つよ)” の例文
そしてこの二つの芝草のつよさを仔細に調べてみたのだった。僕はそれを幾度も続けていった。その結果、遂に一つの結論に達した。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ペテロ、ヨハネなどつよき性格の人間が、この柔和なイエスの心をわがものとするまでには、ずいぶん時を要したでしょう。
銀之助は不思議さうに友達の顔を眺めて、久し振で若くつよく活々とした丑松の内部なか生命いのちに触れるやうな心地こゝろもちがした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
渡邊さんや秋月さんが取做とりなすと殿様もゆるすだ、秋月さんは槍奉行を勤めているが、成程つよそうだ、身丈せいが高くってよ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
天使または魂にあるをうるかぎりのつよさとみやびとはみな彼にあり、われらもまたその然るをねがふ 一〇九—一一一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そうして、今や卑弥呼を目がけて飛びかかろうとしている反絵の方へ馳け寄ると、彼のつよい首へ両手を巻いた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
どこまでもつよすこやかな心の活動をもって本当に自己の衷に見出されたものを維持し発展することができる人は、真に個性の何たるかを理解することができる。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
但し賢秀がよわくてもつよくても、親父の善悪はせがれの善悪には響くことでは無い、親父は忰の手細工では無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
自分の作品がどんな悪評にも絶対にスポイルされないほどつよいものだという自信を持つことも出来ないので、かねて胸くそ悪く思っているひとの言動に対し、いまこそ
如是我聞 (新字新仮名) / 太宰治(著)
燈火ともしびもと書物しよもつらき、ひざいだきてせ、これは何時何時いつ/\むか何處どこくにに、甚樣じんさまのやうなつよひとありて、其時代そのときみかどそむきしぞくち、大功たいこうをなして此畫このゑ引上ひきあげところ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
肩のところにひどいカギ裂きの出来た海老茶色えびちゃいろのルバーシカを着たの。鳥打帽をぞんざいに頭の後ろに引っかけたの。つよそうな灰色の髪の小鬢こびんへどういうわけか一束若白髪を生やしたの。
ズラかった信吉 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「心愚痴にして女に似たる故、人をそねみ、富める者を好み、へつらへるを愛し、物ごと無穿鑿むせんさくに、分別なく、無慈悲にして心至らねば、人を見しり給はず」というような、心のつよさを欠いた
この和泉守の太刀姿は、地鉄じがねこまやかにつよく冴えて、匂いも深く、若い風情のなかに大みだれには美濃風みのふうに備前の模様を兼ねたおもむきがあり、そのころまず上作の部に置かれていたという。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四つの足は合掌枠がっしょうわくのようにつよく突っ張って、その眼は間断なく犬殺しどもの挙動を見廻して、その口からようやくうなりを立てはじめていました。痩せた身体がブルブルと身震いをはじめました。
血気まさにつよきの活溌男児をば、空しく虐殺せしめたり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
葉の階層——つよみき。年輪の多いあらい幹。
暗い時間に (新字旧仮名) / 片山敏彦(著)
つよい人間がいない、剛い人間がいない。」
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それのつよさはそこにいかなる醜さが展開されようとも少しも容赦することなく、それのへりくだりはそこに見出されるいかなる悪をも弁解しようなどとはしない。
語られざる哲学 (新字新仮名) / 三木清(著)
美わしとみずからおもえる情を讃せよ、かなえりとなす理を讃せよ、つよしとなせる力を讃せよ、すべては我らの矛のなれば、剣の餌なれば斧の餌なれば、讃して後に利器えもの
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つよしとなせる力を讚せよ、すべては我等の矛の餌なれば、剣の餌なれば斧の餌なれば、讚して後に利器えものひ、よき餌をつくりし彼等を笑へ、嬲らるゝだけ彼等を嬲れ、急に屠るな嬲り殺せ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)