城下じょうか)” の例文
「あの、近ごろ浜松はままつのご城下じょうかで、武田伊那丸たけだいなまるというかた徳川とくがわさまの手でつかまったそうですが、それは、ほんとでございますか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村から城下じょうかへとひろがって、六兵衛は重吉のちょっとしたいたずら半分のはかりごとのために、うらないの大先生になってしまったのです。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
風励鼓行ふうれいここうして、やむなく城下じょうかちかいをなさしむるは策のもっともぼんなるものである。みつを含んで針を吹き、酒をいて毒を盛るは策のいまだ至らざるものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どこからともなく、たくさんのあやしげなふうをした人間にんげんが、城下じょうかあつまってまいりました。毎日まいにち毎日まいにち雪道ゆきみちをあるいて、とおくから、ぞろぞろとはいってきました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
戦国時代の城下じょうかの町のように、民家みんかは焼けるもの、火がくれば家財をかかえて、逃げればよいものというような考えかたがだんだんと消えて、ここは一国の大切なみやこだ、これを美しくし
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大坂おおさかはまだ三ごうとも、城下じょうかというほどな町を形成けいせいしていないが、急ごしらえの仮小屋かりごやが、まるでけあとのようにできている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このかねは、わたしが、忠勇ちゅうゆう兵士へいしをここへあつめるときに、らすかねだ。これをらせば、たちどころに、城下じょうかむ三まん兵士へいしたちは、ここへあつまってくるのじゃ。
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源兵衛は昨夕城下じょうかとまったと見える。余は別段の返事もせず羊羹を見ていた。どこで誰れが買って来ても構う事はない。ただ美くしければ、美くしいと思うだけで充分満足である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちょうど、甲府こうふ城下じょうかへはいってから、二日ふつか三日目みっかめひるである。宮内は、馬場はずれの飯屋めしやなわすだれを分けてはいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど、そのころ、どこからともなく城下じょうかへまわってきたうらなしゃがありました。とりのように諸国しょこくあるいて、人々ひとびと運命うんめいうらなう、せいひくい、ひかりするどおとこでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「はあい。こうやってたきぎを切っては城下じょうかへ持って出ます」と源兵衛は荷をおろして、その上へ腰をかける。煙草入たばこいれを出す。古いものだ。紙だかかわだか分らない。余は寸燐マッチしてやる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひめからおくられた黒馬くろうまにそれをかせて、おひめさまの御殿ごてんのある城下じょうかしてけてきたのです。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
城下じょうかから来ました」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
城下じょうか人々ひとびとは、今度こんどのことから、なにかこらなければいいがと心配しんぱいしていました。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けたときには、もうこの一たいは、この城下じょうかには、どこにもえませんでした。
赤い姫と黒い皇子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
城下じょうかにさまよっています、あらゆるあわれな宿やどなしどもをおあつめなされて、ごちそうなされ、かれらがたり、いたりした、めずらしいことを、なんなりと言上ごんじょういたせよと、命令めいれいあったために
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)