒ぜげん見たいなお瀧を刺した、——鏡山の芝居だつて
後ろ袈裟げさを狙った、女衒ぜげんの久六の道中差。かわして、のめり流れた背中へ、ピュッと一太刀浴びせつけた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「沼津の女衒ぜげん藤兵衛とうべえとやらいう人が連れて、江戸の新吉原とかへ売られたと聞いただよ、おらもうそれを聞いたら姉さが可哀そうで、可哀そうで飯ものどへ通んねえだ」
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はめ込み女衒ぜげんのだまし罪ゃ入牢じゅろうと決まってるんだ。ついでにふたり、伝馬町へ涼ましに送りますぜ
女持の匕首あいくちかなんか持出して、清水屋の井戸端でお君をひと突きに殺し、取って返して御仮屋横町で、女衒ぜげんみたいなお滝を刺した、——鏡山かがみやまの芝居だって
色より慾に引ッくり返った新造は、乾分の仁三を女衒ぜげんの久六の所へ走らせ、手筈をきめて、京の色街へ、千浪を売り飛ばそうとたくらんだ。それが彼の腹癒はらいせであった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「角さんがやる気になればだめらしいね」と母は云った、「芸妓屋へじかにしろ、女衒ぜげんに頼むにしろ、親が金を取ってしまえば、おかみの力でもどうしようもないそうだよ」
落葉の隣り (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人のうわさによれば右七百両、あまりよろしからざる金子とかにて、女衒ぜげんのかたわら、おりおりいとけなき子ども等かどわかしそうろうてためあげたる不義の金子とか申す由にそうろう
そんなわけぢやありませんがね、主人の鈴川主水のいふことには——良い男ばかり集つてゐると陰間宿かげまやどだの、色子いろこ女衒ぜげんだのと、世間の噂がうるさくて叶はない。
乗合い客の中には、明日あしたの米の買えない者もいた。暗い顔を持って京の女衒ぜげんの家へ娘を売りにゆく者もいた。その日その日、木賃宿きちんやどで疲れては眠る旅商人あきんども交っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女衒ぜげんの六はなぜそんなことをした、と栄二は思っていた。六は避難する船に乗ったが、船からおりるとき、繩細工をする老人が海へ落ち、それを救おうとしてとび込んだ。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女衒ぜげん
多分姉妹二人、よく/\の事情で女衒ぜげんの手に渡り、年上の姉は佐野喜の店で勤め、年弱で身體もいぢけきつてゐる妹のお鶴は、寮の下女代りにこき使はれてゐたのでせう。
女衒ぜげんから女衒の手へ売られてゆくところでは、さもはらが立つというように、うめき声をあげたり
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
病人のそばで、密々ひそひそ、話し込んでいた女衒ぜげん粂吉くめきちが、耳を抑えて、飛び上がった。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たぶん姉妹二人、よくよくの事情で女衒ぜげんの手に渡り、年上の姉は佐野喜の店で勤め、年弱で身体もいじけきっている妹のお鶴は、寮の下女代りにこき使われていたのでしょう。
きさまは女衒ぜげんでも始めたのか、きさまは女で食うほどおちぶれたのか、と喚くのが聞えた。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかたがねえから、女衒ぜげんに口をかけて、一番姉を
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
角兵衛獅子かくべえじしの親方を振り出しに、女衒ぜげん真似まねをやったり、遊び人の仲間へ入ったり、今では今戸に一戸を構えて、諸方へ烏金からすがねを廻し、至って裕福に暮している佐吉の女房です。
女衒ぜげんの手から手へ渡って、正月下旬に、江戸へ来た。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)