冷気れいき)” の例文
旧字:冷氣
およそ天よりかたちしてくだものあめゆきあられみぞれひようなり。つゆ地気ちき粒珠りふしゆするところしもは地気の凝結ぎようけつする所、冷気れいき強弱つよきよわきによりて其形そのかたちことにするのみ。
何となく心臓の動悸どうき不整ふせいだな、と思いながらも、肌にひろがる午前の冷気れいきに追われて、ザブンと一思いに身を沈めた。熱過あつすぎる位の湯加減である。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
笛がとぎれた時の、シーンとした静寂しじま冷気れいきとは、まるで深海のそこのようだ。けれど、事実じじつはおそろしい高地こうちなのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たかやまには、あきがきて、はやくも冷気れいきのたつのが、ずっとさとのほうよりははようございました。いろいろのむしが、自分じぶんたちのうえかなしんでいています。
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『だが、それなら、夜の冷気れいきも、たくさん受けることになるね。』と 神さまはおっしゃった。
ながく水流中に在りし冷気れいき露営ろえい寒気かんきあはせ来るにひ、此好温泉塲をはじめて蘇生そせいするのおもひあり、一行の内終夜温泉に浴してねむりし者多し、しんに山中の楽園らくえんと謂ふべし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
主人は読書どくしょにあいて庭に運動した。秋草もまったくちつくして、わずかにけいとうと野菊のぎくの花がのこっているばかりである。主人はねっした頭を冷気れいきにさらしてしばらくたたずんでおった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ことにさむい! まだふもとのもみじはあさいが、このへんの冷気れいきは、身にしみるほどではないか。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まゆひそめて、吐きだすように云ったのは、あかがおの、でっぷり肥った川波船二かわなみふねじ大尉だった。窓の外は真暗で、陰鬱いんうつ冷気れいきがヒシヒシと、薄い窓硝子ガラスをとおして、忍びこんでくるのが感じられた。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
じん山嵐さんらんが、鞍馬山くらまやまの肩あたりから、サーッと冷気れいきをふり落としてきたかと思うと、八神殿しんでん冠桜かんむりざくらの下あたりに——竹童ちくどうのお師匠ししょうさま果心居士かしんこじのすがたが、めずらしくもほのかに見えたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)