外廓そとぐるわ)” の例文
それに、少女の摩耶を連れ、西の丸から広い外廓そとぐるわへ出、まだ工事中の玉造口たまつくりぐちの城門を出て、ぶらりと、ここへ来てしまったものなのだ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲野こうのさんと宗近むねちか君と相談の上取りきめた格言に云う。——第一義において活動せざるものは肝胆相照らすを得ずと。両人ふたりの妹は肝胆の外廓そとぐるわで戦争をしている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最後の球を打つ為に、外廓そとぐるわの線の一角に立つた。『さあ、来い』と言はぬばかりの身構へして、うかゞひ澄まして居る文平を目がけて、打込んだ球はかすかに網に触れた。『タッチ』と銀之助の一声。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
相州さうしう小田原をだはらまち電車鐵道でんしやてつだう待合まちあひの、茶店ちやみせ亭主ていしゆことばれば、土地とち鹽辛しほから蒲鉾かまぼこ外郎うゐらうおよ萬年町まんねんちやう竹屋たけやふぢ金格子きんがうし東海棲とうかいろう料理店れうりてん天利てんりしろ石垣いしがきおよ外廓そとぐるわ梅林ばいりんは、およ日本一につぽんいちなり
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
外廓そとぐるわほりの向うにある本陣の方は定めし備えも怠っているであろうし、兵も大勢はいないであろう、すると、此の道を行っていきなり敵の本陣のうしろへ出れば、必ず好い機会があるに違いない
ひたひたと大江戸城の外廓そとぐるわに出ぬけてまいりました。
そこにも、多くの石工いしくが、外廓そとぐるわの石垣を築いていた。搦手からめて橋梁きょうりょうや、濠をさらう工事にもかかっている。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いづれ美人びじんにはえんなき衆生しゆじやうそれうれしく、外廓そとぐるわみぎに、やがてちひさき鳥居とりゐくゞれば、まる石垣いしがききふたかく、したたちまほりふかく、みづはやゝれたりといへども、枯蘆かれあしかやたぐひ細路ほそみちをかけて、しもよろ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
近頃彼は、西瓜の荷をになって、江戸城の此処彼処ここかしこにたくさん働いている石置場の人足や、大工小屋の工匠こうしょうや、外廓そとぐるわの足場にいる左官などへ、西瓜を売ってあるいていた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、事実はどこまでも事実で、瞬間しゅんかんののち、またもや同じような怪焔かいえんが、こんどは籾蔵もみぐらへおち、つづいて外廓そとぐるわ獣油じゅうゆ小屋など、よりによって危険なところへばかり落ちてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すわ変事へんじと、旗本はたもとや、役人たちは、得物えものをとってきてみると、外廓そとぐるわの白壁がおちたところから、いきおいよくふきだしている怪火! すでに、矢倉やぐらへまでもえうつろうとしているありさまだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてこのたびのご拝謁はいえつに、なにがなよき土産みやげともぞんじまして、上洛じょうらくのとちゅう、いのちがけでさぐりえましたのは柴田勝家しばたかついえ攻略こうりゃく、まった北庄城ほくしょうじょうなわばり本丸ほんまる外廓そとぐるわほりのふかさにいたるまでのこと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)