前掛まへかけ)” の例文
らおめえ、手洟てばなはかまねえよ」といつたりがら/\とさわぎながら、わら私語さゝやきつゝ、れた前掛まへかけいてふたゝめしつぎをかゝへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
チチヤノの絵に見る様な若い女が寝巻の上ににはかに着けたらしい赤い格子縞の前掛まへかけ姿で白い蝋燭を手にして門をけてれた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それほど細工の上手な世之次郎なら、何もわざ/\自分の前掛まへかけで、叔父を絞め殺すやうなことをする迄もない筈です。紐や繩は何處にでもあります。
前掛まへかけを器用に退けて、蹴込みからりた所を見ると、脊のすらりと高い細面ほそおもての立派な人であつた。ひげを奇麗につてゐる。それでゐて、全くをとこらしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くはしいことをたづねる前に、私は、ちやうどゆるみかけてゐたアデェルの前掛まへかけの紐を結び直してやつた。
そこあいちやんは恰度ちやうど稽古けいこときのやうに前掛まへかけうへ兩手りやうてんで、それを復習ふくしうはじめました、が其聲そのこゑ咳嗄しわがれてへんきこえ、其一語々々そのいちご/\平常いつもおなじではありませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
厨女くりやめの白き前掛まへかけしみじみと青葱の香のみて雪ふる
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
内儀のお富は貧乏人の子で、金襴の帶どころか、ろくな前掛まへかけも持たずに嫁入して居るし、めひのお梅は、お轉婆で粹好いきごのみで、そんな大時代なものは大嫌ひ。
「ジエィンさん、前掛まへかけをおとりなさい。そこで何をしてらしたの。今朝お顏と手を洗ひましたか。」
宗助そうすけ一番いちばんおくはうにある一きやく案内あんないされて、これへとはれるので、踏段ふみだんやうなもののうへつて、椅子いすこしおろした。書生しよせいあつ縞入しまいり前掛まへかけ丁寧ていねいひざからしたくるんでれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
阿母さんは萌黄もえぎ前掛まへかけで涙をき乍ら庫裡の中へはいつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
いたいほどひかしろ前掛まへかけをんなよ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くろ前掛まへかけちよいとしめて
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そつとるなり前掛まへかけに。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)