兄妹きやうだい)” の例文
「成程、——ところで、編笠乞食との間柄は何だらう。兄妹きやうだいとか、許嫁いひなづけとか、話ぶりで見當は付かなかつたらうか」
當時たうじまちはなれた虎杖いたどりさとに、兄妹きやうだいがくらして、若主人わかしゆじんはうは、町中まちなか或會社あるくわいしやつとめてると、よし番頭ばんとうはなしてくれました。一昨年いつさくねんことなのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、その兄の不徳を、今又一つ聞ねばならぬといふ気がすると、流石に兄妹きやうだいであれば辛くない訳に行かぬ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
まちは、なみだうかんでると、そつとひとみぢた。そして、いつまでもじつとしてゐた。はじめは、兄妹きやうだいたちのこゑとなりしつからきこえてた。そして彼女かれかなしかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
かういふ話を簡單にかはしてから、義雄は次ぎの間へ行き、寢ころんだが、お君さんは氷峰の實際の兄妹きやうだいか知らん。似てゐるところもある樣だが、どうもさう取れない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
夫人の左には詩の評をする某夫人、右には二十はたち前後のぢよ詩人が三四人並んで居た。僕のあとから日本でなら小山内おさない兄妹きやうだいと云つた様な若い詩人が妹の手を取つてはひつて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
兄は切端詰つて、みわを妻に立て生家へ戻つた。園の兄妹きやうだいは三人とも見るからに正しい武家の血を引いて胸深い義侠と質実さと、夢に富み、和やかな影を持つた美型だつた。
淡雪 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
自分の家の墓地から、三十間ばかり来たときに、美奈子はふと、美しく刈り込まれた生籬いけがきに囲まれた墓地の中に、若い二人の兄妹きやうだいらしい男女が、お詣りしてゐるのに気が付いた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
松子さんは、三郎さんにとつてただ一人の兄妹きやうだいで、ことし漸く三つの女の子です。
身代り (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
でも湯村は、「駄目だ/\、そんな不親切な兄妹きやうだいの世話になるより、金で傭つた他人の方が幾ら好いか知れない。」と云ひ/\書斎へ引込んだ。妹が襖越ふすまごしにしきりと謝るのに返事もない。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
わたしは、兄妹きやうだいのそんな出鱈目や見得張りに接しても別段のこともなかつたが、飽くまでも執拗におしこまれて母の心象までを害される段になると迷惑せずには居られなかつた。
茜蜻蛉 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
兄妹きやうだいと言つても、お萬さんは、亡くなつたお内儀かみさんの妹で、あのきりやうですもの。それに伊八と來たら三千兩はおろか三百文だつて只は出しません。喧嘩にもなるわけですよ」
二十分許り経つて、信吾兄妹きやうだいは加藤医院を出た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
現在住んでゐる町はづれの傾きかかつて彼方此方に支柱がかつてある家には、樽野の部屋がなかつたし、おまけに、いろいろな悲しい事情を持つて東京からその身を寄せて来た妻の兄妹きやうだい達が居た。
円卓子での話 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)